単純接触効果をマーケティングに活かす方法と、マイナスに作用してしまう注意すべき場面について説明していきます。
「どこかで聞いたことのある商品なので、きっと安心だろう」
「テレビCMでよく目にする会社なので、この会社の商品は優れているはずだ」
このようにTV等で頻繁に目にする商品をつい買ってしまったり、頻繁に訪ねてくる営業員から商品を購入してしまう傾向が人間にはあります。
言い換えると、実際は効果や性能を詳しく比較していないにもかかわらず、頻繁に耳にしたり目にする商品には信頼を寄せ、買ってしまうのです。
この事は心理学の用語で、単純接触効果と呼ばれています。
どのような場面でこの効果が発揮されるのかを踏まえて、具体的に説明していきます。
単純接触効果とは?
単純接触効果というものは、1968年にアメリカの心理学者ロバートザイアンスによって論文「Zajonc」で発表されたものです。
ザイアンスの接触効果、またはザイアンスの法則とも呼ばれています。
この効果は端的に言えば、当初は興味がないものに対し、繰り返し見たり聞いたりすることによって、プラスの感情が発生するようになるという効果です。
具体的に言うと、毎日通勤途中ですれ違う人や、何度も聞く音楽を次第に好きになっていくというものです。
この現象は、繰り返し見聞きして脳に蓄積される潜在記憶が、印象に誤った情報を送るということで説明されています。
さらに、
- 潜在学習や、
- 既成概念
における認識も変わっているとされています。
例えば、
- 嗅覚
- 視覚
- 味覚
など、様々な面において発生します。
- テレビ CM や
- 新聞折込チラシ
などの広告の効果は、単純接触効果を期待しているものが大部分です。
営業員のルートセールスや既契約の再訪問
単純接触効果は、セールスの現場でも活用されています。
例えば、営業員があなたの自宅や職場などに、何度も訪問してきたとします。
当初あなたは、勧められる商品に対して全く興味がありませんでした。
しかし、熱心に何度も訪問してくれるので、「この人、悪い人じゃないな」などと営業員に愛着が湧いていき、次第に心が動いていきます。
そして最終的には、営業員を心の底から信頼してしまい、最終的にはその人が薦めてくる商品をつい購入してしまう。
このような顧客側の心の動きは、ルート営業や既契約者への再訪問時などでよく発生する心理状況です。
より具体的に言うと、ルート営業というのは、同じお客様ばかり何度も訪問を繰り返します。
その結果、どうせ買うのであればいつも会ってる人から買いたいと顧客から思われることを狙って、ルートセールスは営業を行なっています。
また、既契約者への追加の商品の提案をする場合は、過去の信頼があるので単純接触効果が働きます。
例えば、営業員や会社への親しみやすさや信頼感の高さから、お客様が商品を購入してくれる可能性がより高いと言えます。
その親しみやすさや信頼感を生んでいるのが、単純接触効果です。
言い換えると、営業側からしてみれば、「最小の努力で最大の効果を発揮する」という、ありがたい効果を活用するセールスの手法です。
しかし顧客側から見れば、必要な商品を無駄に購入することになるので、最小の説明や時間で、最大限のお金を失ってしまうことにつながりかねません。
そのため顧客側は、「今私が下した意思決定は、単純接触効果が働いていないだろうか?」という点を常に意識して、十分に警戒する必要があります。
バソコン販売や選挙のマーケティング
例えば、あなたが新しいデスクトップパソコンを購入しようと考えていたとします。
どこのメーカーのパソコンも性能差がない場合は、ついつい聞いたことのある会社のパソコンを買ってしまう傾向があります。
なぜならば、知名度が高い会社の商品の方が安心感を得られる、という根拠なき理由に突き動かされてしまうからです。
実際に購入してみたら無名の会社も有名な会社も、扱っている商品に大した差はないはずです。
例えば、知名度の高い会社はテレビコマーシャルを頻繁に流します。
その結果、お客さんはその該当する会社と頻繁に接触するので、どこかで聞いたことがある記憶を安心感と結びつけてつい購入してしまいます。
他の事例で言えば、例えば選挙が近くなると、選挙カーが家の近所を走り、立候補者の名前を何度も連呼する現場を誰でも聞いたことがあるでしょう。
立候補者名の連呼はまさに単純接触効果を期待しての行為であり、実際のところはどの政治家に投票するかは根拠が乏しい場合がほとんどです。
インターネット広告マーケティング
他にも単純接触効果の例を挙げるとインターネット広告がまさに良い例です。
インターネットの広告をクリックし、商品を購入する人はほとんどいないと言われています。
ではなぜインターネット広告がここまで流行しているのかといえば、単純接触効果を狙っているためです。
顧客はそのインターネット広告をクリックして購入するよりも、インターネット広告を通してその会社や商品と接触する頻度が増やすことが狙いの場合があります。
つまり、顧客がいざ必要性にかられたときには、該当の商品を購入してくれる可能性が上がるのです。
単純接触効果は、嫌いな人にはマイナスに作用する
単純接触効果は、接触頻度を増やしさえすれば、どんな人にでも好かれるようになるというわけではありません。
というのも、単純接触効果は必ずしも好きな方向に傾くわけではなく、最初から不快な感情を抱いている人に対しては、接触回数が増えることにより不快な感情がより悪化してしまう可能性もあるからです。
例えば元々嫌いな人に毎日顔を合わせることにより、嫌いな人のことをさらに大嫌いな人へとあなたの中で成長させてしまう可能性もあります。
よく考えたら当然のことかも知れませんが、もし単純接触効果が全てにおいてマイナスに作用しないのであれば、この世に離婚する夫婦などというものは存在しないはずです。
例えば夫婦関係において、些細なことがきっかけとなり夫婦の良好な関係が損なわれてしまった場合が当てはまります。
単純接触効果によりマイナスの感情が増幅され、最終的には離婚に至ってしまうケースは多く存在するはずです。
そのため、接触する回数を増やすのであれば、接触する相手をきちんと選ぶことは必要であると言えます。
友人を選ぶ、結婚相手を選ぶ、顧客を選ぶ、これらを選択する権利はあなた自身に委ねられています。
もしあなたが営業員であれば、相性の合わない顧客との接触を増やしてしまうことで、単純接触効果が働いて苦情につながったり、営業成績に結びつかない無益な時間を費やしてしまう可能性が上がります。
もし現在婚活中の人であれば、相性の合わない人にしつこくアタックすること自体無駄だと言えます。なぜなら、しつこくしすぎた場合は、単純接触効果によりマイナスの感情が増幅され、ストーカーとして通報される可能性すらあるからです。
つまり、初期の段階で相性が合わない人との関係において、単純接触効果を活用することは百害あって一利なしということができます。
そのため時間や労力を無駄にしないためには、どんな場面であれ、接触する相手は選び抜いた上で単純接触効果を狙うよう心がけましょう。
恋愛や職場の人間関係で、嫌いな人にはマイナスに作用してしまう具体例や対策について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
効果や性能を詳しく比較していないにもかかわらず、頻繁に耳にしたり目にする商品には信頼を寄せ、つい買ってしまう傾向を単純接触効果と言います。
営業員が何度も訪問してきたり、テレビコマーシャルでよく聞く商品は、ついつい買ってしまう傾向が人間にはあります。
またインターネット広告ではその広告をクリックして商品を購入しなくても何度もインターネット広告を目にすることにより親しみを覚えるので、必要性に駆られた時にはその商品を優先的に購入してしまいます。
注意するべきこととして、元々不快な感情を抱いている場合は、単純接触効果によりマイナスの感情は悪化する場合があるので、接触する相手は選んだ上で単純接触効果を狙うようにしましょう。
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