職場内クラスターについて知りたいですか?
職場内クラスターとは、同一の職場で複数社員が感染する事を指します。
この職場内クラスターが頻発しているという点を踏まえ、
- 発生させないためにどうすべきか、
- 体調の悪い人とはどのような人を指すのか
をご紹介!
そもそも、クラスターとはどのようなものか詳しく学びたい方は、「【クラスターとは】コロナ愛媛17人感染事例【緊急事態宣言の解除】」の記事をご参照ください。
【職場内クラスター】増加傾向にある
まず、政府の感染症対策専門家会議メンバーである和田耕治氏(=国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)は、2020年7月28日の時点で新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にあると、以下のように指摘しています。
今年の3~5月にかけての新型コロナウイルスの流行においては、緊急事態宣言という大きなカードを切ることにはなりましたが、多くの企業や個人の努力により、国内での感染者数を一旦は抑え込むことに成功しました。しかし、今は再び感染者が増えている状況にあります。
確かに緊急事態宣言が解除された2020年5月25日以降で、一旦は新型コロナウイルスは収束したかのように見えました。具体的に言うと、日本における新型コロナウイルスの新規感染者数の推移は以下の通りです。
このグラフを見れば、緊急事態宣言が解除された5月25日時点では、新型コロナウイルスが一旦は収束したものの、確かに和田氏が指摘するように7月に入ってからコロナ感染者数が急増していることがわかります。その理由について詳しくはこちらの記事をどうぞ。
菅官房長官は2020年7月29日午前の記者会見で、新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)について、7月28日までに全国で計550件の発生が確認されたことを明らかにしています。(出典:読売新聞)
しかし一口に「クラスター」と言っても分類することができ、例えば和田氏は新型コロナウイルスについて、
- 感染経路不明で感染してしまうよりも
- 感染経路が判明した上で、感染してしまう「職場内クラスター」
が増加してきていると以下のように言及しています。
最近さかんに報道されているように、接待を伴う飲食、懇親会、パーティーなど、いわゆる3密+α(飲酒や食事、声を出す場所)が、(見える範囲での)感染の中心となっています。
なぜ感染経路不明が問題なのかについては「【コロナと日本】なぜ感染者急増?【感染経路不明】」の記事をご覧ください。
和田氏の指摘内容としては、職場内などでよく行われる、
- 接待を伴う飲食や
- 懇親会
などが新型コロナウイルス感染の中心となっており、2020年7月28日頃までに頻繁に職場内クラスターが発生してしまっているとのことです。ここで言う接待を伴う飲食とはキャバクラやホストが該当します。また懇親会とは例えば、仕事が終わった後に同僚と一緒に飲みに行く、等というケースが当てはまるでしょう。
では実際に、職場内クラスターの例としては、2020年7月28日に発生した熊本県の高齢者施設におけるクラスターが挙げられ、以下のように報じられています。
熊本県は、新型コロナウイルスの感染者の集団=クラスターが発生した山鹿市にある介護老人保健施設「太陽」で新たに、施設を利用する高齢者9人と職員5人の合わせて14人で、新型コロナウイルスへの感染が確認されたことを明らかにしました。
26日、施設に勤務する20代の男性職員の感染が確認されたことを受けて熊本県が検査を進め、これまでに男性を含めて高齢者と職員合わせて9人の感染が確認されていました。
これまでに高齢者と職員合わせて72人について検査が行われ、このうち23人で感染が確認されたことになります。
この熊本県の高齢者施設の新型コロナウイルス感染者数内訳としては、
- 高齢者9名と
- 職員5名
で、合計で14名の感染が確認されたとのことです。高齢者や基礎疾患持ちの人は新型コロナウイルスの致死率が高いので、高齢者施設で職場内クラスターが発生するということは非常に危険なことです。年齢別や基礎疾患別の新型コロナウイルス致死率について、詳細はこちらの記事をどうぞ。
他にも、2020年6月26日に発生した人材派遣会社のクラスターが挙げられます。この人材会社では6月23日までに7名の新型コロナウイルス感染が確認されており、さらに翌日の6月24日には9名の新型コロナ感染が確認されたとのことです。(出典)これを受けて東京都は職場クラスターが発生したとみています。
確かに頻繁に新型コロナウイルスは職場内クラスターを発生させていますが、どのような状況で職場内クラスターが発生しているのかについての詳細な情報は、民間企業が不利益を被ってしまうことを回避するために、大々的に報道されてはいません。そこで、発生したクラスターの詳細な状況を知るためには、4月11~20日で発生した大津市役所内におけるクラスターが参考になります。大津市役所内のクラスター発生について、報告書に基づく情報は以下の通りです。
職員11人に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した大津市は、本庁舎を全閉鎖した経緯や原因などがまとめられた最終報告書を公表した。感染経路は不明だったが、不十分な換気など職場環境の問題が感染リスクを高めたことなどを記している。再発防止の対応策を進める一方、登庁職員の2交代制は31日で終えるという。
報告書は、市保健所が県新型コロナウイルス感染症対策班と合同で疫学調査をした結果をまとめ、21日付で市に提出した。感染経路は究明できなかったが、執務室の換気が不十分な中で机の間隔が確保されず、同じフロアの職員が100人を超えていたことが判明。トイレや更衣室、会議室などの共用も接触感染のリスクを高めていたことなどを指摘している。
これを受けて市は「3密」(密閉、密集、密接)回避のため、業務机は職員間に2メートル以上の間隔を設けて配置するか、飛沫(ひまつ)を防ぐ段ボールなどを使った間仕切りを設ける▽就業中は全職員にマスク着用を義務づける▽午前と午後に各2回、コピー機や受付カウンターなど共用物品・共用部の消毒をする――など7項目の対策を継続して実施するという。
クラスターは4月11~20日にかけて、本庁舎の職員11人の感染で確認された。大型連休中の25日から5月6日まで、消防局などを除いて本庁舎を閉鎖。感染防止策として、4月20日から登庁職員の2交代制(当初は隔日出勤、後に隔週)を導入していた。
報告書は、本庁舎閉鎖は「(閉鎖を決めた)4月21日時点で考えられる最も有効な感染拡大防止策の一手段だと思慮される」とした。終息については全閉鎖した14日間、職員に新たな感染が確認されなかったことなどで「今月8日時点で終息していたと判断できる」と結論づけた。(寺崎省子)
この記事を要約すると、大津市役所の職員11名が新型コロナウイルスに感染し感染経路は不明であるが、
- 執務室の換気が不十分で
- 机の間隔も確保されていなかった
せいで、職場内クラスターが発生したのではないかとの報告書が出ています。この感染者と同じフロアの職員は100人以上が働いており、
- トイレや
- 更衣室、
- 会議室
などの共用部分も接触感染のリスクを高めていたと指摘されているとのことです。
これらの事例から新型コロナウイルスによる職場内クラスターは、7月28日時点の7月28日時点の日本において依然として発生し続けており、何らかの防止策を講じる必要があると言えます。
【職場内クラスター】発生させないためには?
では実際に、新型コロナウイルスの職場内クラスターを発生させないためにはどうすれば良いのでしょうか?
和田氏は職場内クラスターを発生させないためには、体調が悪い人を出勤させないように気を配るべきであると、以下のように提唱しています。
企業においては、職場内での集団感染(クラスター)の発生を予防したいと強く思われていることでしょう。企業における感染対策では、従業員が「特定の多数」と接するのか、「不特定の多数」と接するのかで大きく変わります。
多くの職場は「特定できる多数の人」と接する環境にあると思われます。そういうところで最も留意するべきことは、「体調の悪い人には出勤を控えさせる」ということです。これは本当に徹底しなくてはいけません。このご時世に、発熱や咳があったのに出勤させて、その後感染が広がったとなると、企業のイメージにも大きな影響を与えます。
ここでいう「特定の多数と接する職場」というのは、具体的には
- 経理などの事務職や、
- コールセンターのオペレーター
などの仕事が該当するでしょう。
一方で、「不特定の多数と接する職場」というのは例えば、
- 新規顧客を獲得するための不動産や金融等の営業職や、
- 百貨店や大型家電量販店などで顧客と接するサービス業従事者
などが該当します。
つまり、この二つのうち前者の「特定の多数と接する職場」では体調の悪い人は出勤を控えさせることが、新型コロナウイルスの職場内クラスターを発生させないための有効な対策であると主張しています。また万が一、職場内クラスターが発生してしまった場合は、企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。確かに、職場内クラスターが発生してしまうような「雇用主の配慮の欠けた職場」に就職したいとは思いません。また、そのような配慮の欠けた職場で働いている営業マンから、物を買いたいとは思わないのも当然のことでしょう。なぜなら、職場内クラスターが発生してしまうような会社から物を買った場合、もしかしたら同様に購入した商品にも何らかの問題が発生してしまうような印象を受けるからです。
したがって、雇用主にとって職場内クラスターが発生することは絶対に回避すべきであり、そのためには職場で働く従業員の体調に気を配る必要があると言えます。
詳しくは和田 耕治氏による著書「企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル」をご参照ください。
【職場内クラスター】体調の悪い人とは?
ここまでの説明で、職場内クラスターを発生させないためには、体調の悪い人は出勤させないようにすることが重要である、ということは分かったと思います。しかし、では具体的に体調の悪い人とはどのような人のことを指すのでしょうか?
和田氏によると、体調の悪い人とはどのような人を指すのかについて以下のように説明されています。
「体調の悪い人」とは、具体的には、「①発熱、②咳、③喉の痛み、④下痢」といった症状がある人のことを指します。これらは、ウイルスを排出している可能性が高い症状だからです。こうした症状がある人は、ぜひ休んでいただきたい。ここに頭痛や倦怠感などが入ると他の病気の可能性もあるかもしれないので難しいところですが、上記4つの症状がある人は最低限休ませるように徹底するべきです。
和田氏が言う職場内クラスターを発生させてしまいかねない「体調が悪い人」というのは、
- 発熱
- 咳
- 喉の痛み
- 下痢
の症状がある人を指しているとのことです。
5万例を超える「WHOと中国を含む25か国専門家による報告(2020年2月25日)」では、新型コロナウイルスに感染した場合に最もよく見られる初期症状は「発熱」です。
具体的に言うと、新型コロナウイルスに感染した患者のうち、87.9%に「発熱」の症状が見られました。この数値は、
- 67.7%の咳
- 38.1%の倦怠感
- 33.4%の痰
などと比較しても、比率の高さで目立ちます。新型コロナウイルスによる倦怠感と、他の病気による倦怠感の違いについては「【コロナ初期症状「倦怠感」とは】どんな感じ?【だるい・疲労】」をご覧ください。
言い換えると、もし「発熱」の症状が見られなければ、新型コロナウイルスに感染している恐れは、12.1%の確率でしかないということです。
新型コロナウイルス初期症状「発熱」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また2つ目の咳の症状に関してですが、新型コロナウイルス感染症の初期症状である咳の症状が現れたら、飛沫感染によって他の人にうつさないように気をつける必要があります。 飛沫感染というのは、
- 咳
- くしゃみ
- 至近距離での会話
をした際に、新型コロナウイルスが空気中に放出されたり、つばが相手に掛かったりして感染してしまうことを指します。
飛沫感染
感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の方がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染します。
また、新型コロナウイルス感染症の初期症状である咳をした時に、ウイルスを拡散しないように、マスクを装着する必要があります。在庫切れなどによって店頭でマスクを購入することができない場合は、手作りマスクなどで代替するようにしましょう。
- 飛沫感染予防策や
- 飛沫感染する距離
等について、詳細はこちらの記事をご参照ください。
また厚生労働省によると、新型コロナウイルスの初期症状としては、喉の痛みが現れます。(出典)
喉の痛みを感じることは誰にでもあることなので、軽視しがちな症状であると言えます。というのも、例えば新型コロナウイルスの初期症状や風邪の症状以外にも、
- 空気の乾燥
- 声の出し過ぎ
- タバコを吸っているため
- 友達とおしゃべりのしすぎ
- 激辛の食べ物を食べたため
- いびきをかいたため
などによっても、同様に喉の痛みを感じることがあるからです。
そこで新型コロナウイルスの初期症状であるかどうか判断するためには、以下のように喉の痛みの原因を細分化する必要があります。
- 「感染」
- 新型コロナウイルスや細菌のせい?
- 「のど粘膜の乾燥」
- 鼻づまりや口呼吸のせい?
- 「のどの酷使」
- 長時間しゃべり続けたせい?
- 「のどへの刺激」
- タバコや香辛料等のせい?
このうち一番上の「感染」が疑われる場合は、医師のもとに診療に行き、専門家の判断を仰ぐようにしましょう。
喉の痛みについて、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
新型コロナウイルスの初期症状として、例えば5万例を超える「WHOと中国を含む25か国専門家による報告(2020年2月25日)」によると、新型コロナウイルスの主な症状として3.7%は下痢がみられましたが、
- 87.9%の発熱や
- 67.7%の咳
などには遠く及ばない数字です。
As of 20 February 2020 and 12 based on 55924 laboratory confirmed cases, typical signs and symptoms include: fever(87.9%), dry cough (67.7%), fatigue (38.1%), sputum production (33.4%), shortness of breath(18.6%), sore throat (13.9%), headache (13.6%), myalgia or arthralgia (14.8%), chills (11.4%),nausea or vomiting (5.0%), nasal congestion (4.8%), diarrhea (3.7%), and hemoptysis (0.9%),and conjunctival congestion (0.8%).
そのため下痢になったからといって、すぐに新型コロナウイルスであると考えるのは時期尚早です。
また、例えば精神的なストレスが原因で、下痢をすることもあります。(出典)
したがって、例えば新型コロナウイルスの初期症状である
- 発熱や
- 咳
などによってストレスを感じ、下痢につながってしまう可能性もあるでしょう。
そこで職場内クラスターを発生させないために、下痢や軟便の症状がある従業員がいる場合は、まずこちらの記事を参考に、原因を明確化することを勧めてみるのも良いでしょう。
他にも、新型コロナウイルスの初期症状について詳しく学びたい方はこちらの記事をご覧ください。
コメント