ベストセラー書籍「FIRE最強の早期リタイア術」の要約を紹介します!
著者が提唱する、早期リタイアのための4%ルールの意味や計算方法を踏まえ、株価の暴落に備えるための現金クッションと利回りシールドの考え方や計算法をご紹介!
先進国に定住するより、世界旅行でAirbnbを活用したり、物価の安い新興国を旅行先に組み込むことで老後費用を抑えられる点を学びたい方必見!
早期リタイアのための4%ルールとは
「FIRE最強の早期リタイア術」の著者クリスティー・シェンが提唱している、早期リタイアのための4%ルールとはどのようなものかを説明します。
4%ルールとは、「どのくらいの老後資金を貯めれば、早期リタイアしても大丈夫なのか?」という点を明確にするための法則を指します。その法則について、本文中の言葉を借りると以下の通りです。
1年間の生活費が投資ポートフォリオの4%と等しい金額であれば、リタイアしても95%の確率で30年以上にわたり老後資金が底をつかないという法則です。
クリスティー・シェン;ブライス・リャン.FIRE最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド(Kindleの位置No.1951-1952).ダイヤモンド社.Kindle版.
これだけではイマイチピンとこないと思うので具体的に説明していきます。
まず4%ルールとは、退職プランと経済理論を研究しているトリニティ大学による、以下の論文に基づいたものです。
出典:非営利団体 American Association of Individual Investors「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」
しかしこの論文は英語なので、どのような論文の内容かを説明します。
このトリニティ大学の論文の著者は、株式市場と債券市場の過去のデータを用いてシュミレーションを行いました。
これは、ある退職者が投資ポートフォリオから毎年一定割合の金額を引き出して、残った投資金額はすべてそのまま投資し続けた場合に、投資ポートフォリオはどう変化するのかを調査したというものです。
言い換えると、退職時の貯金の全額を投資にまわしつつ、「貯蓄だけで老後生活を送ることができた」人数と、そうではない「貯蓄が底をついた」人数を数えたという研究なのです。
具体例としては、例えば以下のような人の数を延々と計算していくという研究です。
A さんは6,000万円の貯金を持っていて毎年の生活費は400万円です。 A さんが退職した後に株式投資に6,000万円全てを投資した場合に、A さんの資金は死ぬまでにお金が底を尽きるでしょうか?それとも底を尽きないでしょうか?→YES or NO
この研究を行った結果、この論文の研究者たちは、95%もの成功率に達する「黄金の引き出し率」を算出することに成功しました。その引き出し率は4%です。つまり、毎年投資金額から4%ずつ引き出すだけであれば、95%の確率でその後30年以上に渡って貯金が底を尽きずに、おそらく死ぬまで老後生活を全うできるということです。
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重要な点なので、この研究結果を別の言葉で言い表すと、4%ルールというのは一年間の生活費の支出が、投資金額から得られる投資収益を含めた「投資金額全体の4%以内」であれば、仕事をリタイアしたとしても95%の確率で、その後30年間以上にわたって老後資金は底をつかないというものです。
ではもう一歩踏み込んで4%ルールに基づいて計算すると、いくらの投資元本を貯めれば、4%ルールによって老後が安泰になるのかも算出できます。
いまいちピンとこない人のためにもう少し具体的に言うと、年間の生活費の支出を4%で割り算することにより、いくら投資元本が貯まれば仕事をリタイアしても、老後生活が安泰になるかを算出することが可能になります。4%で割り算するということは25を掛け算することと同じ意味であり、以下の計算の通りです。
- 100/4%=2,500
- 100×25=2,500
どちらも、同じ2,500という数字になりますね。
つまり、自分の年間生活費×25を計算すれば、どのくらいの投資元本が貯れば早期リタイアできるかがわかるということですので記事をお読みの方も試しに計算してみてください。
【年間生活費240万円】4%ルール計算式
では実際に、早期リタイアのための、年間生活費240万円の人の4%ルールの計算式をみてみましょう。
例えば年間の生活費が240万円の人がいたとしましょう。この人はいくらの投資元本を貯めることができれば早期リタイアできるのでしょうか?
さっそく4%ルールに基づいて計算してみましょう。
4%ルールに基づいて、老後に入ることができる貯金のボーダーラインを計算してみると、
240万円 × 25= 6,000万円
となります。
つまり妥当な早期リタイア時期について4%ルールに基づいて計算すると、年間の生活費が240万円の人の場合は、6000万円の貯蓄を貯めることさえできれば、たとえ早期リタイアしたとしても老後は安泰だということです。
このようにして4%ルールを使うことによって、自分が早期リタイアすることができる目標金額を手っ取り早く算出することが可能になるのです。
なぜ4%ルールが重要なのか?
では次に、早期リタイアを検討する際に、なぜ4%ルールに基づいて計算することが重要なのかについて説明します。
たとえ多額のお金が貯蓄できていたとしても、多くの人は早期リタイアをしたくても実際には早期リタイアに踏み切れません。その理由は2つあります。
まず一つ目の理由は、一度早期リタイアしてしまうと職場復帰することは困難であるためです。
早期リタイアしたにも関わらず元の職場に復帰しようとした場合、会社の業績などの問題により再就職できないこともあるでしょう。また、たとえ元の職場に戻れたとしても、前と同じ収入を得られるかどうかは分かりません。なぜなら前に自分がいたポジションに、別の誰かがついている可能性もあるからです。
そして二つ目の理由は、今はお金が十分にあるが、早期リタイアした後に、何らかの出費がかさんでしまって、「もし、早期リタイアした後にお金が足りなくなってしまったらどうしよう」と不安になってしまうからです。不安になった結果、結局早期リタイアに踏み切れずに、ズルズルと働き続けてしまうということです。そして人によっては病気や怪我をして死亡する人もいることでしょう。つまり、お金がせっかく十分に貯まっているのに、早期リタイアに踏み切れずに死んでしまってはもったいないということです。
これらの悩みを払拭してくれるのが4%ルールに基づいた計算です。つまり早期リタイアしたい人にとって、どのぐらいの目標金額を貯蓄すれば退職できるのかが手っ取り早く分かるのです。
しかし、もちろんこの4%ルールというのは95%で成功するというだけであり、5%の人は失敗します。つまり、100%の成功率を誇るわけではないのでご注意ください。
しかし詳細は後述しますが、残りの5%にならないようにするために、「現金クッション」や「利回りシールド」などの対策をすることで回避できるようになる可能性が上がりますのでご安心ください。
早期リタイアの時期を左右するのは年収ではなく貯蓄率
また「FIRE最強の早期リタイア術」の著者クリスティー・シェンは、早期リタイアの時期を左右するのは年収ではなく貯蓄率であるとも主張しています。
つまり、どれだけ早く早期リタイアできるのかは、どれだけ年収を増やすのかで決まるのではなく、どれだけ貯蓄できているのかによって決まるということです。
例えば、年収1000万円の人であったとしても、全く貯蓄ができていなければ早期リタイアすることはできません。大金を稼いで稼いだお金を全て使ってしまうという人はたくさんいます。実際に金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯、2019年)」によれば、年収1000万円の世帯で貯蓄ゼロは10.3%、年収1200万円以上の世帯でも5.1%いるとのことです。 出典
一方で、たとえ年収400万円の人であったとしても、年収の50%である200万円を毎年貯蓄できていれば、早期リタイアに向けて準備ができているということになります。つまり、いつ早期リタイアすることができるのかは貯蓄率によって決まるということです。年収1000万円も稼げる人は、ごくわずかな人間に限られると思われます。しかし貯蓄率で勝負することによって年収300万円の人であっても年収1000万の人に勝つ可能性が出てきます。というのも1000万円世帯の人は、累進課税によって所得税などの税金を多く納めなければいけないので、なかなか貯蓄するのが難しいという人も多いでしょう。そのため、たとえ日本人の平均的な年収である年収300万円や400万円の人であっても、早期リタイアできる時期については勝ち目があるということです。
「現金クッション」と「利回りシールド」とは
「Fire 最強の早期リタイア術」の著者クリスティー・シェンが提唱している、「現金クッション」と「利回りシールド」について、それぞれどのようなものなのかを説明します。
現金クッションとは
現金クッションとは、金利の高い預金口座に入れておく現金のことです。例えばリーマンショックなどの株価の大暴落をした時に、生活費を賄うために準備しておくお金です。
老後生活などにおいて、生活費を株式を売却することで賄っているのであれば、株価暴落によって生活費を捻出することで損をしてしまうことになります。その結果、生活費が底をつくという5%の人間になってしまう可能性があります。
株式や株式中心の投資信託やREIT等を保有している場合、株価大暴落の時に売却してはいけません。なぜなら株価下がった時に売却することで損をしてしまうからです。言い換えると、前述の4%ルールによって早期リタイアした人は、その後95%の確率で「金銭面での安泰な老後」は成功しますが、5%の確率で失敗するという、その5%とはどのような人たちなのかと言うと、株価が下がった時に投資資産を売却してしまうような人のことを指します。
つまり早期リタイアした人にとって、株価の暴落をどう乗り越えるのかが重要となってきます。そこで資産を守ることに一役買ってくれるのが、「現金クッション」と「利回りシールド」です。
「現金クッション」とは金利の高い預金口座に入れておく現金のことを意味しているので、株価の大暴落時に「現金クッション」があれば、株式を売却することなく生活費をまかなうことができます。
では具体的に、どのぐらいの現金クッションが必要かといえば、以下の式によって算出することができます。
現金クッション=(年間支出-年間利回り)×年数
クリスティー・シェン;ブライス・リャン.FIRE最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド(Kindleの位置No.2147).ダイヤモンド社.Kindle版.
例えば毎年240万円の支出がある人であれば、そこから毎年の運用から得る利益を差し引いて、残った金額に「株価暴落が続くと予想する年数」を掛け算すれば算出できます。
「株価暴落が続くと予想する年数」とは、この本の著者が過去のデータから算出したものです。例えば、世界恐慌の際は配当利回りを考慮した上で、株価が元の水準まで回復するまで5年かかり、リーマンショックの時は2年かかったと言います。この株価は戻るまでの年数の中央値は2年ですが、最悪のケースを想定して5年分の「現金クッション」を準備しておくと安心でしょう。
従って毎年240万円の生活費の支出がある人は、以下の計算式で、最悪のケースを想定した上での「現金クッション」の金額を算出できます。
240万円×5年分=1,200万円
もちろんこれは目安でしかありません。実際に2020年2月のコロナウイルスによる株価下落も、たった一年足らずで元の株価水準まで回復しました。「現金クッション」のデメリットとして、「現金クッション」を大幅に取りすぎると、投資ポートフォリオ全体の利回りが悪くなってしまうので、それを考慮した上で適正額を検討すると良いでしょう。
利回りシールドとは
利回りシールドとは ETF が支払う分配金のことです。
日興アセットマネジメント株式会社によると、ETFの分配金とは以下の意味です。
ETFの分配金って何?
ETF も非上場の投資信託と同じく分配金が支払われることがあります。ETFとして扱われるには税法の定めにより、信託の計算期間中に、信託財産に生じた配当、受取利息その他これらに類する収益の額から支払利子、信託報酬その他これらに類する費用の合計額を控除した額の全額について、分配が行なわれることとなっています。
分配金受領のためには、権利確定日にETFの所有者になっていなければなりません。
つまり、分配金というのは配当と利子のことを指す言葉であり、配当金を産む利回りシールドによって、株価が大暴落を起こした時に株式を売却することなく、現金を手にすることができるというものです。
もちろん、配当金を支払うタイプのETF は、分配金を支払わずに再投資するタイプのETF と比較して利回りが低くなります。なぜなら分配金として頻繁に支払った方が、投資資産が目減りしてしまうからです。
しかし、もし株式の大暴落が早期リタイアした直後に発生した場合、その後の早期リタイア生活を継続することが困難になってしまう可能性もあり得ます。なぜなら勤労者は収入がありますが、資産生活者は収入が0であり、投資の運用成果によって資産が大幅に目減りしてしまうからです。そこで利回りシールドを活用することで、早期リタイア生活を精神的に安定した上で継続することを可能にしてくれるのです。
早期リタイア後に世界旅行をすれば生活費を抑えることができる
「Fire 最強の早期リタイア術」の著者クリスティー・シェンが主張する、早期リタイア後の世界旅行にかかる生活費について説明します。
この記事でここまでに説明してきたように、早期リタイアをした後であったとしても、株価が大暴落した時に「現金クッション」と「利回りシールド」を使えば、資産の目減りを回避できるようになります。
しかし早期リタイア後の目論見が外れて、突然の出費等が発生してしまい、計画がうまくいかないこともあるでしょう。そのような人のために、老後の資産を守るためにはもう一つ別の解決方法を紹介しています。それは、なんと年間を通して世界旅行をし続けることによって、生活費を割安に抑えることができるという驚きの方法です。
この本の著者は旅行が好きということもあり、早期リタイア後に世界旅行に行ったようです。世界旅行と言うと多額の費用がかかる印象を受けます。しかし著者が驚愕したこととして、実は思っていたよりも世界旅行にかかる費用は少なく、しかも旅行費用は意図的に安く抑えることが可能であるということです。著者は実際にカナダで生活するよりも、世界旅行における生活費の方が安く済んだと言います。
かかった費用を具体的に言うと、この本の著者は世界旅行を1年間したことにより、400万ドルしかかからなかったと言います。では具体的に、著者がどのようなことをすることで、世界旅行の費用を割安に抑えることができたのかについてみていきましょう。
Airbnbで自炊すれば割安なコストで健康的な生活が送れる
その際にAirbnbなどを活用して、旅行先で一軒家を借りて生活をすれば、自炊で費用を安く抑えられると言います。
なお、Airbnbは、宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイトの事を言います。
世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しており、2008年8月に設立されサンフランシスコに本社を置くAirbnb, Inc.により所有、運営されています。出典:WIKIPEDIA
旅行先のホテルであると食生活が偏ってしまい、太ってしまったり、栄養不足になってしまったりするかもしれません。しかしAirbnbで宿泊することにより自炊できるとなれば、健康的に旅行が出来るので長期滞在が可能になることでしょう。
物価の安い地域で旅行費用を抑える
また、先進国ではなく発展途上国である東南アジアなど、物価の安い地域を組み合わせることによって、旅行の費用をかなり抑えることが可能だということです。
物価の安い東南アジアの地域ランキングは、以下の通りです。
- 物価の安い国ランキング第1位:インド
- 物価の安い国ランキング第2位:ネパール
- 物価の安い国ランキング第3位:スリランカ
- 物価の安い国ランキング第4位:フィリピン
- 物価の安い国ランキング第5位:ベトナム
- 物価の安い国ランキング第6位:インドネシア
- 物価の安い国ランキング第7位:マレーシア
- 物価の安い国ランキング第8位:トルコ
- 物価の安い国ランキング第9位:中国
- 物価の安い国ランキング第10位:タイ
- 物価の安い国ランキング第11位:カンボジア
例えば著者が言うには、タイに旅行すれば、年間12,000ドル-15,000ドル支払えば、まるで女王様のような生活ができるそうです。
また、ベトナムやマレーシア、カンボジアにおいても、1つ星の価格で4つ星のライフスタイルが味わって大満足だったとのことです。しかし、そう言われてもピンとこないと思うので、具体例を挙げると以下のようなホテルです。
ホテルの格付けの目安
1つ星ホテルとは1室2名で9㎡以上あって、フロントが8時間オープンしているようなホテルを言います。
そして4つ星ホテルとは、1室2名で16㎡以上あって、2F以上の建物の場合エレベーターが付いていたり、部屋が30室以上ある場合はフロントが24時間オープンしているようなホテルを指します。(参考)
もちろん2021年の現在は新型コロナウイルスの影響で海外旅行は難しいですが、コロナが終息した後にもし世界旅行を希望するのであれば、上記の物価の安い東南アジアの地域を頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
早期リタイア後の世界旅行まとめ
ここまで説明してきた、著者の早期リタイア後の世界旅行に関する主張をまとめると、二つのポイントがあります。
まず一つ目は、物価の高い先進国の一箇所にとどまって生活するよりも、Airbnb を利用して自炊などによる食生活で世界旅行をするほうが、生活費が安く抑えられるし健康的だということです。
そして二つ目は、早期リタイアをしたはいいが、世界旅行をするには予算に少し不安があるという人の場合、東南アジアに滞在する期間を長くするべきだということです。東南アジア諸国を旅行先に加えて滞在期間を長く確保することによって、老後資金が尽きることなく、早期リタイアが成功する可能性が高まるということです。
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