ファクトフルネス10の思い込みの一つ、過大視本能について知りたいですか?
過大視本能とは目の前にある数字を過大視し、重要な物事を見落とす傾向です。
それを回避するには判断の根拠となる数字にだけ注目するのではなく、他の数字との比較や割り算をし判断する必要があります。
この記事を読み進める前に、まずはファクトフルネスの意味や著者の主張、全体像を把握しておきたい方は「【ファクトフルネスまとめ】意味/主張/本の内容/クイズ/思い込みとは」の記事をご参照ください。

【ファクトフルネス過大視本能】比較と割り算【0歳児死亡率】
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、過大視本能を理解するため、世界の0歳児死亡率をもとに説明します。
例えば2016年には、世界中で420万人の0歳児が死亡しました。この420万人という数字を聞いて、あなたはどう感じますか?おそらく多くの人は、生後まもない数多くの子供が亡くなることを想像するだけで悲しくなるはずです。特に、親が生まれたばかりの我が子の亡骸を埋葬する姿は大変痛ましいものですね。しかしながら、私はそうは思いません。それとは反対に、この2016年の0才児の死者数420万人という数字は大変喜ばしいものだと強く感じます。
そう聞いて、もしかしたらこの記事の読者は「この人は何で不謹慎な!血も涙もない冷徹な人なんだ!頭がいかれてやがる!」などと憤りを感じるかもしれません。しかし実は、過去の0歳児の年間死亡者数の推移を比較することによって、その物事の見方は変わるはずです。具体的に言うと、世界の0歳児の年間死亡者数は以下の通りです。
- 2016年
- 420万人
- 2015年
- 440万人
- 2014年
- 450万人
- 1950年
- 1420万人
2016年は0歳の赤ちゃんの死亡者数が420万人でしたが、その前年度の2015年は440万人です。さらに1年さかのぼって2014年は450万人でした。さらにずっと遡ると、1950年の0歳の赤ちゃんの死亡者数は1420万人でした。つまり2016年と1950年を比較すると、この66年間で年間死亡者数が1000万人も減っており、多く赤ちゃんの命が助かるようになったということになります。
この説明を聞いて、420万人という数字に対し、あなたの印象は変わりませんか?この420万人という数字が、当初の「とても悲しいもの」から、「大変喜ばしいもの」、つまり「医学の進歩に感謝すべきだなぁ」、などと受け取り方が変化しませんか?。
ここで重要なポイントは、数字の単位の大きさで物事を判断すると、誤った判断を下してしまう恐れがある、ということです。つまり、数字の桁数が多ければ重大なことであり、数字の桁数が少なければ非重大なことであると、単純に判断しがちだから避けるべきなのです。
このように、「より大きい数字の情報」を過大視して誤まって解釈してしまう傾向のことを、ファクトフルネスの著者は過大視本能により引き起こされると主張しています。
そこであなたは、「大きな数字を単純に判断するべきではない」ってゆーけど、具体的にどうするべきなの?難しい方法なの?などと疑問に感じることでしょう。しかし、過大視本能を回避するためのファクトフルネスの実践方法は、とても簡単なことであり、誰にでもできることなのです。
まず一つ目は、比較をすること。
そして二つ目は、割り算をすることです。
この二つのことを実践することにより、その数字の意味を正しく判断できるようになるのです。次の章では、ファクトフルネスにより過大視本能を回避する方法を、具体例を挙げて詳しく説明していきます。
関連記事として、過大視本能以外の「10の思い込み」について学びたい方は、こちらの記事をご覧ください。
- 【②ファクトフルネスクイズ】人をチンパンジー以下にする分断本能
- 【③ファクトフルネス10の思い込み】ネガティブ本能【要約・感想】
- 【④ファクトフルネス直線本能】右肩上がりグラフに注意【回避方法】
- 【⑤ファクトフルネス恐怖本能】過剰報道【リスクを適切に判断する】
【ファクトフルネス過大視本能】80対20の法則【世界のエネルギー源】
ここまでに、ファクトフルネスの10の思い込みの一つ、過大視本能を回避するためには、目の前の数字を、比較し、わり算をする必要があるという説明をしてきました。
ではさっそく、ファクトフルネスを実践で活かせるようになるため、数字の比較とわり算をしてみましょう。
この章では、目の前の数字を比較するということを、80対20の法則を用いて比較をする、という説明を行います。
80対20の法則とは以下のような意味です。
80対20の法則とは
80対20の法則とは、努力の20%が、全体の成果の80%を生み出しているから、その20%とはどこなのかを探し、労力を集中させる必要がある、などというような意味合いで用いられる。
他にも例えば、仕事の成果の80%は費やした時間の20%から生まれる。だから、労力の80%は無駄な仕事をしていることになる、などの意味。
このファクトフルネスの著者は、80対20の法則を用いることによって、過大視本能による思い込みを回避できると主張しています。
例えば、以下の世界のエネルギー源のグラフをご覧ください。
出典
このグラフは、2016年度の世界のエネルギーは、どのようなエネルギー源によって、それぞれどのくらいの電力が賄われていたのかを示すグラフです。すべてのエネルギー源の項目が同じく重要であるかのように感じますが、実はこの数値は大きな偏りがあります。ではさっそく、ファクトフルネスにより、数値を比較してみましょう。
第1位に石油の電力量が514で、次に石炭が434という数値です。第3位にガスが続いて373です。そしてその後、バイオ燃料や水力、原子力、風力、その他、太陽エネルギーが続きます。
そして次に、これらの各数値が、全体に占める割合を割り算して算出すると以下の通りです。
石油 |
514 |
34% |
|
石炭 |
434 |
29% |
|
ガス |
373 |
25% |
87% |
バイオ燃料 |
110 |
7% |
|
水力 |
40 |
3% |
|
原子力 |
26 |
2% |
|
風力 |
10 |
1% |
|
その他 |
6 |
0% |
|
太陽エネルギー |
3 |
0% |
|
合計 |
1516 |
100% |
世界のエネルギー源の上位3項目である、石油34%、石炭29%、ガス25%を足し算すると、87%となります。つまり9項目中たったの3項目だけで、エネルギー源の全体の87%を占めるということになります。
時間は有限です。そのため限られた時間の中で世界のエネルギー源について考える際に、全体の87%を占めている上位3項目に注目することにより、効果的な施策などを考えられる可能性が上がるでしょう。
例えば、ファクトフルネスの著者は、政府によるエネルギー援助プロジェクトの調査について考えたとき、どのプロジェクトの予算を見ても2割の項目が予算の大部分を占めていたといいます。つまり8割の予算が配分されている全体の2割のエネルギー源に注目し、予算を厳しくチェックすることにより、大幅な予算をカットすることができる可能性が上がるということです。 この思考の過程こそが、過大視本能を回避するために、80対20の法則を用いて比較とわり算をすることでファクトフルネスを実践した具体例といえます。
ファクトフルネスの本の内容を、私のシンプル化した説明でざっくりと理解したい方は「【①ファクトフルネスの意味】本の内容・著者の主張【日常の例え話】」の記事をご覧ください。
【ファクトフルネス過大視本能】80対20の法則【世界の中心】
次に、ファクトフルネス10の思い込みの一つ、過大視本能を回避するために、具体例を挙げて説明します。
80対20の法則を用いて、複数の数字を比較・割り算することで、2040年には世界の中心は西洋諸国からアジア諸国に移り変わっている可能性があることを予測する、というファクトフルネスの実践例をご紹介します。
2040年には、世界の中心が西洋からアジアにシフトするということを示すグラフは以下の通りです。
出典
2017年の西洋諸国とその他の国における所得ごとの人口分布のグラフを見てみると、レベル4の生活水準にある人々の60%が、西洋諸国に住んでいます。 しかしその10年後の2027年には西洋諸国の人々の割合は50%に低下します。さらに2040年には西洋諸国の人々の割合は40%にまで低下します。言い換えると、西洋諸国以外のアジアやアフリカの国の人々の生活水準が向上し、レベル4に到達する人が増加するということです。このことをまとめると以下の通りです。
- 2017年
- 西洋諸国(アメリカやヨーロッパ)が市場の6割を占める
- 2040年
- 西洋諸国以外(アジアやアフリカ)が市場の6割を占める
つまり2017年から2040年までの間に、世界の市場の中心が、アメリカやヨーロッパなどの西洋諸国から、アジアやアフリカなどの西洋諸国以外に市場がシフトするということを示しています。
さらに詳しい人口推移の比較の分析として、現時点における世界の人口を70億人と考えた時、地域ごと所得ごとの人口分布は以下のように推移するといいます。
出典
この図において2017年と2040年を比較すると、レベル1とレベル2の人口が減り、その代わりレベル3とレベル4の人口が増える見込みであるということがわかります。
ファクトフルネスの著者によると、2040年の世界の人口の8割はアフリカとアジアが占めるようになるといいます。つまり、西洋諸国の経済力は全体の80%を占めているのではなく、20%に近づきつつあるということを、多くの人は受け入れ認識すべきだということです。
このように数値を比較したり割り算することにより、過大視本能による「世界の中心はいつまでたっても西洋諸国である」との思い込みを回避し、ファクトフルネスを実践するきっかけになるはずです。
【ファクトフルネス過大視本能】80対20の法則【営業の資源を重要顧客に集中する】
ここまでのファクトフルネスに関する説明で、物事を80対20の法則に当てはめ、比較とわり算をして考えることにより、過大視本能を回避できるという方法を、ある程度理解できたと思います。では次のステップとして、80対20の法則を身近な物に当てはめて過大視本能を回避できるようになる必要があります。言い換えると、どれだけ有用な知識を持っていたとしても、実践で使えなければ意味が無いということでもあります。
そこで、例えば営業職のセールスの現場の例で考えてみましょう。
営業マンにとっては、重要な顧客と非重要な顧客の二種類が存在するはずです。重要な顧客というのは、既に契約を頂いている顧客です。例えば、既存顧客を適切にアフターフォローすることにより、追加で契約をいただいたり、紹介をいただけたりする可能性があがります。つまり既存顧客こそ、営業マンが時間を割くべき重要顧客なのです。
一方で、自社が扱っている商品を購入するかどうかは分からないという非重要顧客に対し、営業マンは過剰な時間や労力を費やすべきではありません。つまり自分にとって重要な顧客なのかどうかを、80対20の法則に当てはめて見極め、重要顧客に対してより多くの時間や労力等の資源を割く必要があります。
日々の忙しい業務の中では、目の前に顧客がいると、ついうっかり非重要顧客であったとしても、重要顧客と同様の時間と労力を費やしてしまうことがあると思います。そこで、冷静になって過去の自分の営業成績の80%の成果はどこからもたらされているのかについて考えるべきです。
重要顧客というのは必ずしも既契約者だけに限りません。例えば、今すぐ契約を締結したいという顧客、契約単価が高くなる傾向がある顧客層などが、重要顧客の例です。したがって、過去の自分の営業成果を分析し、80%の成果をもたらしている20%は何かと自問自答を繰り返すべきです。そのようにファクトフルネスを実践することで、過大視本能を回避する事につながるはずです。
【ファクトフルネス過大視本能】80対20の法則【上司の依頼を断る】
他の例でも具体的に説明します。
あなたは日々の仕事が忙しすぎて、プライベートの時間をないがしろにしていませんか?例えば、自分の子供や妻と過ごす時間を確保したいと考えているのに、ついつい職場の上司の誘いを断ることができないという場面が該当します。
そこで、プライベートの時間を作るためには80対20の法則に当てはめてファクトフルネスを実践し、何をやらないのかを選択する必要があります。
多くの人は問題を解決するために何かをプラスしようと考えます。しかし問題を真に解決するためには、何かをマイナスすることの方が重要である場面が多々あります。そのためには、80対20の法則に当てはめて、何が非重要な80%なのだろうかと考える必要があります。
例えば、多くの人は上司に何かを頼まれたり誘われたりすると、プレッシャーに負けて拒否することを怠ってしまいます。具体的に言うと、上司から飲み会に誘われたり雑用を依頼されたりする時に、断りきれずに承諾してしまう場面などが挙げられます。あなたの本音としては大事な家族との時間を大切にしたいと考えているにも関わらず、それに反した行動をとってしまう点から本来は断るべきである場面であるはずです。ここで80対20の法則に当てはめて比較と割り算をして考えましょう。
自分にとって、人生の幸福を感じることができる時間は何をしている時かと自分に問いかけるのです。その答えが自分の子供や妻と過ごす時間なのであれば、それ以外の時間を極力減らす努力をしましょう。
そうすることで、ファクトフルネスにより過大視本能を回避できる可能性が上がるでしょう。
もっと知りたい
ここまでの説明により、ファクトフルネス10の思い込みの一つ、過大視本能については理解いただけたかと思います。次のステップとして、ファクトフルネス10の思い込みの一つ、パターン化本能についても理解を深めておきましょう。
パターン化本能とは、一つの具体例が他の全てのものにも当てはまるという思い込み(錯覚)を指します。詳しくは「【⑦ファクトフルネス】パターン化本能【回避方法・細分化・逆の例】」の記事をご覧ください。

ファクトフルネス10の思い込みの一つ宿命本能について知りたいですか?
宿命本能とは、物事は変化しないという錯覚を指します。
ファクトフルネスの著者の説明は内容が薄いという批判を踏まえ、私の言葉を含ませた錯覚回避方法をご紹介!
上手くいかない原因を他人のせいにしがちな人は「【⑧ファクトフルネス宿命本能】物事は変化しない【回避方法・批判】」の記事をご参照ください。

ファクトフルネス10の思い込みの一つ単純化本能について知りたいですか?
自分の専門知識で問題解決できるはずという誤った思い込みを踏まえ、単純化本能は政治思想にもみられる点やその回避方法をご紹介!
多面的な物事の捉え方をできるようになりたい方は、「【⑨ファクトフルネス単純化本能】専門知識が邪魔をする【回避方法】」の記事をご参照ください。

ファクトフルネス10の思い込みの一つ犯人探し本能について知りたいですか?
物事が上手くいかない時は、個々ではなくシステム全体の欠陥を探すべきという点を踏まえ、成功要因もシステム全体に注目すべき点をご紹介!
身近な具体例をもとに、ファクトフルネスを実践したい方は、「【⑩ファクトフルネス犯人探し本能】失敗・成功要因はシステム全体」の記事をご参照ください。

ファクトフルネス10の思い込みの一つ、焦り本能について知りたいですか?
焦り本能の特徴は、身近な私生活で頻出するという点や長期でみたら悪影響を及ぼす点です。
その具体例を踏まえ、焦って得をすることはめったに存在しない点を学びたい方は、「【⑪ファクトフルネス焦り本能】特徴【身近で頻出・長期的に悪影響】」の記事をご覧ください。

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