【生命保険料控除とは】旧制度と新制度の計算式の違い【申告方法】

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生命保険料控除について知りたいですか?

生命保険料を支払えば、

  • 所得税や
  • 住民税

の計算において、所得から控除することができます。

生命保険料控除の

  • 旧制度
  • 新制度

の計算式の違いを踏まえ、還付される金額の具体例をご紹介。

生命保険料控除の申告方法を知りたい人は必見です。

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生命保険料控除

生命保険料控除制度はどんな制度なのでしょうか?

生命保険料控除について解説します。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とはどのようなものか説明します。

生命保険料控除は所得控除の一つ

生命保険料控除は、年間で支払った生命保険料に応じて、一定金額が契約者のその年の所得から差し引かれる(控除される)という制度です。

所得から控除されることにより、課税対象額を減額できます。したがって、負担する所得税や住民税がある場合は、税負担金額を軽減することができます。このことを、税軽減対策になるともいいます。

よく勘違いしがちなのが、控除される金額は支払った年額保険料すべて、というわけではないという点です。例えば年払いの生命保険料が12万円だったとして、所得から12万円差し引くことができるわけではありません。それと同時に、軽くなる税金の支払額も、生命保険料控除額とは異なりますのでご注意ください。

税軽減対策の結果、低くなる税金 = 生命保険料控除額 × 所得に応じた税率(所得税・住民税をあわせて15~50%)

生命保険料控除の種類

生命保険料控除の種類について説明します。

生命保険料控除は、

の2つに分かれる旧制度と、

  • 「一般生命保険料控除」
  • 「介護医療保険料控除」
  • 「個人年金保険料控除」

の3つに分かれる新制度の、合計5種類があります。

旧制度

旧制度は契約日が2011年(平成23年)12月31日までのものです。

一方で、新制度は契約日が2012年(平成24年)1月1日以降のものです。

支払った保険料が、旧制度新制度のどちらの保険契約に該当するのかを確認する方法として、契約している保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書を見ればどちらなのかがわかります。

また注意点としては、保険期間が5年未満の生命保険等の中には、控除の対象とならないものもあります。

新制度

新制度の3つの生命保険料控除に関するポイントは以下の通りです。

  • 一般生命保険料
    • 死亡または生存に起因する保険に支払う保険料。
      • 例えば死亡保険、収入保障保険などが対象になる保険です。
  • 介護医療保険料
    • 新制度によって追加されました。
    • 入院・通院・手術などの保険に支払う保険料。
  • 個人年金保険料
    • 個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険に支払う保険料。個人年金保険が対象になる保険です。
    • なお、個人年金保険料控除の対象となるためには、以下に挙げる3つの条件を満たす必要があります。
      • 年金を受け取る人は、保険料もしくは保険料を支払う人、またはその配偶者となっている契約であること。
      • 保険料は、年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたり、定期的に支払う契約であること。
      • 年金の支払は、原則として年金の受取人の年齢が満60歳になってから支払うとされている、10年以上の定期または終身の年金であること。
        • なお、被保険者が重度の障害を負ってしまったことが原因で、年金の支払いを開始する場合は、10年以上の定期年金、または終身年金であるものも対象となります。

出典

No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等|国税庁

 

生命保険料控除の旧制度と新制度の違い

生命保険料控除の旧制度新制度の違いについて説明します。

生命保険料控除について考えるときに、二つの控除制度を混同しやすいです。

そこで、各控除制度を比較した上で、それぞれの違いを理解できるようにしましょう。

旧制度と新制度は何が違うのか?

旧制度新制度は何が違うのか?」という疑問に対して説明します。

旧制度新制度は、生命保険料控除額の計算方法が違います。

旧制度の生命保険料控除は、2010年度(平成22年度)に改正され新制度へと移行しました。

改正前の旧制度での生命保険契約は、それ以前と同様の計算を行います。しかし、2012年(平成24年)1月1日以降に、新規契約を行った生命保険は新制度の計算を行います。

次の章では、改正前改正後の生命保険料控除制度の計算がどのように違うのかについて、所得税と住民税ごとに、旧制度新制度を比較していきます。

生命保険料控除における控除額は、所得税と住民税とで異なります。

所得税では2012年以降に契約した

  • 一般の生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料

の控除最高額はそれぞれ4万円です。

しかし、住民税では2万8,000円です。

2011年以前に契約した

  • 一般生命保険料と
  • 個人年金保険料

の控除最高額はそれぞれ5万円です。

しかし、住民税では3万5,000円です。

所得税と住民税の生命保険料控除について、詳しく見ていきましょう

所得税の生命保険料控除額

所得税の生命保険料控除額について説明します。

所得税と住民税の生命保険料控除額に関し、旧制度新制度の比較表を以下に示します。

まずは旧制度からです。

旧制度(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

旧制度に基づく

  • 旧生命保険料と
  • 旧個人年金保険料

の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。

年間の支払保険料等

控除額

25,000円以下

支払保険料等の全額

25,000円超 50,000円以下

支払保険料等×1/2+12,500円

50,000円超 100,000円以下

支払保険料等×1/4+25,000円

100,000円超

一律50,000円

 

出典

No.1140 生命保険料控除|国税庁

 

新制度(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

新制度に基づく

  • 新生命保険料、
  • 介護医療保険料、
  • 新個人年金保険料

の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。

年間の支払保険料等

控除額

20,000円以下

支払保険料等の全額

20,000円超 40,000円以下

支払保険料等×1/2+10,000円

40,000円超 80,000円以下

支払保険料等×1/4+20,000円

80,000円超

一律40,000円

出典

No.1140 生命保険料控除|国税庁

前述の通り、2011年(平成23年)12月31日以前の契約については、従来の規定として旧制度の計算式がそのまま適用されます。

旧制度の場合は、

  • 一般生命保険料と
  • 個人年金保険料

の2つの生命保険料控除しかありません。そのため、適用限度額はそれぞれ5万円で、合計適用限度額は10万円です。

一方で、新制度の場合は、

  • 一般生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料

の控除の適用限度額は各4万円で、合計適用限度額は12万円となります。

住民税の生命保険料控除額

住民税の生命保険料控除額について、旧制度新制度を比較した上で説明します。

まずは旧制度から確認し、次に新制度を見ていきましょう。

旧制度

住民税に関する旧制度の控除額は以下の通りです。(一般・個人年金それぞれに適用)

年間保険料

控除額

15,000円以下

支払保険料等と同額

15,000円超、

40,000円以下

支払保険料等÷2

+7,500円

40,000円超、

70,000円以下

支払保険料等÷4

+17,500円

70,000円超

一律35,000円

  • 一般生命保険・個人年金は合計70,000円が限度

新制度

住民税に関する新制度の控除額は以下の通りです。(一般・介護医療・個人年金それぞれに適用)

年間保険料

控除額

12,000円以下

支払保険料等と同額

12,000円超、

32,000円以下

支払保険料等÷2

+6,000円

32,000円超、

56,000円以下

支払保険料等÷4

+14,000円

56,000円超

一律28,000円

  • 一般生命保険・介護医療・個人年金は合計70,000円が限度

2011年(平成23年)12月31日以前の契約については、従来の規定として旧制度がそのまま適用されます。

  • 旧制度の場合は、
    •  一般生命保険料と個人年金保険料の2つです。
    • 控除の適用限度額はそれぞれ3万5千円。
    • 合計の適用限度額は7万円です。
  • 新制度の場合は、
    • 新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の3つです。 
    • 控除の適用限度額はそれぞれ2万8千円です。
    • 合計の適用限度額は7万円となります。

還付される金額

前述の通り、生命保険料控除額として適用された金額が返額されるわけではありません。

生命保険料控除の適用額に対して、所得に応じた税率をかけた額が最終的に還付されます。

したがって一般的に言って、高所得者の方が低所得者よりも、還付される金額は高くなります。つまり高所得者にとって生命保険料控除を活用することは、有効な税軽減対策になり得るということです。

具体的に、以下は所得金額に対する税率の表です。この表から、累進課税により、高所得者の方が税率が高くなることがわかります。しかし生命保険料控除によって課税所得が減少するので、低所得者よりも高所得者の方が、税軽減効果が高くなる傾向があります。

所得金額に対する所得税率

所得金額に対する所得税率は以下の通りです。

所得金額

税率

195万円以下

5%

195万円超、330万円以下

10%

330万円超、695万円以下

20%

695万円超、900万円以下

23%

900万円超、1800万円以下

33%

1800万円超、4000万円以下

40%

4000万円超

45%

還付される金額の具体例

以下の例で、実際の還付額を見てみましょう。

年収400万円の例(新制度の場合)

年収400万円の例(新制度の場合)を見ていきましょう。

年収

 

400万円

内、所得金額

 

300万円

年間で支払った保険料

一般生命保険

3万円

 

介護医療保険

7万円

 

個人年金保険

9万円

控除適用額

次に、生命保険料控除控除適用額について見ていきましょう。

所得税控除額

一般生命保険

2万5,000円

(30,000円 ÷ 2 + 10,000円)

 

介護医療保険

3万7,500円

(70,000円 ÷ 4 + 20,000円)

 

個人年金保険

4万円

(年間支払い保険料が80,000円を超えたため)

所得税控除額計

 

10万2,500円

最終所得税控除額

 

10万2,500円

住民税控除額

一般生命保険

2万1,000円

(30,000円 ÷ 2 + 6,000円)

 

介護医療保険

2万8,000円

(年間支払い保険料が56,000円を超えたため)

 

個人年金保険

2万8,000円

(年間支払い保険料が56,000円を超えたため)

住民税控除額計

 

7万7,000円

最終住民税控除額

 

7万円

(合計適用限度額70,000円を超えたため)

上記の控除適用額(所得税控除、住民税控除、それぞれ)に、所得300万円の税率10%をかけることで、実際の還付額が算出されます。

実際の還付金

最後に、実際の還付金は以下の通りです。

所得税分の還付額

10,250円

(102,500円 × 10%)

住民税分の還付額

7,000円

(70,000円 × 10%)

生命保険の還付額計

17,250円

旧制度と新制度の両方の保険契約が混在する場合

旧制度新制度の両方の保険契約が混在する場合の生命保険料控除について説明します。

旧制度新制度の両方の保険契約がある場合、

  • 一般生命保険料控除と
  • 個人年金保険料控除

については、控除ごとに以下の3つのいずれかを選ぶことができます。

  • 新契約だけで申告する
  • 旧契約だけで申告する
  • 旧契約新契約の両方で申告する

なお、旧契約新契約の両方で生命保険料控除を申告する場合は、両方の合計額が申告額です。また所得控除限度額は、

  • 所得税
    • 4万円
  • 住民税
    • 2万8千円

です。

そして、全体の所得控除限度額は

  • 所得税
    • 12万円
  • 住民税
    • 7万円

です。

 

生命保険料控除の申告方法

生命保険料控除の申告方法について説明します。

個人事業主などの事業所得がある人が生命保険料控除を適用させるには、保険会社が発行する

  • 生命保険料控除証明書や
  • 保険料の領収書

などに基づいて確定申告を行います。

サラリーマン等の給与所得者は、年末調整のときに勤務先から生命保険料控除証明書の提出を求められます。 年末調整の時に会社側に申告してもらうことによって確定申告をする必要ありません。しかし、年末調整で申告し忘れてしまった場合は、個人で税務署に行く等して直接的に確定申告を行うことも可能です。

年末調整とは

年末調整とは何かについて説明します。

年末調整とは、

  • 1年間を通して従業員から徴収した源泉所得税の合計金額と、
  • 従業員に支払った給与と賞与等を合計した金額に対する税金

を比較して、過不足があれば調整する手続きのことです。

年末調整は、毎年年末になると従業員を雇用する企業側が手続きを行います。言い換えると、事業主は従業員に代わって、最後の給与を支払うときに税金に関する年末調整を行う必要があるということです。

ここでいう税金と言うのは、例えば、

  • 生命保険料控除、
  • 配偶者特別控除

などは、月々の源泉徴収の段階では処理されてはいません。そのため、年末調整で控除する必要があります。

生命保険料控除が適用されるためには

生命保険料控除が適用されるためには、会社から年末に配布される「給与所得者の保険料控除等申請書」に記入する必要があります。

大体毎年10月頃になると、各従業員が個人的に契約している生命保険会社から郵送されてきた「生命保険料控除証明書」を勤務先に提出する必要があります。もし生命保険料控除証明書を紛失してしまったなどの理由により、年末調整の提出期限までに勤務先に提出できなかったとしても、確定申告することで生命保険料控除を適用させることができます。しかし確定申告をしそびれてしまった時は注意が必要です。というのも、ついつい先延ばしにしてしまった場合、5年までは遡って申告することができますが、それ以上経過してしまった分は申告できないからです。そのため、申告できなくなることを避けるため、できる限り早めに確定申告するように心がけましょう。

関連ページ:年末調整 保険料控除申告書の書き方と記入例

生命保険料控除証明書を紛失した場合の対処法

生命保険料控除証明書を紛失した場合の対処法について説明します。

生命保険料控除証明書は、毎年10月頃になると保険会社から契約者の自宅に送付されてきます。

生命保険料控除が適用されるためには、生命保険料控除証明書が必要ですが、もし紛失してしまったとしても再発行することが可能です。

契約している生命保険会社のカスタマーセンターなどに電話すれば、だいたい一週間前後で新しい生命保険料控除証明書が郵送で届くはずです。

保険料控除証明書再発行の問い合わせ先はこちら

給与所得者でも確定申告が必要な人

なお、たとえサラリーマン等の給与所得者であったとしても、確定申告が必要な人も存在します。それは、

  • 年収金額が2000万円を超えている人や
  • 2か所以上から給与の支払いがある人

です。

上記の条件に当てはまる人は年末調整ではなく、確定申告を行う必要がありますのでご注意ください。

自営業者は生命保険料控除額を確定申告する必要がある

生命保険料控除における、確定申告について説明します。

自営業者の場合、年末調整がないので、生命保険料控除が適用されるためには確定申告をする必要があります。そのため自営業者は、確定申告を2月16日から3月15日までの期間に行います。生命保険料控除額を確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の「生命保険料控除」の欄に記入します。

 

まとめ

  • 生命保険料控除額の種類は複数あり、計算方法が異なるので注意する必要がある。
  • 高所得者にとって生命保険料控除を活用することは、有効な税軽減対策になり得る。
  • 生命保険料控除を適用されるためには、
    • 給与所得者
      • 年末調整の時に生命保険料控除額証明書を勤務先に提出する。
    • 自営業者(個人事業主)
      • 確定申告を行う時に生命保険料控除額を申告する。(生命保険料控除証明書を提出する。)

 

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