ベストセラー本「科学的な適職」にでてくる、仕事の幸福度を決める「7つの徳目」の要約を紹介します。
この7つの項目に合致しているかどうかを判断することによって、今の自分の仕事や転職先候補が、幸福につながりうるのかを判断することができます。もし7項目がすべて満たした仕事であれば、たとえどれだけ周囲の評価が、その仕事に対して低評価だったとしても、自分自身にとって満足した仕事になりうるし、幸福感につなげることができるでしょう。そのため、就職先や今後の転職先の仕事探しの際にはきっと役立つはずです。
今回は適職を探すための科学的な良い方法です。それとは反対の悪い方法については、前回の記事「①【要約】科学的な適職の探し方【ダメな例→好きなこと/給料/適正/職種】」をご覧ください。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【自由か】
まず一つ目の仕事の幸福度を左右するポイントは、その仕事の自由度です。
自由度といっても漠然としていますので、具体的に言うと裁量権があるかどうかです。
例えば、休憩をとる際にも、上司の許可を得て休憩を取らなければいけなかったり、仕事の作業に取り掛かる際に、どの作業から取り掛かるべきかを自分で決めることができなかったりすると、その仕事は自由度が低いということになります。言い換えると、裁量権がある仕事に就くことによって、人は満足感を得て幸せになることができます。
例えば、あなたが日々のウォーキングの日課をプライベートで行おうとしている際に、どこをウォーキングするのかは自由に決められますよね?
しかし、もしあなたのウォーキングコースを上司から指示されて何時から何分までに終えなければいけない、その間に何キロカロリー消費する必要がある、などと細かく指導された場合、あなたのウォーキングは、楽しいものから自由度の低い、つまらないものへと変わってしまいます。要するに、自分で自分の仕事を他人にコントロールされることなく行うことができるかは、仕事の幸福度に直結するものなのです。だから自由度がある仕事を選ぶことにより、仕事の満足度を上げることが可能です。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【達成感を得られるか】
二つ目の仕事の幸福度を左右するポイントは、その人が仕事から達成感を得られるかどうかです。
達成感は小さなものでえられるかどうかによって、その人のパフォーマンスや、やりがいを得られるかが大きく左右されます。ハーバード大学が行った研究によると、人間のモチベーションを最も高まるのは少しでも仕事が前に進んだ時だといいます。もちろん、仕事のやる気を左右する項目は多数ありますが、その中で最も自分のやる気に影響及ぼすのは、自分が今やっている作業が、前進しているかどうかという感覚によって得られるとのことです。
例えば営業職の人であればお客さんに対して電話営業を行う際に何度も断られることがあると思います。そのような時に、今断られたことによって非見込み客を明確にすることができたから、一歩前進することができたと捉えることができるかは重要です。またもしかするとそのようにモチベーションを保つことができるのは、その人の上司次第かもしれません。というのも、そのマネージャーがその部下の努力を褒めることによって、部下が達成感が得られるかどうかはある程度決まってしまうからです。したがって達成感が得られる仕事なのかどうかは、その職場の上司によって左右されるとも言えるでしょう。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【自分のタイプに合ってるか(防御型・攻撃型)】
3つ目の仕事の幸福度を左右するポイントは、自分のタイプに合ってるかどうかです。そのタイプは二種類に分かれており、防御型・攻撃型です。
前回の記事「①【要約】科学的な適職の探し方【ダメな例→好きなこと/給料/適正/職種】」では、自分の適職探しに適性テスト、特に性格テストは役に立たないと紹介してきました。しかしその中でも唯一役に立つテストがあります。それは制御焦点というれるテストです。すべての人の個性は攻撃型と防御型の二つに分類することができ、それによって適職を判断する材料になり得るということです。
攻撃型というのは、「目標を達成することによって得られる利益」に焦点を当てて、仕事をするタイプの人達です。
このタイプの人は競争に勝つのが好きで、お金や社会的な名誉などの外からくる報酬に対して大きな影響を受ける人たちです。このタイプの人たちは大きな目標や夢を持っていて、業務効率化には目がありません。また基本的にはポジティブですが、物事を突き詰めて考えないので、準備不足が目立ちます。そこがこの人たちのデメリットです。もし失敗してしまうと、すぐに気分が落ち込んでしまうという傾向もあります。
もう一つタイプは防御型と言われるタイプの人たちです。
防御型の人達は、目標を責任の一つとして捉えます。その結果、競争に負けないように働くのが特徴です。自分の義務を果たすことが最終ゴールなので、できるだけ問題を起こさないような安全な場所を確保しようとします。
失敗を回避しようという傾向が強いので、仕事っぷりは正確で、なおかつ注意深いです。さらにゆっくりとコツコツ作業を進めていく傾向があります。防御型の人達は、最悪の事態を想定した上で仕事をする傾向が強いので、時間や精神的な余裕がない場面ではストレスが増えます。その結果、分析や問題解決する能力が高いという特徴もあります。
多くの人は攻撃型か防御型のどちらかの焦点を強く持っています。その結果、仕事に対するやる気が異なるという特徴を持ちます。このモチベーションに関する研究は多数行われています。例えば、2012年には105個の研究をまとめた分析結果として、攻撃型と防御型の区別を用いることで、職場で幸福度や満足度が得られる傾向をある程度予測できるとのことです。つまり、自分に合った働き方をしたほうが仕事の満足度が高まるから、自分がどちらのタイプなのかを見分ける必要があります。 細かい見分け方については本書に記載されていますのでご参照ください
その分析結果をもとに、もし自分が攻撃型であると判断したならば、進歩や成長を実感しやすい仕事を探すべきであると言えるでしょう。一方で、自分が防御型のタイプであると判断した場合は、安心感と安定感を実感しやすい仕事を探すべきです。これらのタイプは後に変わるということがありません。したがって、タイプが分かれば自分に合った適職探しに大いに役立つはずです。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【ビジョン・価値観は明確か】
仕事の幸福度を左右するポイントの四つ目は、明確なビジョンや価値観があるかどうかです。
南フロリダ大学のメタ分析の結果によると、ある2つの特徴がみられる職場で働くと、体を壊す傾向が高まるということです。どのような職場かというと、
- 仕事で何を求められているかわからないような職場
- 上司からの指示が一貫していない職場
の2点です。このような環境で働く従業員は、寝ても覚めても疲れが取れず、頭が痛くなったり胃が痛くなったりする症状が出たということです。
自分が働いてる会社にビジョンがないような企業で働くと、従業員は何をするべきなのかという優先順位付けをすることができなくなってしまうため、幸福感を得ることができなくなってしまう可能性が高まります。ではこれとは反対の、良い例で説明すると Amazon創業者のジェフベゾスは、顧客第1主義を掲げていますが、会議を行う際は、
- 会議の前提と、
- 達成すべき目標
を掲げた上で会議を行っています。
また、
- 問題解決策に対する具体的なアプローチや
- 最も早急に作業に取り掛かることができる解決策
を事前にまとめた上で会議を行うという行動を行った結果、従業員のモチベーションが上がり従業員の働く満足度が高まったとのことです。
また、たとえ個人がどれだけ頑張っても、人事評価がどう決まるのかが明確になっていないと、モチベーションを維持することはできないでしょう。このような評価基準が明確になっている会社であるかどうかを、転職する前や就職する前にチェックする必要があるということです。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【日々の作業に多様性はあるか】
5つ目の従業員が幸福になるポイントは、毎日の業務に多様性があるかどうかです。
多様性に関してわかりやすく説明している格言があります。それは宝くじで1億円当てても1年で慣れてしまうという言葉です。
つまり、従業員に特定の業務だけは与えて、その業務だけをさせた場合、いつかは飽きてしまうということです。
その結果、幸福感を仕事から得ることが難しくなるので、毎日の仕事の中でどのぐらいの変化を感じられるかという点は、仕事からどれだけ幸福感を得られるかという点と密接な関係があるようです。言い換えると、自分のスキルや能力を活かせる仕事であるかどうかは、自分の仕事内容が多様性に富んでいるのかという点と関係があるということです。
テキサス工科大学が行った研究結果によると、自分のスキルや能力を様々な業務で活かせる職場で働く場合、仕事と満足度の相関関係が0.45であったとのことです。これは、前の章で紹介した、自由度がもたらす満足度の相関と同様であるということです。つまり、自分が自由に仕事ができるかどうかと、自分がやっている仕事内容が多様性に富んだものであるかという点は、同様に仕事の満足度に直結する要素であるため、転職や就職する前に事前に必ず確認する必要があるということです。
要するに、もし多様性のある仕事が与えられない場合は、仕事から得られる満足度が低くなっても仕方がないと言うことです。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【職場に仲間や友人はいるか】
仕事の幸福度を左右する6つ目のポイントは、同じ職場や組織に中に、仲の良い仲間や友人がいるかどうかという点です。
もし仕事をしている環境内にそのような友人が3人いたとしたら、なんと仕事のモチベーションは700%上がるようです。他の人が仕事を辞めてしまう理由は、その職場の人間関係が原因で辞めてしまうというのは多くの人は頷けるはずです。確かにパワハラ上司と一緒に毎日8時間も仕事し続けると、誰でも幸福度は下がるでしょう。
厚生労働省の統計によると、同僚と仕事やプライベートの会話で笑う事があるかという質問に「はい」と答えた日本人の数は30%だということです。が、会社の中で信頼できる上司はいるかという問いには87%の人が「いいえ」と答えたとのことです。このことから、多くの人は仕事から満足度や幸福度を得るためには、同僚や上司と仲良くなる必要がありますが、実際はそうではないということがわかります。
職場に3人以上の友達がいる場合は、人生の満足度が96%も上がり、同時に自分の給料の満足度は2倍になるということです。また職場に最高の友人(親友)がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になるし作業スピードも上がるようです。つまり自分の年収が低く、仕事内容がつまらないと感じていたとしても、職場の中で仲の良い友人がいるだけで、人生の幸福度が上がるということがいえます。
従って困った時に自分を助けてくれる同僚が今の職場にいるかどうかは、転職すべきかどうかという点で参考になりそうです。
また驚くべき研究結果があります。それは劣悪な人間関係のもとで仕事をしている人は、寿命まで短くなってしまうという報告です!とても嫌な上司の下で働いてる人は、良い上司の元で働く人に比べて、心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが6割も高くなってしまうようです。
また嫌いな同僚のせいで悪化してしまうストレスは、たとえ退職したとしても、健康的な水準に戻るまで22ヶ月間もかかってしまうようです。
さらに人間関係が悪い職場で働くと、従業員達は、
- 高血圧や
- 高コレステロール
- あるいは糖尿病
に悩んでしまう確率が2割も増えてしまうようです。
つまり人間関係が悪い職場で仕事をすると、健康にものすごいダメージ及ぼす可能性があります。言い換えると、長時間労働や福利厚生が整っていない職場で働くよりも、人間関係の良い職場で働いた方が健康悪化するとも言えるでしょう。つまりどれだけ給料が良くても、健康を害するような職場で働くべきではないから、人間関係も重要だということです。
【科学的な適職】仕事の幸福度を左右するポイント【世の人のために役立っているか】
仕事の幸福度を左右するポイントの7つ目は、自分の仕事は世の人のために役立っているかを実感できるかという点です。
言い換えると、社会に貢献できているかどうかを感じられるかどうかによって、仕事から得る満足度は左右されるということです。シカゴ大学の調査によると、満足度の高い仕事のトップ5は
- 聖職者
- 理学療法士
- 消防員
- 教育関係者
- 画家・彫刻家
という結果が出ています。
これらの職業は一見すると関連性が無いかのように思われますが、一つだけ共通点があります。それは、
- 他人を気遣って、
- 他人に対して新たな知見を与えることができ、
- 他人の生活を守っているという実感を得られる
仕事であるという点です。一言で言うと、社会貢献できているかどうかを、すぐに実感できる仕事内容だと思われます。
確かに、聖職者というのは教会の神父さんですが、多くの信者の方が悩みや悲しみについての話を聞いてくれて、神父さんがアドバイスするというのが仕事であるし、理学療法士の人も、患者さんの悩みや悲しみに寄り添う仕事だと言えます。
また消防員は困った人を助けるという点で、言わずもがなでしょう。さらに教育者と芸術家は、生徒や作品を見に来てくれた人に対し、新たな知見を与えるという点で満足感を得られやすいと言えるでしょう。
これとは反対に、社会貢献できていると感じられない職業のワースト3は、倉庫ピッキング、レジ打ち、工場での単純作業だったと言います。
倉庫内の作業員は、アマゾンが安い賃金で働かせているブラック業務だと話題になった職業なので、満足度を得られない理由は社会貢献できているという感情が湧かないからであると言えるでしょう。
人が社会に貢献できてると感じる場合、自尊心、親密感、自立性の三つの点において欲求が満たされるから、仕事から満足度が得られるようです。
これらの項目は欲求を満たすことで、人間が幸せを感じる物事であり、もし満たせなかったら、仕事の満足度も低下してしまうということです。
例えばボランティア活動をして、人の役に立ってるということを感じるだけで、人間は幸福になれるということです。したがって、「世の人々の役に立っている」という実感を得られる仕事なのかどうかという点が、仕事から満足度を得られる鍵になると言えるでしょう
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