ファクトフルネスのまとめ記事です。
ベストセラー書籍ファクトフルネスとは何か、意味や著者の主張、チンパンジークイズを踏まえ、本の内容を日常のたとえ話と共にご紹介!
錯覚しがちな10の思い込みや回避方法を学び、身近な生活でファクトフルネスを実践したい方必見!
ファクトフルネスの意味、本の内容・著者の主張【日常の例え話】
ファクトフルネスの意味について説明します。
ファクトフルネスという本は、書籍販売において2020年の年間売上トップを独走している大ベストセラー書籍です。2020年の年間売上トップと言われてもいまいちピンとこない人も多いと思います。そこで具体的に言うと、Amazonによると以下の通りに紹介されています。
・2020年間ベストセラー【1位】(ビジネス書、トーハン調べ)
・オリコン年間BOOKランキング2020 ジャンル別「ビジネス書」【1位】
・読者が選ぶビジネス書グランプリ2020 総合グランプリ【1位】(主催:グロービス経営大学院、フライヤー)
・ビジネス書大賞2020【大賞】(実行委員会:ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・第30回TOPPOINT大賞【大賞】(2019年上半期TOPPOINT誌調べ)
98万部突破
テレビでも大反響! あさイチ(NHK)、ニュースシブ5時(NHK)、新・情報7daysニュースキャスター(TBS)、NEWS23(TBS)、ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)、Newsモーニングサテライト(テレビ東京) オリエンタルラジオ 中田敦彦さんYouTube大学で大絶賛! 「めちゃくちゃ面白い。これは読んでおかなきゃいけない! 」
この紹介文を読んでみると、まず、トーハンのビジネス書売上で、ファクトフルネスの売れ行きは年間ナンバーワン。そして、オリコン年間ブックランキング2020のビジネス書のジャンルで1位。さらには、読者が選ぶビジネス書グランプリ2020総合グランプリで1位。 その上、discover 21のビジネス書大賞2020で大賞を獲得したといいます!さらに、(まだあるのか…)TOPPOINT誌による調査で、TOPPOINT大賞を受賞。最後に、2020年12月の今までに日本国内で98万部突破のベストセラーとのことです。
率直に言って、こんなにナンバーワンを総なめにしているということはすごいことですね!また一般的に、ビジネス書であれば2万部を突破すれば大ヒットと呼び、10万部を突破すればベストセラーと呼びます。しかし、なんとこの本ファクトフルネスは、10万部どころか約100万部も売れています。つまり一般的な書籍のベストセラー基準の約10倍に到達しているので、いかに多くの人の心を掴んでいるのかがお分かりいただけると思います。
また、この本が再度売れ行きが絶好調になっている理由として、オリエンタルラジオの中田敦彦さんのYou Tube大学でファクトフルネスが紹介されたという点も挙げられます。
この本のタイトルにもなっている「ファクトフルネス」という言葉の意味は、データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣を指します。もっと噛み砕いて具体的にわかりやすくいうと、メディアや個人の直感に頼らずに、正しい情報に基づいて判断する事によって良いことがありますよ~、だからファクトフルネスについて学び実践しましょう!という意味です。
またファクトフルネスは、賢い人や知識量が多い人ほど誤った判断を下してしまう可能性が高いという意味でもあります。このことを裏付けるために、著者であるハンス・ロスリングさんは、様々な具体例やグラフなどを示しながらファクトフルネスの重要性の説明を本書で繰り広げていきます。
本の内容
ファクトフルネスの本の内容を具体的にいうと、多くの人が錯覚してしまいやすい物事を「10の思い込み」と称し、著者は根拠となるデータを元に、錯覚を回避するにはどうすべきかを解説してくれます。
そしてファクトフルネスの「10の思い込み」とは、以下の10個の本能からもたらされるといいます。
分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能
「10の思い込み」についての詳細な説明に入る前に、この本で著者が伝えたいファクトフルネスとは何なのか、本の内容を私のシンプル化した説明でざっくりと理解したい方は「【①ファクトフルネスの意味】本の内容・著者の主張【日常の例え話】」の記事をご覧ください。
ファクトフルネス10の思い込み
ファクトフルネスの著者が主張する「10の思い込み」とはどのようなものか、具体例を挙げて一つ一つ解説していきます。
分断本能
ファクトフルネスの著者によると、多くの人は世界に対する見方が誤っていると主張しています。具体的に言うと、本の冒頭に13個のクイズが掲げられています。
読者がこのクイズに答えることによって、自分がどれだけ誤った世界の見方をしているのかが実感として読者に伝わるようになっています。例えばファクトフルネスクイズの一つ目の質問は以下の通りです。
質問1
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A20% B40% C60%
引用元
現在、低所得国で暮らしている女の子の何%が初等教育、つまり小学校を卒業しているでしょうか?という質問で、選択肢としては20%、40%、60%の3つがあります。
さっそくあなたも、このファクトフルネスのクイズの答えを考えてみてください。あなたはどの選択肢が正しいと思いますか?
ちなみに、私はAの20%を選びましたが、あなたはどれを選びましたか?
先に答えを言ってしまうと、正しい答えはCの60%とのことです。私は不正解でした。
著者によると、このクイズを解いた人たち全体の正解率はわずか7%であるとのことです。そして、大半の人はAの20%の選択肢(最もひどい貧困状態にあるという選択肢)を選んだといいます。
でも実際は、たった20%の女子しか小学校を卒業できない地域というのは、戦争や紛争が勃発している地域しか存在しないから、低所得国に対するイメージとしてこのクイズの選択肢Aを選んでしまった人は、最も大きな勘違いをしているとのことです。言い換えると、低所得国の女の子の小学校の卒業率は20%であるという選択肢は、正しい選択肢である実際の女子の小学校卒業率60%に対し、3倍も過小に見積もっていると言えます。言い換えると、皆が思っているほど低所得国はそんなに貧しくはないとも言えますね。
多くの人がそのように感じてしまった要因として、メディアが過剰に低所得国の一部の惨状を、強調した報道をしているということもあると思われます。
誰しもが以下のようなCMをテレビで目にしたことがあるはずです。「貧困国は少量の食事も摂取できないし、清潔な水も飲めないし、さらに病気が蔓延している、だからあなたが◯◯円寄付することによって多くの人の命を救うことができます、などというCMで惨状を目にしたら誰でも低所得国は皆こんな感じなのだろうな、という印象を感じてしまったとしても無理はありませんよね。だからそのような極端な物事を目にしたら、ファクトフルネスによって状況を冷静に考える必要があるということです。
また、たしかにファクトフルネスクイズの質問1は3択クイズなのに、正解率がたったの7%という数値は異常に低い値だと言えますよね?というのも、問題すら読まずに目をつぶってランダムに3つの選択肢の中から1つを選んだしたとしても、33%の確率で正解するためです。この本ファクトフルネスでは、ランダムに回答した場合という言葉の表現を使わずに、33%の確率で正解を選べるチンパンジーに選択肢を選ばせるという「チンパンジーがクイズに回答した場合」というユーモアのある表現を使っています。
たしかに、チンパンジーの33%の正解率と、人間の7%の正解率を比較すると、思い込みや先入観によって26%もの差が生じています。そこで、事実に基づいた冷静なものの見方、ファクトフルネスを実践する必要性が出てくるわけです。
つまりこの本の著者の主張は次のとおりです。
多くの人は、思い込み、先入観、錯覚によってこのクイズの正答率がチンパンジーと比較して26%も低くなってしまっているんだから、この本の読者であるあなたも日常生活において誤解してしまっている物事は多々存在するはずだ!だから、ファクトフルネスによって世の中を正しく捉えられるようになりましょう!
次に、ファクトフルネスクイズの質問2「分断本能」とはどのようなものか、回避する方法を学びたい方は「【②ファクトフルネスクイズ】人をチンパンジー以下にする分断本能」の記事をどうぞ。
ネガティブ本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、「ネガティブ本能」について知りたいですか?
ネガティブ本能を断ち切るため、実際には世界で減り続けている悪い事と、増え続けている良い事を確認していきましょう!
図の解説や要約・感想を踏まえ、ネガティブ本能を回避する方法をご紹介!
10の思い込み
ファクトフルネス10の思い込みについて説明します。
大ベストセラー本ファクトフルネスで紹介されている10の思い込みというものがあります。10の思い込みというのは、多くの人がこれらの本能によって正しい判断を誤ってしまう、つまりバイアスがかかってしまう可能性が高いというものです。10の思い込みを一覧にすると以下の通りです。
分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能
この中の一つ、分断本能というのは前の章で紹介したとおりです。では次に、2つ目の項目であるネガティブ本能というものはどのようなものなのかを説明します。
ネガティブ本能というのは一言で言うと、人はメディアを通じて、コロナウイルスの蔓延により多数の死者数が出ていることや経済の停滞、また凶悪事件のニュースなどを頻繁に見聞きすることで、世界はだんだん悪くなってきていると思い込んでしまう癖のことです。
しかし正しいデータに基づいて考えてみると、現状は悪くなっているどころか良くなっている面も多々あります。そこで、人にはネガティブ本能があるということを理解し、ネガティブ本能を回避する方法を学べば、あなたは今以上に物事を前向きに捉えられるようになるはずです。
ネガティブ本能とはどのようなものか、思い込みを回避する方法を学びたい方は「【③ファクトフルネス10の思い込み】ネガティブ本能【要約・感想】」の記事をご参照ください。
直線本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、「直線本能」について知りたいですか?
右肩上がりのグラフをみた時は直線本能に注意すべきという点を踏まえ、思い込み回避方法をご紹介!
直線本能を身近なものに例えると何が当てはまるのかを理解し、思い込み回避を実践したい方必見!
10の思い込みのおさらい
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、直線本能とは、一言でいうと右肩上がりグラフには注意しましょうね、というものです。というのも、その直線のグラフはその後、永久に右肩あがりに伸びていくとは限らないことが多いからです。では具体的にどのようなグラフかというと、例えば以下の紀元前8000年から現在までの世界人口の推移グラフです。
出典
世界人口の推移を紀元前から見てみると、紀元前8000年の時点では世界人口は500万人でした。イメージとしては、この時は農業が始まった1万年前であるとのことです。この頃はそれ以前の狩猟採集の時代から一歩踏み出した頃ですね。そして2017年現在は、世界人口は76億人です。つまり、500万人から76億人を比較すると、人口は1520倍になったということです。このグラフをみると、だいたい1800年時点ぐらいから、急激に人口増加が加速していることがわかります。恐ろしい勢いですね!
あなたはこのグラフを見て、率直にどう思いますか?
もしかしたらこのグラフを見た人の中で、「大変だ!このまま行ったら人口は増え続けていって地球が人で埋め尽くされて、いずれは満員電車のように身動きが取れなくなってしまうんじゃないの!?何とかして、月や火星に移住する計画を今のうちに考えておこう!」などと思う人も中にはいるかもしれません。しかし結論から言うと、その心配はありません。というのも今後、必ずしも人口は直線に伸び続けていくことはないだろうと予測できるからです。その根拠を踏まえ、直線本能を回避する方法を詳しく学びたい方は、「【④ファクトフルネス直線本能】右肩上がりグラフに注意【回避方法】」の記事をご覧ください。
恐怖本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、恐怖本能について知りたいですか?
メディアは恐怖本能を利用する傾向があるという点を踏まえ、コロナや自然災害、飛行機事故の偏った報道をご紹介!
保険や起業等、身の回りに存在するリスクを適切に判断できるようになりたい方必見!
10の思い込み=関心フィルターの穴
世の中は情報が氾濫しており、私達は世の中のすべての情報を集めることができません。では私達は、具体的にどうやって情報を集めているのかについて考えてみましょう。ファクトフルネスの著者によると、私達には関心フィルターというものが備わってます。ほとんどの情報は、関心フィルターの穴を通過できません。しかし、その関心フィルターには10個の穴が空いているといいます。そして、関心フィルターは前の章でも紹介したファクトフルネス「10の思い込み」の原因となる以下10個の本能と連動しています。
分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能
これらの10個の本能を刺激してくる情報は、私達の関心フィルターの穴をくぐり抜けることでができます。そして、私達の興味関心を強く引きます。このようにして、私達は情報を取捨選択しているのです。
10の思い込み=関心フィルターの穴をメディアは利用する
メディアは前述のファクトフルネス10の思い込みを利用するという点について説明します。
メディアはニュースの記事や番組を、ファクトフルネスの10の思い込みを利用して視聴者側に訴えかけています。その中でもメディアが特に利用するの恐怖本能です。この記事を読まれている方の中には、「そんな馬鹿な!俺はメディアに恐怖本能なんて利用されてないぞ!」などと感じている人や、反論したい人もいるかも知れません。そこで、新聞やテレビ、Web媒体などによるメディアの報道について考えてみましょう。
この恐怖本能と関心フィルターの仕組みをメディア側は理解しているため、私達の関心フィルターを通過できないと思われる情報はめったに報道されないのです。具体例を挙げて説明します。
私達の関心フィルターを通過しないであろう情報の例を以下に3つあげます。
- 「1800年と比較すると2020年の乳児死亡率は世界的に大幅に減りました」
- 「筋トレを始めた30代サラリーマンの田中さんは、半年前までは腕立て伏せを5回しかできなかったのですが、現在では10回もできるようになりました。」
- 「JR渋谷駅のホームに、電車が時刻通りに到着しました。」
これら3つの出来事は、たしかに良いことだし、素晴らしいことなのではありますが、必ずしも多くの人が驚く情報だとは言い難いですよね。一つ目は対象となる期間が長すぎるから驚きません。また二つ目の腕立て伏せがプラス5回できるようになったということは、一般的にいって全然大したことでもありませんよね。三つ目の、電車が時刻通りに到着することも、素晴らしいことではありますが、当たり前のことであるから誰も驚かないでしょう。したがって、これらの事柄は関心フィルターを通過できないので、メディアにより頻繁に毎日繰り返し報道されることはないでしょう。では反対に、どんな情報であれば関心フィルターを通過するのか?具体例をもとに学んでおく必要があります。先に言ってしまうと、あなたがこの恐怖本能の仕組みを理解しファクトフルネスを実践することで、偏った情報に惑わされることなく、正しい判断ができるようになります。
メディアは恐怖本能を利用する傾向があるという点を踏まえ、コロナや自然災害、飛行機事故の偏った報道、保険や起業等、身の回りに存在するリスクを適切に判断できるようになりたい方は「【⑤ファクトフルネス恐怖本能】過剰報道【リスクを適切に判断する】」の記事をどうぞ。
過大視本能
過大視本能とは、目の前にある数字を過大視し、重要な物事を見落とす傾向です。
それを回避するには判断の根拠となる数字にだけ注目するのではなく、他の数字との比較や割り算をし判断する必要があります。
そこで、ファクトフルネス10の思い込みの一つ、過大視本能を理解するため、世界の0歳児死亡率をもとに説明します。
例えば2016年には、世界中で420万人の0歳児が死亡しました。この420万人という数字を聞いて、あなたはどう感じますか?おそらく多くの人は、生後まもない数多くの子供が亡くなることを想像するだけで悲しくなるはずです。特に、親が生まれたばかりの我が子の亡骸を埋葬する姿は大変痛ましいものですね。しかしながら、私はそうは思いません。それとは反対に、この2016年の0才児の死者数420万人という数字は大変喜ばしいものだと強く感じます。
そう聞いて、もしかしたらこの記事の読者は「この人は何で不謹慎な!血も涙もない冷徹な人なんだ!頭がいかれてやがる!」などと憤りを感じるかもしれません。しかし実は、過去の0歳児の年間死亡者数の推移を比較することによって、その物事の見方は変わるはずです。具体的に言うと、世界の0歳児の年間死亡者数は以下の通りです。
- 2016年
- 420万人
- 2015年
- 440万人
- 2014年
- 450万人
- 1950年
- 1420万人
2016年は0歳の赤ちゃんの死亡者数が420万人でしたが、その前年度の2015年は440万人です。さらに1年さかのぼって2014年は450万人でした。さらにずっと遡ると、1950年の0歳の赤ちゃんの死亡者数は1420万人でした。つまり2016年と1950年を比較すると、この66年間で年間死亡者数が1000万人も減っており、多く赤ちゃんの命が助かるようになったということになります。
この説明を聞いて、420万人という数字に対し、あなたの印象は変わりませんか?この420万人という数字が、当初の「とても悲しいもの」から、「大変喜ばしいもの」、つまり「医学の進歩に感謝すべきだなぁ」、などと受け取り方が変化しませんか?。
ここで重要なポイントは、数字の単位の大きさで物事を判断すると、誤った判断を下してしまう恐れがある、ということです。つまり、数字の桁数が多ければ重大なことであり、数字の桁数が少なければ非重大なことであると、単純に判断しがちだから避けるべきなのです。
このように、「より大きい数字の情報」を過大視して誤まって解釈してしまう傾向のことを、ファクトフルネスの著者は過大視本能により引き起こされると主張しています。
そこであなたは、「大きな数字を単純に判断するべきではない」ってゆーけど、具体的にどうするべきなの?難しい方法なの?などと疑問に感じることでしょう。しかし、過大視本能を回避するためのファクトフルネスの実践方法は、とても簡単なことであり、誰にでもできることなのです。
まず一つ目は、比較をすること。
そして二つ目は、割り算をすることです。
この二つのことを実践することにより、その数字の意味を正しく判断できるようになるのです。ファクトフルネスにより過大視本能を回避する方法を、具体例を踏まえ詳しく学びたい方は「【⑥ファクトフルネス過大視本能】80対20の法則【数字の比較割り算】」の記事をご参照ください。
パターン化本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ、パターン化本能とは、一つの具体例が他の全てのものにも当てはまるという思い込み(錯覚)を指します。
例えば、他の国から見ると日本人は礼儀正しいと指摘されることがあります。しかし実際に日本人の視点で自国の民族を見てみると、確かに礼儀正しい人もいれば、失礼な人もいるし、千差万別であるということがわかります。パターン化することで複雑な情報を整理するのに役立ちますが、時として錯覚に繋がりかねません。つまり一つの例だけで物事の全体像を捉えてしまうことは、誤った思い込みに繋がりかねないから注意する必要があるという点が、ファクトフルネスの著者の主張です。
ファクトフルネスの著者はパターン化本能の例を説明するため、過去に自身が以下のような文化の違いを経験したことを挙げています。
- 食事
- ネズミの丸焼きや、幼虫を食べる文化と食べない文化
- エレベーター
- エレベーターの安全装置がある文化とない文化
まず一つ目の食事に関しては、あるサバンナに住む経済的に貧しい民族は、ネズミの丸焼きを喜んで食べるといいます。そしてその民族は、食事のデザートとして大きな幼虫を食べる食習慣もあり、ファクトフルネスの著者はその民族と一緒に食事を食べた時に吐き気を催したと言います。その民族の男性は、喜んでネズミの丸焼きや幼虫を食べても、先進国においてネズミや幼虫を食べる人は珍しい、というよりむしろ皆無でしょう。このように、先進国に住む人達にとって、ネズミなんて食べるはずがないという考えは、単なるパターン化本能による思い込みでもあるということです。
また経済的に貧しい国の人々にとってみたら、エレベーターに安全装置が備わっているというのは当たり前のことではありません。例えばエレベーターの安全装置というのは、もしエレベーターに急いで後から乗り込もうとする人がエレベーターのドアに挟まってしまった場合に、安全装置が作動し、ドアが開くという機能です。このエレベーターの安全装置の機能は、先進国に住む人にとってみたら当たり前のことです。むしろ、先進国でエレベーターの安全装置がうまく作動せず、怪我をした人が発生した場合は、おそらく大問題としてニュースに取り上げられることでしょう。 しかし経済的に豊かでない一部の国では、エレベーターの安全装置がついていないことが当たり前であり、エレベーターの安全装置という概念すらない国もあります。
このように国が変われば文化も変わります。多くの企業のマーケティング担当者は世界はレベル2の経済力しかない人たちが、今後の2040年にはレベル4まで成長するということを知りません。(レベル4という言葉の意味について、詳細は「世界人口を4つの所得レベルに分類する例」をご参照ください。)従って、先進国で暮らし、目の前の豊かな生活に慣れきってしまうと、途上国と呼んでいるの人たちの生活がどれだけ進歩してきているのかを見過ごしてしまう可能性があります。
例えば、ファクトフルネスの著者は、世界の10大銀行で働く有能な職員71人に対し、以下のような質問をしたと言います。
世界中の1才児の中で、何らかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A20% B50% C80%
正解はCの80%です。つまり、貧しい国に住む子供たちの中の大部分が、何らかの予防接種を受けているということです。最も多くの人が選んだ選択肢は、Aの20%だというから驚きですね!つまりみんな大きな勘違いをしているということです。実際には88%の子供が予防接種を受けているのに、多くの投資家たちはたった20%しか予防接種受けていないと思い込んでいたことから、彼らは大きな投資のチャンスを見逃しているため、プロの投資家として失格であると否定されかねないともいえるでしょう。
さらに具体的に言うと、上記の金融エリート達のうち、なんと85%が予防接種を受けている子供は世界でも少数だと思い込んでいたということです。金融エリートたちは、予防接種は先進国でしか受けられないものだと、勘違いしていたようです。
金融のエリートたちですら、世界の状況を正しく読み取れておらず、パターン化本能により錯覚に陥っているということですから、一般人はいわずもがなです。この金融エリート達には、頭の中に経済的な後進国と先進国の二種類しか存在せず、自分以外の人達は後進国だから経済的に貧しいのだろうと、パターン化本能により錯覚してしまっていたということです。
このように、このパターン化本能により錯覚が生じる事から、思い込みをファクトフルネスにより回避する方法を学ぶ必要が出てきます。パターン化本能の回避方法について、具体例を踏まえて詳しく学びたい方は「【⑦ファクトフルネス】パターン化本能【回避方法・細分化・逆の例】」の記事をご覧ください。
宿命本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ宿命本能について知りたいですか?
宿命本能とは、物事は変化しないという錯覚を指します。
ファクトフルネスの著者の説明は内容が薄いという批判を踏まえ、私の言葉を含ませた錯覚回避方法をご紹介!
上手くいかない原因を他人のせいにしがちな人必見!
ファクトフルネス10の思い込みの一つ宿命本能とは、変化できる、あるいは変化しつつあるのに、変化するはずないと思い込む錯覚を指します。
今回の思い込み「宿命本能」については、説明不要であると言ってもいいくらい、誰しも経験があるはずです!上手くいかない事の原因を、国や民族、家庭教育や経済、など自分の努力以外の物事のせいにすることです。
例えば、
- 自分はお金持ちの家庭で生まれ育っていないからだめなんだ!
- 子供の頃からスポーツが得意ではないからうまくいかないんだ
- 好きなあの子に振られるのは、最初から決まっていたんだ!
などです。
宿命本能をファクトフルネスによって錯覚を回避するということはたしかに重要な事ではありますが、正直言って私の目から見て、この宿命本能については、ファクトフルネスにおいて最も内容が薄いと感じました。というのも、宿命本能については著者の長たらしい説明を読む必要性をあまり感じなかったからです。しかし、宿命本能について敢えて説明すると、物事に失敗してしまうことが、自分が生まれてきた宿命であるかのように捉えてしまうことを宿命本能といいます。言い換えると、これは他人に対しても、自分に対しても、限界があると思い込んでしまう傾向です。宿命本能によって物事を誤って解釈した結果、せっかくのチャンスをみすみす逃してしまう事につながります。このような宿命本能を回避するにはどうすべきか、具体例を踏まえ詳しく学びたい方は、「【⑧ファクトフルネス宿命本能】物事は変化しない【回避方法・批判】」の記事をご参照ください。
単純化本能
ファクトフルネス10の思い込みの一つ単純化本能について知りたいですか?
自分の専門知識で問題解決できるはずという誤った思い込みを踏まえ、単純化本能は政治思想にもみられる点やその回避方法をご紹介!
多面的な物事の捉え方をできるようになりたい人必見!
単純化本能とは、自分の知識や経験で問題を解決できると思い込む傾向(錯覚)を指します。詳しく説明していきます。
私達はシンプルな物事に惹かれる傾向があり、シンプルな解決策を思いつけば気持ちがいいし、スッキリします。パッとひらめいた単純な解決策が、他の物事の多くに当てはまると思い込むのは誰しも経験があると思います。しかし、反対意見を言う人の話をよく聞くと、「あっ、もしかしたら自分の考えの方が誤っているかも」と感じることもありますよね?つまり、様々な面から問題を見た方が、自分の考えだけで凝り固まったものの見方をするよりも、より良い意見を考えつくことが多々あるということです。このように、多面的に物事を捉えるべきなのに、自分の考えだけで問題を解決できると思いこむべきではないと、ファクトフルネスの著者は主張しており、このことを単純化本能と呼んでいます。詳しくは、「【⑨ファクトフルネス単純化本能】専門知識が邪魔をする【回避方法】」の記事をご参照ください。
犯人探し本能
犯人探し本能とは、失敗の原因は特定の人や物事であり、システム全体ではないと誤って思い込む傾向です。他方、詳しくは後述しますが、成功要因も同様に捉えてしまう場合も犯人探し本能に当てはまります。
ファクトフルネスの著者によると、犯人探し本能とはどのようなものか、以下のように説明があります。
ファクトフルネスとは……誰かが見せしめとばかりに責められていたら、それに気づくこと。誰かを責めるとほかの原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いを防げなくなる。犯人捜し本能を抑えるためには、誰かに責任を求める癖を断ち切るといい。●犯人ではなく、原因を探そう。物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを捜してはいけない。誰かがわざと仕掛けなくても、悪いことは起きる。その状況を生み出した、絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだ。
つまり、誰かが何かに失敗して他の人たちに向けて見せしめのために批判を浴びていたら、犯人探し本能によるものではないかと疑う必要があるということです。
物事がうまくいかずに失敗した時に、誰か個人を批判すれば、その人が行った個々の原因ばかりに目を取られることになり、それ以外の全体の根本的な原因に目が向かなくなるということです。その結果、それと同様の失敗がその後も再発してしまう可能性が出てきます。そのため犯人探し本能を抑えて、根本的な原因に目を向ける必要があります。
そこで、何か物事がうまくいかない時に、誰かに原因があると目を向ける習慣をやめることから始まります。犯人捜し本能により、失敗の原因はシステム全体にあるのに、個々に原因があると思い込んでしまっている例を踏まえて、「犯人探し本能」は失敗した時だけではなく、成功した場合にも思い込みを生じさせてしまうものであるという点について詳しく学びたい方は、「【⑩ファクトフルネス犯人探し本能】失敗・成功要因はシステム全体」の記事をご参照ください。
焦り本能
焦り本能というのは、詳しい説明は不要であるほど、誰しもが経験のあることだと思われます。焦ってしまい、ミスが起こるということは、誰しも直感的に分かりますよね?以下に引用するファクトフルネスの著者の言葉を借りると、「今すぐに決めなければいけない」と焦ることで思考停止状態に陥り、判断を誤る可能性が高まることを焦り本能といいます。
ファクトフルネスとは……「いますぐに決めなければならない」と感じたら、自分の焦りに気づくこと。いま決めなければならないようなことはめったにないと知ること。焦り本能を抑えるには、小さな一歩を重ねるといい。●深呼吸しよう。焦り本能が顔を出すと、ほかの本能も引き出されて冷静に分析できなくなる。そんな時には時間をかけて、情報をもっと手に入れよう。いまやらなければ二度とできないなんてことはめったにないし、答えは二者択一ではない。●データにこだわろう。緊急で重要なことならなおさら、データを見るべきだ。
さらに理解を深めるため、私が考えるわかりやすい具体例を挙げて、焦り本能をどう回避すべきかを学びたい方は、「【⑪ファクトフルネス焦り本能】特徴【身近で頻出・長期的に悪影響】」の記事をご覧ください。
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