高齢化社会対策について知りたいですか?
高齢化社会対策は、急速な高齢化が進む日本にとって、緊急かつ重要な問題です。
しかし、対策の全体像を理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで、内閣が作成した高齢化社会対策大綱に基づいて、どのような対策が実施されているのかを詳しく説明していきます。
高齢化対策の説明に入る前に、未だ高齢化社会の現状を理解していない方は、こちらの記事を先に一読してから本記事を読み進めた方が理解が深まります。
高齢化社会対策大綱の作成
内閣は高齢化社会対策を行うために、高齢社会対策大綱を定めています。
高齢社会対策大綱は、二つの視点から策定されています。
それぞれの視点に基づいて説明していきます。
視点1 新しい高齢社会対策大綱の策定
高齢化に伴う課題に対応するために、日本政府は高齢社会対策の指針として、高齢社会対策大綱を定めています。
大綱は1996年に最初に策定されて以来、直近で2018年2月に現状の高齢社会情勢を踏まえて改訂されました。
出典
<視点1> 新しい高齢社会対策大綱の策定|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
各省庁が実施している高齢社会対策は雇用年金、介護、医療、教育まちづくり、住まい、技術革新など様々な分野に渡っています。
高齢社会対策大綱は5年ごとに見直されており、様々な分野の高齢社会対策を方向付ける重要な指針となっています。
この大綱案は、2018年2月16日に閣議決定されましたが、新しい高齢社会対策大綱ができるまでの経緯や、改訂のポイントを理解することによって、2013年から2018年までの5年間で何が変化してきているのかを把握しやすくなります。
それでは詳しく説明していきます。
高齢社会対策大綱の改定までの流れ
平成24年、大綱の見直しを行うことは、安倍晋三内閣総理大臣を会長とする高齢者回対策会議において、平成29年6月に決定しました、この会議では見直しを行う理由として社会経済情勢が変化した事を挙げています。
平成24年に策定された前回の対抗は高齢化率が23%でしたが、平成27年には26%となって5年間で3.6ポイントも上昇しています。
また、生産年齢人口は8000万人を切ってしまい、総人口も減少に転じています。
社会政策面では、社会保障、介護医療、少子化対策の取り組みが進展して日本の高齢化を支える社会システムが整備されました。
- 65歳までの雇用確保措置の定着が進展しているかどうかや、
- 成年後見制度利用促進計画が策定されたり、
- 高齢運転者の事故防止対策や住宅セーフティネット法の改正
など色々と、進捗がありました。
日本一億総活躍プランや働き方改革実行計画など高齢者化への政策方針も新しく作成されました。
高齢社会対策大綱を見直すということは、ここまで説明した進捗を踏まえて決定されました。
まず有識者から幅広く意見を取るために、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会が内閣府に設置されました。
各委員の専門分野は
- 地方自治
- 報道
- まち作り
- 起業
- 労働経済
- 市民活動
- 地域活動
- 社会保障
- 医療・保健
- 科学技術
- 国際経済
など多岐に及び、幅広い視点から議論が行われました。
構成員としては以下の16名です。
当然のことですが、いずれのメンバーにせよ、その道の一流の人材ばかりです。
「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」の構成員
- 市原 健一 医療法人健佑会理事長
- 猪熊 律子 読売新聞東京本社社会保障部部長
- 大月 敏雄 東京大学大学院工学系研究科教授
- 片桐 実央 銀座セカンドライフ株式会社代表取締役
- 近藤 絢子 東京大学社会科学研究所准教授
- (座長)清家 篤 慶應義塾学事顧問(前塾長)・慶應義塾大学商学部教授
- 高木 朋代 敬愛大学経済学部教授
- 塚谷 睆子 特定非営利活動法人
- エイジコンサーン・ジャパン理事長
- やすみたけじ 社会福祉協議会福祉推進委員(千葉県山武市松尾地区)
- (平成27年度エイジレス章受章者(内閣府))
- 藤森 克彦 みずほ情報総研株式会社主席研究員・日本福祉大学教授
- 藤原 佳典 東京都健康長寿医療センター研究所
- 社会参加と地域保健研究チーム研究部長
- 松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科特任准教授
- 村上 由美子 OECD東京センター所長
出典
<視点1> 新しい高齢社会対策大綱の策定|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
討論会での議論
討論会は高齢期の活躍の場の創造や、高齢者の生活基盤の確保、また高齢化する社会への対応力の向上をテーマとしました。
そして平成26年6月から平成29年10月まで、合計で6回開催されました。
さらに第1回討論会で各委員から課題設定が行われて、その後の回で具体的に検討が重ねられました。
第1回検討会での主な指摘事項としては、例えば高齢者の能力、平均寿命、収入意欲が高いことは日本の各種政策がうまくいっていた証であるという点です。
また
- 女性就労促進や、
- 生涯現役社会によって支え手を増加させたり、
- 高齢者の金融資産の活用や、
- 健康寿命を延ばすこと、
- また介護負担の軽減をロボット技術を活用する必要がある
などの課題を認識しました。
また調査研究においては、高齢者をひとまとめにせず、年代別、例えば70代・80代・90代などに分類したデータも必要だという課題も認識することができました。
さらなる検討会での議論の末、平成29年10月には報告書が取りまとめられました。
そして新たな課題として、構成員メンバーは以下の項目を指摘しました。
- 1人暮らし高齢者層の増加や地域コミュニティーの希薄化、
- 長寿化に伴う資産面、
- 健康面の維持、
- 意欲のある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境、
- 様々な分野における十分な支援やセーフティーネット、
- その両方の整備を図る必要がある
さらに報告書には以下のような新しい視点が盛り込まれました。
高齢者の活躍の支援
- 高齢期にも高い就業意欲は見られる現状を踏まえれば、年金制度をより使いやすい制度とするための検討を行ってはどうか。
- 企業については、壮年期からの副業・兼業経験も含めて高齢期の企業が円滑に行われるような環境を整備することは望ましい。
- 資産運用については、高齢者の保有する豊富な資産が豊かな老後につながるとともに、我が国の経済の成長にも資するよう資産が有効活用される環境整備が必要である。
- 介護離職ゼロの実現に向けて、労働者の確保や介護、労働者の専門性の見える化、または家族介護者への支援の取り組みを進めるなど、現役世代にも働きやすい社会作りが必要。
- 人生の最終段階の過ごし方については、認知症高齢者や1人暮らし、高齢者の増加を元に生活の質の向上の議論を進めて基本方針を定める。
近年の副業解禁の流れは、これらの高齢化社会対策を元に定められているので、高齢者の活躍の場と副業解禁は繋がっていると言えます。
高齢者の生活基盤を充実させる
地域コミュニティが脆弱化しています。
しかし、高齢期に地域に支えられるという視点だけではなく、子育て世代や若者など他の世代を支えることができるという認識が広く共有されることが望ましいです。
高齢者の生活の質の向上に先進技術を活用するために、ビッグデータ分析なども効果的に活用しながら、高齢者のニーズを踏まえた研究開発を進めることが必要です。
AIをはじめとする技術革新によるサービスが期待されています。
高齢化社会への対応力向上
持続可能な高齢社会を実現するためには、現役世代や高齢者を含めた、すべての構成員が力を発揮し合える社会づくりをするべきです。
そのためには個人が高齢社会の姿を理解する力を持つべきです。
社会保障は理解することによって若い世代が高齢社会を理解するのに役立ちます。
そのため、新入社員向けに社会保障を学ぶ機会を設ける、事業主へ補助制度を整備するなどを行います。
アジアの中で急速に高齢化に突入する国が増えているので、日本の高齢化対策に対する知見は世界から注目を受けています。
そこで日本の知見が広がる可能性を活かせる環境整備を行います。
出典
<視点1> 新しい高齢社会対策大綱の策定|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
新しい高齢社会対策大綱の概要について
検討会の報告書を踏まえて、政府では高齢社会対策大綱案の策定が進められました。
そして、平成30年2月に高齢社会対策会議において高齢社会対策大綱が閣議決定されました。
まず、新しい高齢社会対策大綱の冒頭部分を紹介します。
今後我が国の高齢化はますます進行し、合わせて総人口の減少も進むことが見込まれていることなどから、これまでの日本の社会モデルは今後もそのまま有効である保証はありません。
また10年・20年先を見据えて、持続可能な高齢者像を作っていくことが必要であると説明されています。
高齢者の体力的年齢は若くなっていることや、就業地域活動など何らかの形で社会との関わりを持つことについての意欲も高いことから、65歳以上を一律に高齢者と見る事はもはや通用しなくなってきています。
また70歳は、それ以降でも能力や意欲に応じた力を発揮可能な時代が到来しているとも指摘しています。
こうした現状認識のもとで、新しい高齢社会対策大綱は高齢化が進む中、すべての世代が満ち足りた人生を送ることができる環境に向けて、意欲ある人達の能力発揮を可能にする環境整備を目指します。
また、支援が必要な層へのセーフティネットの整備の両面に配慮することが新たな内容となっています。
出典
高齢社会対策大綱(平成30年2月16日閣議決定)|政策統括官(共生社会政策担当) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
新しい大綱には、平成24年高齢社会対策大綱の策定後に示された新しい政策方針が、以下のように反映されました。
●「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)を強力に推進し、家族の介護を理由とした離職を防止する。
そのために、介護休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境づくりを行う。
また、介護をしながら働き続けやすい環境の整備などを進め、仕事と介護を両立することができる雇用・就業環境の整備を図る。
少子高齢化の流れに歯止めをかけ、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けて、「ニッポン一億総活躍プラン」に基づく取組を推進する。
●一人一人の意思や能力、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できるよう、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を推進する。
出典
<視点1> 新しい高齢社会対策大綱の策定|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
ちなみに、上記の中で、「一度失敗を経験した方」とありますが、「家族の介護を理由とした離職をしてしまった方」との意味です。
また、技術革新の成果に期待して、政府は以下のような方針を明示しました。
●高齢者が自らの希望に応じて十分に能力が発揮できるよう、その支障となる問題(身体・認知能力、各種仕組み等)に対し、新技術が新たな視点で解決策をもたらす可能性に留意し、従来の発想を超えて環境整備や新技術の活用を進めることを含め、その問題を克服するための方策を検討することも重要である。
また、こうした目的での技術革新の活用に多世代が参画して、それぞれの得意とする役割を果たすよう促すことが必要である。
出典
https://www8.cao.go.jp/kourei/measure/taikou/pdf/p_honbun_h29.pdf
かなり堅苦しい表現ですが、要するに「みんなで新技術を活用していきましょう」という意味です。
ここまでの説明が、高齢社会対策大綱の改定の流れでした。
しかし、今一度、冒頭でも記載した平成30年2月16日に閣議決定した新たな高齢社会対策大綱の概要をご覧ください。
出典
<視点1> 新しい高齢社会対策大綱の策定|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
新しい大綱の各論においては上記の図に示す通り、六つの分野、
- 就業・所得、
- 健康・福祉、
- 学習・社会参加、
- 生活環境、
- 研究開発・国際社会への貢献
など、全ての世代の活躍推進について具体的な対策の方向性が定められました。
さらに、以下のような内容が盛り込まれています。
高齢期の就業意欲の高まりから社会保障制度を見直す
年金の受給開始時期は、現在60歳から70歳までの間で個人が自由に選べます。
このうち65歳より後に受給を開始する繰り下げ制度においては、積極的に制度の内容を理解できるよう取り組みます。
また、70歳以降の受給開始を選択可能に変更するなど、年金受給者にとって柔軟な制度の改善に向けた検討を政府は行なっています。
新しい大綱の閣議決定をした後、厚生労働省で開催された第1回社会保障審議会年金部会においては、具体的な検討が始められました。
第1回会合では今後の議論の進め方とこれまでの制度改正のことが議題となりました。
平成31年の財政検証の結果を踏まえて、制度改正に向けて再度検討を行っていく予定です。
人生の最終段階における終末期医療のあり方
まず、終末期医療(ターミナルケア)とは、老衰や病気などにより終末期を迎える人が、身体的・精神的に負担の少ないケアが行われることを意味します。
人生の最終段階における医療は、患者や家族にとって適切な情報が提供された上で、これに基づいて患者が医師と話し合いを行って患者本人の意思決定を下に行われることが重要です。
このため政府は、患者の相談に適切に対応できる人材育成を出来る体制を整備するとともに、国民に向けて情報提供を推進しています。
このテーマについては、高齢社会対策大綱の改定に先立って行われた「人生の最終段階における医療の普及啓発の在り方に関する検討会」において、平成29年8月から検討が進められてきました。
新しい大綱の閣議決定後は更に検討されて、平成30年3月に人生の最終段階における医療ケアの決定プロセスに関するガイドラインの改訂がされました。
今までのガイドラインでは、以下の3点が必要と説明されてきました。
- 医師からの適切な情報提供に基づいて患者本人が意思決定をすべきこと。
- 人生の最終段階における医療行為の開始や中止などは多くの専門職からなる医師達により構成される医療ケアチームによって慎重に判断をするべきこと。
- 可能な限り不快な症状を緩和して患者や家族の援助を通じたケアを行うこと。
しかし、今回の新たなガイドラインでは、上記の内容に加えて以下の4項目が追加されることで改善を検討されました。
- 病院だけではなく、在宅医療や介護現場で活用できるように、表題に「・ケア」という言葉を追記する。
- 医療ケアチームの対象に介護従事者が含まれることを明確にする。
- 心身の状態の変化等に応じて、本人の意思は変化しうるものであるため、医療・ケアの方針や、本人がどのような生き方を望むかなど、事前に患者と医師などが繰り返し話し合うことが重要。
- 患者本人が自分の意思を伝えられない状態になってしまう前に、本人の意思を推定できるものを家族等の信頼できる人の中から事前に決めておくことが重要。
また、検討会報告書では、人生の最終段階におけるいわゆるターミナルケアについて、本人の意思に沿った医療やケアが行われるように考える機会を確保して、家族等との話し合いをし、国民に啓発していくこととしています。
今後は厚生労働省によって啓発の取り組みを進めていく予定です。
認知症高齢者支援施策の推進
政府は高齢化の進展に伴って、さらに今後は増加が予想される認知症高齢者やその介護を行う家族達への支援を図ります。
そのために、認知症施策推進総合戦略(別名新オレンジプラン)を踏まえて認知症への理解を深めるための啓発や、認知症に応じた適切な医療や介護が提供される仕組みを構築するために、認知症初期集中支援チームを設置します。
また認知症疾患医療センターの整備の施策を推進します。
さらには、認知症の介護者への支援や、認知症にかかっている人を含む高齢者に優しい地域づくりの取り組みを政府は推進していきます。
厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を見据えて、認知症患者の意思が尊重され、できる限り住み慣れている地域で、自分らしく暮らし続けることができる社会を実現することを目指しています。
また新たに認知症施策推進総合戦略(別名新オレンジプラン)を、関係府省庁と共同で策定しました。
新しい大綱には、新オレンジプランの推進の他に、高齢者の認知能力低下への対策として以下のような内容が組み入れられています。
高齢の投資家を保護するために、金融老年学の進展も踏まえて、認知能力の低下などの高齢期に見られる特徴への対応を行う。
ちなみに、金融老年学とは、医療技術の進歩により寿命が伸びている現代において、資産の寿命も引き伸ばすための管理や運用をしていこうという考え方です。
認知機能検査や高齢者講習の実施によって、高齢者への交通安全意識の改善や高齢者の交通事故の防止を行います。
振り込め詐欺などの被害に遭いやすい高齢者を狙った犯罪や、認知症による徘徊に伴う危険、また悪質商法から高齢者を守るために各施策を推進していきます。
健康立国の構築に向けて、認知症などの健康課題や、生活環境に起因する課題に対して第5期科学技術基本計画で提唱したSociety 5.0の実現を目指す一環として、最先端科学技術を活用、または実装することにより、これらの課題解決に取り組みます。
Society5.0について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
認知症の高齢期にかかりやすい疾患や、がんなどの高齢期の主要な死因である病気について研究を行い、ゲノム科学などの最先端科学技術を使って新たな医療技術や薬を開発することを政府は推進しています。
交通安全への配慮
交通安全に関しては、政府により以下の6つの取り組みが行われます。
- 高齢者に配慮した交通安全施設等の設備の設置
- 参加・体験・実践型の交通安全教育の推進
- 認知機能検査及び高齢者講習の実施
- 運転適性相談の充実
- 運転免許返納したものへの支援のための取組促進
- 高齢者交通安全教育指導員の養成
また、それぞれの啓発活動の推進によって、高齢者への交通安全意識の普及徹底、また高齢者の交通事故防止を図ります。
その中でも高齢運転者による交通事故防止については、さらなる対策を政府一体となって推進していきます。
例えば、平成29年7月7日交通対策本部が決定した「高齢運転者による交通事故防止対策について」に基づいて改正道路交通法の円滑な施行、高齢者の移動手段の確保など社会全体で生活を支える体制の整備を運転免許制度のさらなるに見直しによって検討していきます。
そして、安全運転サポート車の普及と高速道路における逆走対策などの対策が主に講じられます。
ちなみに、安全運転サポート車とは、政府は高齢運転者の交通事故防止対策の一環として被害軽減を自動ブレーキやペダルの踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した車のことです。
このような車に対して、セーフティーサポートカーSの名称を付けて、被害軽減自動ブレーキを搭載した車セーフティーサポートカーと共に、官民連携で普及啓発に取り組んでいます。
高齢者の増加に伴って、75歳以上の高齢運転者が事故を起こす側となる交通死亡事故件数の割合が上昇しています。
そのため新しい高齢社会対策大綱の検討に先立って、平成28年11月に政府は「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」を開催することで、高齢運転者による交通事故防止に取り組んできました。
80歳以上の高齢運転者による交通事故死亡者数は、2016年の1年間で、266人にも上ります。
新しい大綱では、大綱に明記された取り組みを通じ、2020年までに80歳以上の高齢運転者の交通事故死者数を、200人以下(25%減)を目指しています。
推進体制
高齢社会対策大綱を推進するため、高齢社会対策会議で大綱のフォローアップなどの重要事項の審議を行う事としています。
推進では留意事項として平成24年から定められた数値目標に加えて、新大綱から新たに参照指標が置かれることになりました。
参照指標には総人口に占める高齢者の割合や、65歳以上人口に占める単身世帯の者の割合(男性、女性)があります。
これは目標値としては定めることは難しくても、日本の高齢社会の状況や政策進捗を把握して課題を定める上では把握するべき数値として掲げられています。
また大綱は政府の高齢者社会対策の中長期的な指針として、経済社会情勢に沿って必要と認められる場合に限って、5年ごとに見直される可能性があります。
視点2 先端技術による高齢社会の健康促進
次に高齢化社会対策大綱の策定に基づく、二つ目の視点について説明していきます。
2つ目の視点としては、先進技術による高齢社会の健康促進です。
目的
平成29年度高齢者の健康に関する調査結果を紹介します。
また課題の解決可能性が期待されている先端技術の科学技術の現状を紹介していきます。
内閣府高齢者の健康に関する調査(平成29年度)
- 調査地域
- 全国
- 調査対象者
- 全国の55歳以上(平成29年1月1日現在)の男女個人(施設入所は除く)
- 調査時期
- 平成29年12月16日~平成30年1月14日(ただし、年末年始にあたる12月26日~1月5日は、調査の実施を休止した。)
- 有効回収数
- 1,998人(標本数男女あわせて3,000人)
- [都市規模区分]
- 大都市 東京都23区・政令指定都市
- 中都市 人口10万人以上の市
- 小都市 人口10万人未満の市
- 町村 郡部(町村)
出典
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h29/zentai/index.html
構成
- 高齢者の健康と日常生活
- ロボットセラピー、サポカーS
- 医療サービスの利用と移動手段
- 遠隔医療
- インターネットリテラシー
- シニアがシニアに教えるパソコン教室
概要
高齢者の健康と日常生活
主観的に健康状態が良い人は、外出頻度や会話頻度、または社会的な活動への参加のいずれにおいても、良くない人よりも活発であるという結果が得られました。
やはり自分の健康に関してポジティブな感情を持つことは、好ましいことだと考えられます。
病は気から、ということわざがありますが、老いは気から、ということわざも作られるかもしれません。
出典
1 健康と日常生活|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
自分の健康状態が良くないと考えている人が日常生活において不活発となってしまい、不活発になることでますます健康に対する自己認識が下がってしまうという悪循環が起こらないようにするべきです。
そこで、自分の健康状態が良くないと考える層の特性や実態を踏まえて、対策を講じることが有効であると考えられます。
また単身世帯が増加していますが、今回の調査からは単身世帯において、外出や会話の頻度が低いという結果が得られました。
そのため就業や社会活動、多世代交流などの多様な形で社会生活を支援することが望ましいです。
なぜなら、特に75歳以上の人は、毎日誰とも触れ合わないことで痴呆症にかかってしまうリスクも上がってしまうからです。
出典
1 健康と日常生活|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
科学技術で拓く日常生活の健康
科学技術を用いて、会話や外出を増やすことは可能かという点を検討していきます。
実用例の一つに、AIを使ったセラピーロボットがあります。
より詳細にいうと、国立研究開発法人産業技術総合研究所が2004年に発表したロボットセラピー用のアザラシ型ロボットパロです。
これは、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルに、体長57センチ、重さは2.5kg、センサーやマイクを備えて、外部からの刺激や朝昼夜のリズムから生き物らしい動きをするのが特徴です。
また学習機能によって、新しく名前を学習したり、撫でられた時の反応を持ち主の好みに応じて行動学習して使ううちに、個性を獲得するように変化していきます。
またソニーが開発しているAIBOなども、癒しの効果をもたらす点で共通しています。
これらの分野においては、今後の科学技術の発達により本物と同等か、もしくはそれ以上のプラスの効果を高齢者にもたらす可能性も期待されています。
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1 健康と日常生活|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
介護老人保健施設における実証研究によると、社会的効果や心理的効果がセラピーロボットにより得られたと言います。
また、科学技術は高齢期の外出の促進にも役立つことが期待されています。
運転免許の自主返納をきっかけに、外出頻度が激減してしまうケースがあります。
しかし高齢期にも安全に運転できる自動運転車が利用できるようになれば、日常の買い物などの必要に応じて外出するきっかけを得る可能性があります。
前の項でも説明しましたが、国は高齢運転者の安全運転を支援する先進安全技術を搭載している自動車(愛称サポカーS)で、官民を挙げた普及に取り組んでいます。
サポカーSは、自動ブレーキやペダル踏み間違えの時の加速抑制装置、また車線逸脱警報や先進ライトなどを備えています。
これらの技術により、高齢運転者による交通事故防止に一定効果が期待されています。
出典
1 健康と日常生活|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
医療サービスの利用と移動手段
主観的に健康状態が良くないと感じている人や、70代後半以降では、2~3割の人が医療サービス利用時の移動手段を、家族による送迎に頼っています。
主観的に健康状態があまり良くないと感じている人は約2割、良くないと感じている人は約3割が、医療サービスを週に1回以上を利用しています。
そのため、送迎で頼りにされる家族の負担も検討する必要があります。
科学技術で拓く医療サービスへのアクセス
最近は科学技術を用いて、医療サービスを利用することを容易にする方法の一つとしては、情報通信技術を活用した遠隔医療が挙げられます。
遠隔診療には医師が患者を診療する時に、別の専門医からオンラインでアドバイスを受けるケースがあります。
また、医師がコンピューターの画面を通じて、自宅や高齢者福祉施設にいる患者の状態を確認して診察するケースもあります。
手術をした後の予後の確認などでフォローアップ目的の通院を遠隔医療で行うことができれば、通院の医療負担を軽減することにより、医療サービスを容易に受診できるようになります。
遠隔診療が実現することで、病気を早期に治療できたり、アフターケアによる健康増進が期待されます。
先進的な事例としては、旭川医科大学病院で1994年から、情報通信技術を活用し、遠隔医療を進めてきたことが挙げられます。
例えば眼科で手術を受けた患者が、専門的な術後管理を必要とする場合、患者の近所の主治医の元で旭川医科大学病院の執刀医の診察を受けることができる活動を行っています。
また自宅療養中の患者向けに家庭用情報端末を開発して、血圧などのバイタルデータを端末送信することで、遠隔でモニタリング可能な仕組みも整えています。
これらの取り組みにより、患者はより一層きめ細かなケアを受けることが可能になります。
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2 医療サービスの利用と移動手段|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
さらに旭川医科大学病院は2016年から、モバイル端末を用いた、クラウド医療も行っています。
地方病院からインターネット上のクラウドを通じて送信されてくる患者情報を、専門医がスマートフォンやタブレット端末で閲覧します。
また、診断や治療方針のアドバイス、旭川医科大学病院への緊急搬送の必要性の有無の判断を行うもので、心疾患などが発症してから治療開始までの時間が短縮されるなどの大きな効果を得ています。
これらの技術が普及すれば日本全国どこにいても、高い水準の治療を受けることが可能になります。
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2 医療サービスの利用と移動手段|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
インターネットリテラシー
医療や健康に関する情報をインターネットを通じて得るという行動は、調査対象者の30%程度に見られます。
特に年齢が低いほどインターネットを活用する傾向があります。
女性単身世帯を除いて、得られた情報をほぼ信用して行動の根拠にしているという人の割合は低く、他の情報と併せて判断したり、単に参考にしたりするだけという人が大多数を占めました。
出典
3 インターネット・リテラシー|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
注意点としては、インターネットでは様々な情報が発信されていて、得られた情報が必ずしも正しいものであるとは限りません。
そのため、正しい情報を取捨選択する面を持つことが求められます。
そこで、インターネット情報はすぐに鵜呑みにするのではなく、専門家に相談したり、信頼できる家族などに判断を仰ぐ等を行うことが重要です。
科学技術で健康を拓くためのインターネット・リテラシー
高齢期に入ってから、初めてインターネットリテラシーを習得するということは一般的には難しいと思い込んでいる人が多いです。
しかし「シニアが情報技術を身につけ、その技術を活用して中高年等の情報に関する学習支援、生きがい作り、仲間作り」を推進している高齢者の活動団体「PCマスターズ」があります。
この団体は平成29年度に内閣府特命担当大臣の社会参加賞を受賞しました。
この名古屋市のNPO法人PCマスターズは、名古屋市高齢者、就業支援センターのパソコンインストラクター講習の修了者で結成されたグループです。
出典
3 インターネット・リテラシー|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
PCマスターズは16年間にわたって、シニア向けにパソコン教室や個人指導を実施しています。
構成員の平均年齢は71歳で、これまでの受講者は個人指導が6000人、講座指導が4000人で、初心者向けの講座から、パソコン検定準二級対策講座まで幅広く提供しています。
ネット犯罪や個人情報流出の被害を防ぐための、セキュリティの観点も盛り込まれています。
もしパソコンに詳しくない全ての高齢者がパソコンを気軽に活用するようになれば、個人情報が流出してしまったり、脆弱なセキュリティをつかれて犯罪に悪用されてしまったりと、様々な問題が発生してしまうことが予想されます。
そのため、このようなシニア向けのパソコンスクールを通じて、インターネットリテラシーの向上を図ることが重要であるといえます。
シニアがシニアに教えることで、高齢期に習得は難しいといった不安や、安全に利用できるかなどといった懸念を払拭できます。
また、それ同時に高齢期ならではのインターネットの活用の共有にもつながります。
こうした取り組みは、全国各地に成功事例が見られます。
例えば、平成28年度と29年度には以下二つの団体が、内閣府特命担当大臣の社会参加賞を受賞しました。
内閣府特命担当大臣の社会参加賞受賞団体
- 宮崎市の「NPOシニアネット佐土原」(パソコン等を「使う」能力を一から養うものや、インターネット安全講座のように「正しく使う」能力を養う講座を開講、平成28年度)
- 世田谷区のNPO法人シニアSOHO世田谷(シニアがシニアに教えるiPhone,iPad講座)
出典
<視点2> 先端技術等で拓く高齢社会の健康|平成30年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府高齢社会対策大綱、高齢社会白書、高齢社会対策に関する調査研究、エイジレス・ライフ実践事例、高齢社会フォーラム等の情報を掲載しています。
内閣府では、高齢者に難しいと考えられている内容で、取り組みの成果を上げて積極的な社会参加活動を実施する団体を、より良い高齢社会づくりの成功事例として選考しています。
今後高齢者が社会的に増加すれば、このような高齢者向けの団体は一層求められることが予想できます。
高齢社会対策の実施の状況
次に高齢社会対策の実施が、具体的にどのように行われているのかについて説明していきます。
高齢社会対策大綱
高齢社会対策の基本的な枠組み
日本の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法に基づいています。
高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長として、委員には関係閣僚が任命されています。
高齢社会対策の大綱案の作成や、高齢社会対策について必要な関係行政機関、相互の調整や高齢社会対策に関する重要事項の審議や実施の推進が行われています。
高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務づけられているものです。
また高齢社会対策大綱は、政府が推進する高齢社会対策の中長期に及ぶ基本的で総合的な指針となるものです。
人口高齢化によって、さまざまな分野で変化が生じています。
そのため高齢社会対策大綱の見直しを行うことが、高齢社会対策会議で決定されました。
高齢社会対策の基本的あり方等に関する検討会の報告書を踏まえて、政府内で高齢社会対策大綱案の策定が進められています。
そして平成30年2月には4度目となる高齢社会対策大綱が閣議決定されました。
高齢社会対策基本法第2条にある社会が構築されることを基本理念として、これから述べる三つの基本的考え方に則って、高齢社会対策を推進しています。
- 年齢による画一化を見直して、全ての年代の人が希望に応じて、意欲や能力を活かして活躍できる、エイジレス社会を目指す。
- 地域における生活基盤を整備して、人生のあらゆる段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを創設する。
- 技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を考える。
一億総活躍社会の実現に向けて
ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月閣議決定)に基づき介護離職ゼロに向けて、介護人材の処遇について、他の産業との賃金差がなくなるようにキャリアアップの仕組みを構築します。
具体的にいうと、月額平均1万円程度の改善を行うことを目標としています。
また、日本一億総活躍プランの進捗状況について、継続的な調査や施策の見直しの検討をするために、日本一億総活躍プランフォローアップ会合を開催しました。
働き方改革の実現に向けた活動
働き方改革は日本一億総活躍プランにおいて中心的なチャレンジと位置づけられています。
例えば、平成29年3月には第10回働き方改革実現会議で、働き方改革実行計画がまとめられました。
その働き方改革実行計画では、日本の企業文化やライフスタイル、また「働くということに関する考え方」そのものを変えていくためには、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、または罰則つき時間外労働の上限規制の導入など、長時間労働の是正をはじめとする様々な改革を示しています。
これらの取り組みによって高齢者は、より働きやすい環境が整えられると思われます。
それ以外にも、労働政策審議会では、一人ひとりの意思や能力、または置かれた状況に応じた様々な働き方を可能とする為に、長時間労働の是正や同一労働同一賃金をはじめとする改革を推進するための法案について、平成30年度通常国会に提出しました。
人生100年時代構想会議
人生100年時代においては、以下に挙げるような環境が、安定的な財源の下で社会から提供される必要があります。
- 高齢者から若者まですべての国民に活躍の場がある
- すべての人が元気に活躍し続けられる社会。
- 安心して暮らすことができる社会。
- 生涯を通じた切れ目のなく、質の高い教育を社会が用意してくれる。
- いつまでも高いスキルを身に付けられる学び直しの場。
また、日本の社会保障制度を子ども、若者、高齢者全ての人たちが誰もが安心できる、全世代型の社会保障へと大きく転換していく必要があります。
具体的に言うと、人づくり改革と名付けた人材への投資です。
今までも政府はみんなが生きがいを持って生活できるように人への投資を行なってきましたが、寿命が伸びて、人生100年時代を見据えた人づくり改革においては一億総括約社会を作っていく上での重要な区切りであると考えられます。
そこで人づくり改革なしには一億総活躍社会を作り上げることはできないと考えられて、平成29年8月の内閣構造では、新たに「人づくり改革担当大臣」が任命されました。
そして、人生100年時代を見据えた経済社会システムを作るための計画を作る新たな会議として、平成29年9月から、人生100年時代構想会議を開催して、平成29年12月に中間報告を取りまとめました。
この会議にアドバイザーとして、著書「ライフ・シフト」で世界的に有名なリンダグラットン教授も日本を訪れました。
また、人作り改革と生産性革命の両立を図り、少子高齢化を改善するために、平成29年12月に構想会議で新しい経済政策パッケージを策定しました。
分野別の施策の実施の状況
これ以降は高齢社会対策の実施の状況に関して、6分野に分類して主な取り組みをそれぞれ説明していきます。
6分野というのは就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献等、全ての世代の活躍推進の6つです。
就業・所得
まず就業と所得についてみていきます。
多様な働き方を選択可能な環境の整備
定年退職後において、アルバイト等の簡単な就業を希望する人に対して、意欲や能力に応じた就業機会または社会参加の場を総合的に提供している、シルバー人材センター事業について説明します。
政府は、各シルバー人材センターにおける、就業機会の拡大への取り組み支援を行っています。
特に現役世代の活躍推進のために、育児支援分野における就業機会確保への取り組みを支援する、高齢者活用事業を実施しました。
また、シルバー人材センターが地方公共団体や地域の経済団体などの関係機関と連携して、地域企業の雇用問題の解決につながる、新たな就業機会を作るための地域就業機会創出事業を創設しました。
政府は、各シルバー人材センターの会員が身近な地域で安心して働けるように、様々な就業機会を提供して適切な運営の確保を促しました。
また高齢者の多様なニーズに応えるために、平成28年から都道府県知事が業種や職種、または地域を指定した場合に限って派遣および職業紹介の働き方における就業時間の要件緩和が可能となりました。
具体的に言うと、平成29年度までに134地域で要件緩和がされています。
情報通信を活用した遠隔型勤務形態の開発と普及
高齢者の遠隔型勤務形態を構築するために、テレワークの普及に向けた環境整備を各省庁が推進しています。
これに基づいて、仕事と子育て、または介護などの両立を行えるように柔軟な働き方が可能なテレワークモデルを政府は構築しました。
今後も引き続き適正な労働条件で良質なテレワークを行っていくことを推進しています。
そして、平成29年から2020年東京オリンピックの開会式が予定される7月24日をテレワークデイと位置づけ、これによって、全国一斉のテレワークを実施しています。
この日は全国各地から様々な分野の企業自治体が950団体、6万人以上がテレワークを行ないました。
これからもさまざまな形でテレワークの推進が行われる予定です。
高齢期の起業支援
日本政策金融公庫は、高齢者を対象に優遇金利を適用する融資制度によって開業支援を行いました。
また中高年齢者などの雇用機会創出を目指して、中高年齢者等が起業する時に必要な雇用創出に必要である経費を助成する措置を実施しました。
そして、助成金の支給要件となっている雇い入れ従業員の年齢に関する要件緩和を行いました。
日本政策金融公庫の融資制度に関して、エイジフリーな勤労環境整備の促進のために高齢者の雇用を行なう事業者に対して、当該制度の利用に必要な雇用創出効果の要件を緩和する措置を継続しました。
この措置は、具体的に言うと60歳以上が対象になっており、二名以上の雇用創出から、一名以上の雇用創出へと緩和されたというものです。
全ての国民が安心できる、公的年金制度の構築
高齢者の70%が、65歳を超えても働きたいと希望しています。
その状況を受けて65歳より後に受給開始する、年金の繰り下げ制度に関して、積極的に制度の周知に政府は取り組みました。
また70歳以降の受給開始を選択可能と変更するなど、年金受給者にとって、より柔軟で使いやすいものとなるように制度の改善に向けた検討を行うことにしました。
年金繰り下げ制度の周知に関しては、日本年金機構を通して、年金請求書を事前に送付する際に同封しているパンフレットや特別支給の老齢厚生年金受給者に65歳時には年金請求書を送付する際に同封しているパンフレットについて、繰り下げ制度に関する記載を増やして、また図を挿入するなどの工夫を行い、周知方法の改善を行っています。
また短時間労働者にとって、働きやすい環境を整えました。
具体的にいうと、短時間労働者に対する年金などの保障を手厚くする観点から、平成28年に成立した公的年金制度の持続可能性の向上を図るために、国民年金法などの一部を改正する法律に基づいて、平成28年10月からの大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の提供を拡大しました。
さらに、平成29年4月から、中小企業で働く短時間労働者に対して、労使合意に基づいて企業単位で使用者保険を適応可能としました。
また全ての適用事業所に対するリーフレットの送付、事業の説明会の実施などの周知や広報に取り組みました。
資産形成の促進のための環境整備
勤労者財産形成貯蓄制度の普及を図ることにより、老後に備えた、勤労者の自助努力による財産形成を促進しました。
確定拠出年金については、平成29年1月より加入可能範囲を拡大させた個人型確定拠出年金に関して、普及を図るための周知や広報を行っています。
また、掛金拠出規制の年単位への見直しを行いました。
平成30年1月より、柔軟な掛金拠出を可能とするように変更されています。
退職金制度については、中小企業における退職金制度の導入を支援する目的で、中小企業退職金共済制度の普及のための施策を行いました。
さらには国民の安定的な資産形成の実現のために、少額から長期・積立・分散投資の定着を促すために、非課税累積投資契約に係る非課税措置を創設しました。
この制度は平成30年1月からスタートしましたが、制度の普及のために広報活動を通じて周知に努めました。
また、きっかけがないという理由から、投資を通じて資産形成に取り組めていない勤労者の存在を考えて、身近な場所で積立NISAを開始するきっかけが得られるように、職場を活用した積立NISAの利用促進を図る取組に当たる、「職場積立NISA」をスタートをしました。
健康・福祉
持続可能な介護保険制度の運営
介護保険制度が定着して、サービス利用の大幅な伸びに伴って、介護費用が急速に増大しています。
このような介護の状況を踏まえた上で高齢者が住み慣れた地域で生活を続けることを可能にするために、医療・介護・予防・住まい・生活・新サービスが包括的に確保できる地域包括ケアシステムを推進するために、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が平成29年6月に成立しました。
具体的に言うと、以下の四点です。
- 市町村すべてが、保険者機能を発揮して自立支援重度化防止等に向けて取り組む仕組みの制度化です。
- また医療介護の連携を推進するための市町村の取り組みに対する、都道府県による支援を行います。
- さらに地域共生社会の実現に向けた、市町村の取り組みの推進を行います。
- 加えて、介護保険制度の持続可能性の確保等を盛り込みました。
必要な介護サービスの確保
地域住民が可能な限り住み慣れた地域で、介護サービスを断続的に受けることのできる体制の実現を目指します。
そのために、平成29年度において訪問介護と訪問看護が密接に連携した、定期巡回随時対応型訪問介護看護や、小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスの充実を行いました。
またサービス付き高齢者向け住宅等の、高齢者の住まいの整備や特定施設入居者生活介護事業所を適切に運用するための支援を進めました。
また、地域で暮らしている高齢者個人に対する支援を充実させて、それを支えている社会基盤の整備を同時に進めていきます。
地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として、全国自治体に地域ケア会議の普及や定着を図りました。
それと同時に、介護人材の確保のために、地域医療介護総合確保基金を活用することによって、参入促進、労働環境の改善、資質の向上に向けた都道府県の取り組みを支援しました。
そして、介護福祉修学資金貸付事業や、再就職準備金貸付事業などによって、新規参入の促進や離職した介護人材の呼び戻し対策に取り組みました。
それ以外にもボランティアを行う、中高年齢者への入門的研修や職場体験の実施を行いました。
さらに、平成29年度に臨時に介護報酬改定を行い、介護職員処遇改善加算を拡充しています。
その際、介護職員1人あたりの月額平均1万円相当の処遇改善を実施しました。
それに加えて、介護福祉士修学資金等貸付事業については平成29年度補正予算で貸付原資等の積み増しが行なわれました。
持続可能な高齢者医療制度の運営
平成27年5月に、持続可能な医療保険制度を構築する為の国民健康保険法の一部を改正する法律が公布されました。被用者保険者の、後期高齢者支援金について利用者保険者間の支え合いを強化して、負担能力に応じた負担を徹底する観点から、総報酬割部分を平成27年度に2分の一、平成28年度に3分の二に引き上げました。また平成29年度から、全面総報酬割を実施することになりました。
認知症高齢者支援施策の推進
認知症の人の意思が尊重されて、できる限り住み慣れている地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現するために、平成27年1月に認知症施策推進総合戦略、(新オレンジプラン)を策定しました。
新オレンジプランというのは、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年までを対象期間としています。
7つの柱に沿って認知症施策を総合的に推進していくものです。
具体的に言うと以下の7つの項目です。
- 認知症への理解を深めるための普及啓発の推進、
- 認知症の容態に応じた適時・適切な医療介護等の提供、
- 若年性認知症施策の強化、
- 認知症の人の介護者への支援、
- 認知症の人を含む高齢者に優しい地域づくりの推進
- 認知症の予防法・診断法・治療法・リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進、
- 認知症の人やその家族の視点の重視の柱に沿って施策を推進していく
また新オレンジプランでは、平成29年度末を当面の目標、年度として施策ごとの具体的な数値目標などを定めていました。
これまでの施策の進捗状況は順調であったことから、平成29年7月に認知症高齢者等に優しい地域づくりに係る関係省庁連絡会議を開催し、数値目標について平成32年度末までの目標に更新します。
また施策を効果的に実行できるように、内容を充実させるなどの改訂を行いました。
人生の最終段階における医療のあり方
平成29年度から、人生の最終段階における医療の普及啓発の在り方に関する検討会を開催しました。
また国民医療福祉従事者への意識調査を実施した上で、国民に対する情報提供や普及啓発の在り方について報告書を取りまとめました。
さらに人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインを、繰り返し話し合う重要性や、在宅医療介護の現場において活用する観点から改定しました。
学習・社会参加
高等教育機関における社会人の学習機会の提供
生涯学習のニーズが高まっており、それに対応するために、大学では以下の7点を一層促進しました。
- 社会人入試の実施
- 夜間大学院の設置、
- 昼夜開講制の実施
- 科目等履修生制度の実施
- 長期履修学生制度の実施
- 履修形態の柔軟化
- 社会人の受け入れ
また、大学がその学術研究や教育の成果を直接社会に開放して、履修証明プログラムや公開講座を実施するなどを行い、高度な学習機会提供を促進しました。
放送大学においては、テレビやラジオ放送またインターネットなどの身近なメディアを効果的に活用し、幅広く大学教育機会を国民に提供しました。
社会保障等の理解促進
安定的な資産形成をテーマにしたシンポジウムを開催することによって、幅広く金融教育を進めました。
また、職場つみたてNISAの導入と連携した投資教育を進めるために、職場での活用に重点を置いた投資教材を作成しました。
平成29年3月に改定した中学校学習指導要領の公民科や家庭科において、少子高齢社会における社会保障の充実・安定化や、介護に関する内容などが明記されました。
さらに若い世代が高齢者皆に理解する力を養うため、教職員を対象とした研修を実施することで、教育現場において、社会保障教育が正しく教えられる環境づくりに取り組んでいます。
より公平・公正な社会保障制度の基盤となるマイナンバー制度については、平成29年11月から情報連携の本格運用開始に伴って、介護保険をはじめた高齢者福祉に関する手続きを含む853事務手続きにおいて、従来必要とされていた、住民票の写しや課税証明書等の書類が不要となっています。
こうしたマイナンバー制度の取り組み状況については、地方公共団体と共に連携して国民への周知広報活動を行いました。
ICTリテラシーの向上
平成29年11月から、情報通信審議会IoT新時代の未来づくり検討委員会において、IoTやAIが日常生活で当たり前の時代に向けて、高齢者がICTを活用した社会参加を促すための具体策について検討を開始しました。
- IoTの意味
- Internet of Thingsの略で、インターネットに接続されていなかったモノが接続されることを意味しています。
- ICTの意味
- Information and Communication Technology(情報通信技術)の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味しています。
通信技術を活用したコミュニケーションを指していて、 情報処理だけでなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称を意味しています。
ライフステージに応じた消費者教育の取組の促進
消費者教育は、幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行われます。
年齢、障害の有無、その他の消費者の特性などに配慮した、適切な方法で行われなければなりません。
こうした消費者教育を総合的に推進するために、平成24年12月に消費者教育の推進に関する法律が施行されました。
この法律に基づいて、平成27年7月から第2期消費者教育推進会議で、消費者教育の推進に関する基本的な方針の見直しに向けた論点整理や、社会情勢の変化に対応した課題の充実が検討されました。
さらに、消費者市民社会の形成への参画の重要性の理解促進についても検討がされました。
そして、平成29年6月にその成果を取りまとめて公表しています。
また平成29年8月に始まった、第3期消費者教育推進会議においても、基本方針の見直しについて議論を行いました。
そして、平成30年3月に変更について閣議決定がされました。
変更した後の基本方針については、ライフステージに応じた体系的な消費者教育を行う必要性と、その実現のための施策の方向性が示されています。
高齢者の社会参加と生きがいづくり
平成29年3月に改正された社会教育法を踏まえて、高齢者の幅広い地域住民や企業や団体の参画によって、以下の活動を全国的に推進しました。
- 地域と学校が連携して学びによるまちづくり
- 地域人材育成
- 郷土学習
- 放課後における学習・体験活動
- 地域全体で子どもたちの成長を支えて地域を調整する地域学校共同活動
これらの活動に加えて、児童生徒が放課後にICT教育を学ぶ場を作るにあたって、指導者の確保が重要な課題として指摘されています。
そのため、若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業において、教員やエンジニアなどの定年退職者の協力を受けて、指導者役として高齢者が参画するために必要なスキルの検証を行いました。
また、企業退職高齢者が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるようにするべきです。
そのため、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら、自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行いました。
それと同時に介護予防や生活支援サービスの基盤となる活動を促進する高齢者生きがい活動促進事業を実施しました。
生活環境
高齢者の居住の安定確保
平成23年10月の高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律の施行により、創設されたサービス付き高齢者向け住宅の供給促進のために、整備費に対する補助や税制の特例措置、また住宅金融支援機構の融資による支援を行いました。
そして、高齢者世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応するために、民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を平成29年度に創設しました。
これによって住宅の改修や入居者負担の軽減への支援を行いました。
住宅金融支援機構においては、高齢者自らが行う住宅のバリアフリー改修について高齢者向け返済特例制度を適用した融資を実施しています。
また証券化支援事業の枠組みを活用したフラット35Sによって、バリアフリー性能に優れた住宅に係る金利の引き下げを行なっています。
さらに住宅融資保険制度を活用して、民間金融機関が提供する住宅の建設、また購入改良の資金に係るリバースモーゲージの推進を支援しています。
リバースモーゲージの意味
- 自宅を担保にした融資制度のことです。
- 自宅を所有していても、現金収入が少ない高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保することができます。
共生社会の実現に向けた「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づく取組の推進
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会をきっかけとして、共生社会の実現に向けたユニバーサルデザインの街づくり、心のバリアフリーを推進しています。
先人の遺産として残していく施策を実行するため平成29年2月には、東京オリンピック競技大会、東京パラリンピック競技大会担当大臣を議長とする、ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議で、ユニバーサルデザイン2020行動計画を決定しました。
この行動計画に基づいて共生社会に向けた各施策に取り組みました。
また、この行動計画に基づいた、バリアフリー法と関連施策のあり方に関する検討結果を踏まえて、交通事業者によるハード対策とソフト対策が一体となった取り組みの推進を行いました。
また、バリアフリーの街づくりに向けた地域における取り組み強化や、バリアフリー法の適用対象の拡大、そして利用者へのバリアフリー情報の提供の推進の措置を講ずることを内容としたバリアフリー法の改正法案を閣議決定して国会に提出しました。
多世代に配慮したまちづくり・地域づくりの総合的推進
地方創世の観点から、以下で挙げるような地域づくりを目指しています。
- 生涯活躍できるまち
- 中高年齢者が希望に応じて、地方やまち中に移り住んで様々な世代と交流
- 健康でアクティブな生活を送る
- 必要な医療介護を受けられる
平成29年10月時点で245の地方公共団体が、生涯活躍のまちに取り組む意向を示しています。
その際に、79団体がすでに取り組みを始めていました。
平成29年度には関係府省が連携して地方公共団体の取り組みを支援する、生涯活躍のまち形成支援チームの対象団体を7団体から16団体へと拡大をしました。
取り組みの過程において、浮上した課題解決に向けて検討を行ないました。
さらに平成28年度に取りまとめた、生涯活躍のまち構想の具体化に向けたマニュアルを活用して、生涯活躍のまちの参考となる事例やノウハウの周知徹底を行いました。
また、地域再生法に基づく特例措置に関する生涯活躍のまちの地域再生計画の認定は、累計で17市町、17計画、生涯活躍のまち分野の取り組み関する地方創世推進交付金の交付決定は、累計で96団体、120事業となりました。
交通安全の確保
高齢運転者対策については、平成28年度中に、高齢運転者による交通事故が頻発しました。
そのことから、平成28年11月に高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議が開かれました。
これを受けて、高齢運転者の交通事故防止について、関係行政機関におけるさらなる対策の検討を促進しました。
その成果に基づいて早急に対策を行うために、平成28年11月に交通対策本部の下に、関係省庁局長級を構成員とする高齢運転者、交通事故防止対策ワーキングチームを設置しました。
このチームでは、内閣総理大臣からの指示に基づいた各種対策について、担当する省庁を中心に検討して、対策を早急に講じていくこととしています。
平成29年6月にそれまでの成果を取りまとめました。
その結果、この平成29年7月には交通対策本部で、このチームがまとめた施策を、緊急に推進することに決まりました。
今後取りまとめた施策を推進すると同時に、このチームにおけるさらなる対策について検討を行ってきます。
人権侵害からの保護
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づいて、養介護施設従事者による虐待や養護者による虐待の状況に関しては、平成28年度に続いて調査を行いました。
各都道府県における虐待の状況を把握し、市町村に高齢者虐待に関する通報や届け出があった場合には関係機関と連携して速やかに、高齢者の安全確認や虐待防止と保護を行うことによって、高齢者虐待の早期対応が推進されるように必要な支援を行いました。
また、支援を必要とする高齢者の実態を把握する事や、虐待されていることへの対応を推進しました。
具体的にいうと、高齢者の権利擁護や総合相談窓口の業務を円滑に行うことができるように、各市町村に地域包括支援センターの職員に対する研修を行いました。
法務局や地方法務局において、高齢者の人権問題に関する相談に応じました。
また家庭や高齢者施設における虐待や高齢者を被害者とする人権侵害の疑いのある問題を認知した場合に、人権侵犯事件として調査を行い、その結果を踏まえて、適切な措置を講ずることで被害の救済と人権尊重、思想の普及に努めています。
平成29年度でも、高齢者施設の社会福祉施設で入居者と家族が気軽に相談できるように直接相談所を開設しました。
また、全国一斉の高齢者障害者の人権あんしん相談強化週間を作って、電話相談の受付時間を延長しました。
また休日も相談に応じることで相談体制の強化を図りました。
悪質商法からの保護
業務停止を命じられた法人の役員に対する業務禁止命令や、電話勧誘販売による過量販売への解除権などの高齢者被害の防止の為の新たな措置が盛り込まれた特定商取引に関する法律の一部を改正する法律が、平成29年12月に施行されました。
これ以外にも1人暮らしの高齢者の判断能力の低下に付け込んで、大量の商品を購入させる被害が店舗契約の事例でも発生していました。
そのため過量な内容の消費者契約について消費者に取り消し権を認める規定を新設した消費者契約法の1部を改正する法律が平成29年6月に施行されました。
「知っていますか?消費者契約法-民法・商法の特例となる規定について-」というリーフレットを作成して、消費者への周知を行いました。
このような被害が発生して拡大することを防止するために、被害の回復という観点からは、消費者団体訴訟制度の活用が重要です。
そのため、平成28年10月から施行された、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続きの特例に関する法律によって、特定適格消費者団体が、消費者に代わって損害賠償の請求に応じる訴訟を行うことができる制度が導入されました。
そのため、この団体が実際に被害を回復できるように、平成29年10月に施行された、独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律において、独立行政法人国民生活センターが特定適格消費者団体に変わって、仮差し押さえの担保を立てることができる措置を盛り込みました。
その結果、消費者団体訴訟制度の機能強化を図りました。
高齢消費者を狙った悪質な犯罪は、一度取り締まったとしても、別の形へと手段を変えて行われていくので、社会的にも柔軟な高齢者保護を講じていくべきだと言えます。
防災施策の推進
災害時の高齢者の要配慮者の円滑な避難を確保するためには、平成28年台風第10号災害を踏まえた課題と対策のあり方を踏まえて、関係行政機関団体が連携して平成29年8月28配慮者利用施設における避難に関する計画作成の事例集を作成しました。
また全国にその知見を展開した、水防法と土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律が一部改正されました。
浸水想定区域以内、または土砂災害警戒区域内に位置する市町村地域防災計画に名称と所在地を定められた高齢者が利用する要配慮者利用施設の所有者又は管理者に対して、避難確保計画の作成及び計画に基づく訓練の実施が義務づけられました。
これら改正法の施行に合わせて、水害と土砂災害に関する要配慮者利用施設の避難加工計画作成の手引きや、避難計画点検マニュアルを政府は作成しました。
平成29年8月に土砂災害防止対策基本指針を変更して、要配慮者利用施設での避難加工計画を作成したり、計画に基づく訓練の実施が推進されるように支援を行いました。
成年後見制度の利用促進
認知症高齢者の財産管理や契約にに対して、本人を支援する成年後見制度について周知を図りました。
成年後見制度は認知症や知的障害、またはその他の精神上の障害があることによって、財産の管理又は日常生活に支障がある者を支える重要な手段です。
その利用の促進に関する施策を総合的に推進するために、平成28年4月に成年後見制度の利用の促進に関する法律が成立しました。
この法律に基づいて成年後見制度利用促進委員会に受ける議論を踏まえて、平成29年3月に、成年後見制度を利用促進基本計画を閣議決定しました。
基本計画に関しては、利用者がメリットを実感できる制度運用の改善、権利擁護支援の地域連携ネットワーク作り、または不正防止の徹底と利用しやすさとの調和などの点から、施策目標を作成しています。
また、成年後見制度の利用促進に関する法律に基づく措置として、成年被後見人と被補佐人の人権が尊重されるようになりました。
成年被後見人等であることを理由に不当に差別されることがないように、成年被後見人等に係る欠格条項その他の権利の制限にかかる措置の適正化等を図るための措置を講ずる「成年被後見人等の権利の制限にかかる措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」を平成30年3月に閣議決定し、国会に提出しました。
研究開発・国際社会への貢献等
先進技術の活用及び高齢者向け市場の活性化
公的保険外の予防、健康管理サービスの健康寿命延伸産業の創出推進に向けて、供給や需要の両方の面から検討して、取り組みを行いました。
具体的に言うと、地域版次世代ヘルスケア協議会の活動の促進や、官民ファンドの活用促進、またグレーゾーンの解消等の供給面の支援や企業健保等による健康経営の促進の需要面のシーンについて検討を行ないました。
このような取り組みと同時に、健康立国に向けて、認知症や虚弱の健康課題や生活環境に起因する課題の解決のために、第5期科学技術基本計画で提唱した、Society 5.0の構築を目指して、最先端科学技術の活用に取り組みました。
Society 5.0の意味
- 仮想空間と現実空間が融合した、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことです。
- 狩猟社会(Society 1.0)、
- 農耕社会(Society 2.0)、
- 工業社会(Society 3.0)、
- 情報社会(Society 4.0)、
- に続く新たな社会がSociety 5.0
第5期科学技術基本計画(平成28年1月)において、日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
高齢者が安全で快適に移動できるように、最先端の情報通信技術を用いて運転者に交通状況や信号を投下に関する情報を提供することで、注意を促してゆとりを持った運転ができる環境を作り出す安全運転支援システムや、信号情報活用運転支援システム、またはETC2.0の高度道路交通システムに関する研究開発展開を実施しました。
高齢者事故対策や移動支援の課題の解決に期待されている自動運転車に関して、国土交通省自動運転戦略本部を立ち上げました。
高齢者事故対策を目的とする自動運転技術の開発や普及促進策、また「道の駅」等を拠点とした自動運転サービスの実験に向けた検討を実施しました。
高齢者向けの無人自動運転移動サービスの実現に向けて、さまざまな地域で研究開発が行われています。
それと同時に必要な関係法規の見直しを含む制度整備も検討しました。
さらに介護ロボットについては、自立支援による高齢者の生活の質の維持向上と介護者の負担軽減を実現するために、現場のニーズを汲み取った開発を促進しています。
平成29年10月には重点的に開発の支援を行う分野を広げました
日本の知見の国際社会への展開
内閣官房健康医療戦略室長を議長として、関係府省庁担当局長を構成員とするアジア健康構想推進会議において、アジア健康構想の下での医療介護分野における人材還流を促進するために、国内外の日本語学校の民間認証制度を構築することとなりました。
また、介護職種に関する技能実習生については、介護現場でのコミュニケーション能力の測定に重点を置いた、新たな日本語テストに求められる基準の検討体制を構築することにしました。
また、医薬品の、新興国への展開に関する取り組みを、関係府省庁が連携して推進するために、平成29年12月に健康医療戦略推進本部の下に国際薬パートナーシップ推進会議を設置しました。
また、具体的な事業を推進するための協力体制や、具体的な初期の取り組みについての検討に着手しました。
さらに、アジア健康構想を推進するための連携プラットフォームである、第2回国際アジア健康構想協議会を平成30年3月7日に開催しました。
その際にアジアに紹介するべき、日本的介護の整理について意見交換を実施しました。
また、日本はG7などの国際的議論の場で、全ての人が生涯を通じて必要な時に基礎的な保健サービスを負担可能な費用で受けられることを示す、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)推進を積極的に主張してきました。
UHCにおける基礎的な保健サービスには、母子保健や感染症対策、または高齢者の地域包括ケアや介護などの全てのサービスが含まれています。
これまで開発途上国では、高齢化対策や社会保障制度整備の支援、また専門家の派遣、さらに研修の取り組みを通じて日本の高齢化対策に関する経験の共有をはかってきました。
全ての世代の活躍推進
少子高齢化に歯止めをかけて、女性も男性もお年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で職場で地域であらゆる場で、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けて、日本一億総活躍プランに基づく取り組みを推進しました。
特に働き方については、個人の意思や能力に応じた多様で、柔軟な働き方を選択できるように働き方改革実行計画を推進しました。
また、人生100年時代に高齢者から若者まですべての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会や安心して暮らせる社会を作るために、新しい経済政策パッケージを策定しました。
それと同時に、人生100年時代構想会議においては平成29年12月に中間報告をまとめました。
さらに、少子化社会対策大綱、第4次男女共同参画基本計画に基づく取り組みを推進しました。
海外や国内の先進的な事例
これ以降は、海外や国内の先進的な事例を紹介していきます。
話題となっている事例
オランダのソーシャルバイクチーム
- オランダの高齢化率は2000年には13%でしたが、2017年には18%へと上昇しています。
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高齢化率は日本に比べるとまだ低いですが、高齢者の独り暮らし率は40%にものぼります。
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またパートナーと同居している人が60%で、家族と同居している人は2%以下です。
- この状況に対応するために、高齢者の充実した生活を支えるためのさまざまな改革が行われています。
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その際の基本的な考えとしては、本人のネットワークの重視と幅広い住人の社会参加や社会貢献です。
- 改革を通して多くの責任が自治体に移行しているので、自治体では創意工夫が行われています。
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例えば人口12万人のライデン市では、市民から相談された場合、すぐ対応するために社会近隣チームソーシャルバイクチームを編成しました。
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その方法は私が予算を出して経験豊かなソーシャルワーカーに全体のチームリーダー役を任せて、リーダーが市内の介護福祉組織から専門家を集めてチームを作るというものです。
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- 多くの市町村では、ソーシャルバイクチームを作りました。
- 一つのチームは10人で形成されていて、ライデン市内には8つのチームがあって、それぞれの地域を担当しています。実際の活動の概要については、以下の通りです。
- 問題を抱えている市民はまずソーシャルバイクチームに連絡します。
- ソーシャルバイクチームは、まずクライアントの自宅訪問をして話し合いをします。
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そこで本人は何ができるのかを最初に話し合って、その次に家族は何ができるのか、また近所や地域は何ができるのか、さらにボランティア組織が何を出来るのかを話し合ってきます。
- それでも無理な時には、同じようなニーズがある人を集めてグループにして、解決することもあります。
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全てのアイデアを試してみて、それでも無理なぐらいにケアの必要度が高い時に、初めてプロのケアを用意します。
- オランダでは参加型社会に向けて、社会サービス法とソーシャルバイクチームを一つの中心とした、大きな改革が進行しています。
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進行中なので、その評価はまだ十分に多く集まっていませんが、以下のような報告があります。
- ソーシャルバイクチームの設置率は全体で87%、大都市では96%。
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多くの自治体で、その目的はより重大な問題の発生の予防や、複合的な問題への包括的な対応、または市民の自立の助長などが挙げられています。
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予防と総合的なアプローチおよび自立支援のためのチームと認識されています。
- オランダの改革は日本の今後の方向性にとっても示唆を得ることができるものです。
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地域包括ケアについては、自助・共助・互助をつなぎ合わせて体系化する取り組みが必要だとされています。
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オランダのソーシャルバイクチームは、これらの意味から大変注目すべきものです。
出典
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/pdf/1s2s_06.pdf
ドイツの多世代の家の取り組み
- ドイツ政府が国をあげて注力している多世代の家の目的は、地域の中では世代間の交流を促せば必ずしも住居でなくても良いということです。
- 現在、ドイツ全土で540カ所あって、その多くは福祉活動の担い手として長い歴史を持つ教会組織からなる民間福祉団体又はその他のNPO団体などを母体とするものです。
- ドイツでは要介護高齢者と認知症高齢者やその家族に対する支援サービスの需要が高まってきました。
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その様な中で従来から達成大交流の場として民間団体で運営されていた達世代の家が介護保険で対応できない範囲の補完として、認知症患者の為の支援サービスや家族のための相談を持続的に行う施設として強化していくことが国策として位置付けられています。
- ベルリンのシュレック通り44番の建物には11の個室住居と共用スペースなどがあって、一階にバリアフリー関連施設の展示場があります。
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個室住宅の内3箇所がバリアフリーとなっていて、高齢者や障害者でも安心して暮らせる設備が備わっています。
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またここには1歳半から88歳までの、幅広い年代の住人が住んでいます。
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普段から子供が他の入居者の所に遊びに行ったりする交流が生まれているので、多世代の住人が交流し、お互いに助け合っています。
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例えば、ちょっとした買い物を高齢の住人が他の入居者の子供に頼んだり、昼ごはんを共に食べたりしています。
- ハウス・デア・ファミリアは、元々プロテスタント系トマス教会の施設でした、しかし2007年から多世代の家に参加して以来、多くの人が交流する場所として、教室やカフェとしての役割や相談やイベント、また祭りなどを行っています。
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教室として行われる内容は、大人の料理教室からヨガ、または子供の工作教室などで、多くの種類の教室を開催しています。
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有償の講師や無償のボランティアの両方が講師となっています。
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また教室の参加は住民以外でも可能で、賑やかで温かい雰囲気です。
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面白いものを提供するというコンセプトに基づいて街に出たり、お祭りをしたり、他のボランティアとの出会いの場も創出しています。
- 多世代の家は、それぞれの世代が支え合って生活するという、理想的な姿の一つと言えます。
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ドイツと同様に日本も、少子高齢化が進んで要介護者や認知症高齢者の増加や、介護需要の増大に伴う介護従事者の確保の課題に直面しています。
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日本においても、このような施設が各地域で活動している事例は時々報道されていて、話題になっています。
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今後は各地域の特色や環境も配慮しつつ、ドイツの多世代の家のような家づくりを考えて、官民一体となって取り組むことも有益でしょう。
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の実現へ
- 政府では、高齢者世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応しています。
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例えば、民間賃貸住宅や空き家を活用した賃貸住宅であっても、住宅確保要配慮者の入居を拒まないものの登録制度を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を平成29年度に創設しました。
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これにより住宅の改修や入居者負担の軽減への支援を行っています。
- 京都市では、この制度の創設に先駆けて、高齢であることを理由に入居を断らない民間賃貸住宅の登録を行うとともに、社会福祉法人による見守りのサービスを提供してきています
- 平成22年3月に、京都市では少子高齢化や人口減少、社会の到来に備えた社会情勢の変化を踏まえて、京都市住宅マスタープランを策定しました。
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この住宅マスタープランにおいて、住宅確保要配慮者の居住の安定を確保するための受け皿として、民間賃貸住宅を活用することにしています。
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特に高齢者に関しては、可能な限り住み慣れた地域で住み続けられるように、施策を展開していくことが示されることで、京都市の住居支援の取り組みがスタートしました。
- その後、不動産屋、福祉の関係団体との連携を深めた、居住支援協議会の設置準備を進めていくという方針が決定されました。
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そして、平成24年9月には京都市居住支援協議会が設立されることになりました
- 現在、協議会では不動産関係団体四つの団体と福祉関係団体三つの団体、さらに、京都市(住宅部局と福祉部局)、京都市住宅供給公社で組織されて、京都市からの負担金と協議会ホームページのバナー広告料を収入として運営されています。
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住宅と福祉の両方から、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる住まいの確保に向けて取り組みを推進しています。
- 今後はすこやか賃貸住宅及びすこやか賃貸住宅協力店については、登録件数を増やしていきます。
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また、高齢者住まい生活支援事業では、京都市内全域での授業実施を目指して、さらなる対象地域の拡大を図っていきます。
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そのために不動産仲介事業者や社会福祉法人への働きかけや、協議会の事業に対する市民の認知度を高める取り組みを行います。
- 特に「高齢者すまい・生活支援事業」は、高齢者の住まいの確保だけでなく、住み替え後の生活に密接に関わるものであるため、相談者や利用者からの声、サービスを提供する社会福祉法人からの声を生かし、高齢者に寄り添った事業に発展させていく必要がある。
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家主にとって高齢者の入居にあたり不安低減につながるサービス、高齢者にとって入居後の見守り等の生活を支援するサービス、これらのサービスの充実を図っていくことが、住宅と福祉の連携の強化につながり、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会に近づくものと考えている。
シニアの起業支援に関する兵庫県の取組
- 1995年に発生した阪神淡路大震災による甚大な災害からの復旧や復興活動の過程において、兵庫県では県民や市民団体による相互扶助活動が活発化しています。
- 1998年に制定された特定非営利活動促進法の影響もあって、県内におけるNPO法人による活動が増えました。
- 無償活動を前提とすることが一般的だったボランティアもヒエリを条件とした優勝の活動へと拡大していきました
- このような背景からコミュニティービジネスを震災後のコミュニティー再生をに活用する試みが低減されました。
- 1999年に阪神淡路大震災復興基金を財源として、コミュニティビジネスの立ち上げ経費に助成する、被災地コミュニティービジネス離陸応援事業が創設されました。
- その後に2001年にコミュニティービジネス離陸応援事業として、助成対象地域を被災地から兵庫県全体に拡大しました。
- 2012年からは高齢者の柔軟な就労形態の拡大を支援するために、55歳以上の構成による高齢者はコミュニティービジネス離陸応援事業を実施しています
- 高齢者コミュニティビジネス離陸応援事業では、その立ち上げ費用として認められる、事務所開設費、また初度備品費等、さらに人件費を対象に、経費の2分の一以内を兵庫県から補助しています。
- 具体例としては、6時にある明治時代の長屋を地域住民と一緒に回収して食堂をオープンしました。
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ここで現在も地元の高齢者3人が就労しています。
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地域の単身世帯の見守り活動を兼ねた高齢者への食事提供も行っていて、定休日以外の毎日利用している高齢者が4人、また不定期を含めると20人くらいの高齢者が利用しています。
- 毎年春と秋には、食堂付近で「レトロなまち歩き」のイベントも開催されています。
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このイベントでは洲本市内外の飲食店や、手作り品の店舗など約100件が2日間の期間限定で出店しています。
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第12回目となった2017年秋の来場者は、雨天にも関わらず12000人にも上り、地域の活性化に大いに繋がっていると言えます。
- 兵庫県では、阪神淡路大震災の後の失われたコミュニティーの再生を図るために、県民によるコミュニティビジネスを促進してきました。
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ボランティアではなく、労働の対価を得ながら、地域の課題解決に取り組む働きは、特に高齢者や女性に新しい働き方としての可能性を広げました。
- 少子高齢化が進む中、高齢者がその多様な経験や能力を生かして、地域社会で起業したり、働くことは今まで以上に重要となってきています。
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兵庫県では引き続き、高齢者コミュニティビジネス離陸応援事業を始め、高齢者の多様な就労機会創出に対し支援していきます。
支え合いの地域づくりに向けた高知県の取組
高知県では、小規模ですが、高齢者や障害者、また子供などが気軽に集まることができ、必要なサービスを受けられる、高知県独自の地域福祉の拠点の整備に取り組んでいます。
この拠点は、あったかふれあいセンターとも呼ばれています。
具体的に、佐川町斗賀野地区の事例を紹介していきます。
- 佐川町斗賀野地区にある「あったかふれあいセンターとかの」では、子供から高齢者までが幅広く集まることができる「集い」の機能だけではなく、希望者には無料で自宅までの送迎や必要に応じた、買い物や通院の手助けを行っています。
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合わせて生活支援としては布団出しやゴミ出し、または電球の取り替えといったちょっとした困りごとなどへの支援、さらには窓拭きといった時間がかかる作業についても基本料500円で提供しています。
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その上、地域の住民の声を取り入れて、保健師によるミニ講座やクラフトバック教室、または防災に対する意識を高める防災講座が開催されるなど、学びの場ともなっています。
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これらの講座の講師は、地域の住民がボランティアとして協力しています。
- 利用者は高齢者が多いこともあり、介護予防に取り組んでいます。
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全国的にも注目されている高知県が発祥の「いきいき100歳体操」やエクササイズの感覚で楽しみながら体を動かす「ボールベルベンダー体操」などを実施しています。
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また認知症カフェの開催や、認知症予防ゲームの実施を通じて、認知症への関心を高めています。
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このような集いの場に、誰もが移動の問題を気にせずに参加できるようにするためには、希望者に集いの場への送迎を「あったか号」によって行われています。
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さらには訪問活動や相談への対応などで把握した困り事を、関係機関へつなぐ機能も担っていることから、介護保険制度の枠外の多様なニーズに対応しているといえます。
- 「あったかふれあいセンターとかの」においては、地域住民が主役となり、地域の課題解決を行い、共に支え合いながら安心して暮らせる地域づくりに取り組んでいます。
- 地域住民が自分のこととしてボランティア活動に参加して、お互いさま意識に気付いて人と人が世代や分野を超えて繋がることで、地域と共に暮らしています。
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これらの地域づくりは、あったかふれあいセンターを地域福祉の拠点として、今後はより重要になっていくだろうと予想されています。
先進技術の導入に向けた北九州市の取組
- 北九州市はものづくりの都市として発展してきたことや、ロボットや情報通信技術などの高い技術力を持っている企業や学術機関も集中しています。
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そのことを活かして介護ロボットを活用した成功モデルである先進的介護の創造を目指して全国に向けて発信しています。
- 北九州市の取り組みは大きく、実証・開発・導入・社会実装の四つの側面で構成されています。
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今までほぼ人の手によって行われていた介護現場での作業を、職員が1日の中でどんな作業にどの位の時間をかけて、またどのような姿勢が体の負担になっているのかを見える化して、科学的に分析することから始めます。
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次にこの分析結果や、施設職員との意見交換を踏まえて、ロボットの導入や実証を行います。
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そこから導き出されたニーズを、介護ロボットの開発や改良に繋げていきます。
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開発改良された介護ロボットを、実際の介護施設に導入していきます。
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その際に使いこなすためのノウハウの提供や、人材育成も行っていきます。
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さらには科学的に定量的な評価を行なって、効果が見えるものとした人材育成も行っていきます。
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このようなサイクルを繰り返していくことで、先進的介護を実現していくというものです。
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平成28年度から国家戦略特区を活用して、市内の企業や大学または実証施設と連携して、介護ロボットを活用した先進的介護の実証に取り組んできました。
- 平成28年度に実証施設の介護職員へのアンケートを行ったところ、職員は介護ロボットの活用によって、体の負担が減ったという回答が半分以上ありました。
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その一方でマイナス面としては、ロボットを使用するための準備や、操作に時間が必要であるということ、また操作ミスへの不安から精神的な負担は増えてしまったという回答もありました。
- また、入居者に関しては自ら歩きたいと思うようになったという積極的な行動や意欲が増加した回答もありました。
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その一方でマイナス面としては抱えられることで表情や手足の緊張が増えてしまったという精神的負担の増加に関する回答もありました。
- これまでの北九州市の取り組みから見えてきた問題や課題としては、以下の7点が挙げられます。
- 介護ロボットを導入する際は、介護職員や介護を受ける人の体の負担だけではなく、精神的負担を取り除く必要がある。
- 介護を受ける人の状態に適した介護ロボットを適切に活用する必要がある。
- 介護ロボットを使いこなせる人材が必要である
- そのための人材育成も必要である、
- さらに介護ロボットを効率的に使うための環境整備が必要である
- 複数の介護ロボットの組み合わせも考える必要がある。
- 費用対効果の面から価格を考慮することが重要。
- このような課題について、解決の方法を考えながら、北九州市は先進的介護の実現に向けた取り組みを引き続き精力的に取り組んでいく考えです。
ここまでの説明が、高齢化社会対策に関してでした。
高齢化社会と少子化対策はセットで理解しておくことにより、さらに社会経済についての理解を深めることができますので、こちらの記事がおすすめです。
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