【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方【令和にふさわしい対策】

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【2020少子化社会対策大綱】基本的な考え方【令和にふさわしい対策とは】
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少子化について知りたいですか?

日本の少子化対策について学びたければ、まず政府が作成した2020少子化社会対策大綱における「少子化対策の基本的な考え方」を理解する必要があります。

政府が考える「新しい令和の時代にふさわしい少子化対策」とはどのようなものかをご紹介!

[小熊英二]の日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)

少子化問題と対策について、全体像と具体例をわかりやすく学びたい方はこちらの記事も併せてご参照ください。

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【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方

2020少子化社会対策大綱では、少子化対策の基本的な考え方を以下のように説明しています。

Ⅲ 基本的な考え方 ~新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ~

若い世代が結婚や子供についての希望を実現できる社会をつくり、「希望出生率1.8」を実現するため、以下の基本的な考え方に基づき、社会情勢の変化等を踏まえた、令和の時代にふさわしい当事者目線の少子化対策を進めていく。本大綱の推進に当たっては、将来の子供たちに負担を先送りすることのないよう、安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、できることから速やかに着手することとする。

(出典:内閣府HP 「少子化社会対策大綱-令和2年5月29日閣議決定」

これを見てみると、政府は若い世代の希望(2人は子供が欲しい)を実現できる社会をつくるために、

  • お金を貯めつつ
  • 優先順位を決めて、
  • できることから即開始していきます、

と公言しています。また、ここでいう希望出生率1.8を達成するというのは、現在の出生率(2018年の日本の出生率1.42)から0.38ポイント上昇させるということを指しています。 (出典:厚生労働省「第1表 人口動態総覧」

そして、「令和の時代にふさわしい当事者目線の少子化対策」というのは、具体的には後述する、

  • 親と離れて暮らす核家族化における子育てのサポートや、
  • 夫婦で共働きをする際に男性の育児参加をするため男性も育児休業の取得することを推奨する、

などを指しています。また政府は、高齢者の定年延長によるシニアの労働力の拡充をすることにより、若い世代が育児休業を取得する代わりに、高齢者の労働力を持ってくるという方針でもあります。高齢化社会の現状を学びたい方は、こちらの記事をご参照ください。

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【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方 具体例

さらに2020少子化社会対策大綱では、「少子化対策の基本的な考え方」について具体的な例を挙げて説明しています。どのような例なのかを詳しく見ていきましょう。

雇用形態と未婚率

まずは、結婚・子育て世代が将来の展望を描ける環境を整備するという点について、以下のように説明されています。

(1)結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる

全ての結婚・子育て世代が、どのようなライフスタイルを選択しても将来にわたる展望を描けるよう、環境を整えていくことが必要である。若い世代の非正規雇用労働者の未婚率は、特に男性で正規雇用に比べて顕著に高くなっており、雇用の安定を図り経済的基盤を確保することが重要である。

(出典:内閣府HP 「少子化社会対策大綱-令和2年5月29日閣議決定」

ここで出てくる「どのようなライフスタイルを選択しても将来にわたる展望を描けるよう、環境を整えていく」というのは、働き方を変えていくことを指しています。具体的には、

  • 非正規雇用労働者は
  • 正規労働者(正社員)

と比べて、未婚である割合が大幅に高いということです。実際に非正規雇用労働者の未婚率がどのぐらい高いのかと言うと、 東洋経済オンラインの記事で2015年国勢調査「就業状態等基本集計」を元に、以下のように分かりやすく説明されているので引用させていただきます。

男性の生涯未婚率は、正規雇用16.6%、非正規雇用50.7%と圧倒的に非正規が高いのに対して、女性は正規雇用22.1%、非正規雇用8.3%と逆転します。

つまり、

  • 男性は稼ぎが少ないと、結婚できない確率が約31%上昇するのに対し、
  • 女性は稼ぎが多いと、結婚できない確率が約13%上昇する

ということです。このような正規雇用かどうかによって、結婚できるかどうかという点に大きな影響を与えてしまっている現状を変えることを、政府は目標としているのだ、と言っています。

日本の雇用からライフスタイルまで規定している「社会のしくみ」について学びたい方はこちらの書籍がオススメです。

女性就業率

さらに、2020少子化社会対策大綱は、女性就業率についても以下のように説明しています。

また、女性就業率の上昇に伴い、共働き世帯が増加している。女性活躍の推進、価値観の多様化などを背景に、子育てしながらキャリアアップを目指す女性や、家事・育児に関わりたいという男性も増えつつある。一方で、妻が正規雇用の世帯は全体の3分の1弱であり、子育て世代の男性は長時間労働者の割合が高い。家事・育児の負担については、就業形態や就業の有無にかかわらず、依然として女性に偏っており、女性一人が育児をするいわゆる「ワンオペ育児」の状況もある。

(出典:内閣府HP 「少子化社会対策大綱-令和2年5月29日閣議決定」

女性が就業する割合が増加するとともに、専業主婦の割合が減って共働き世帯が増加していると言います。具体的には、共働き世帯数の推移は以下の通りです。

共働き世帯の増加のグラフ

共働き世帯の増加

(出典: 内閣府男女共同参画局HP「男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」)

このグラフを見てみると、昭和55年以降、夫婦共働き世帯は年々増加していることがわかります。特に平成9年以降は、共働き世帯数が、

  • 男性は仕事をして
  • 女性は専業主婦

である世帯数を上回っている点が特徴的です。これは、旦那の稼ぎだけでは生活が難しく、女性も働かなければ生活が成り立たない、と言う家庭も増えてきた証拠です。

価値観の多様化

また2020少子化社会対策大綱では、価値観が多様化してきた結果、以前は少数派であった、

  • 女性がバリバリ仕事をしてキャリアアップしたり、
  • 男性が家事・育児に参加したい

という人が増えている点を挙げています。

しかしながら、たとえ奥さんが仕事をしていたとしても、正規雇用として働いている女性は全体の3分の1にすぎないことも指摘しています。つまり全体の女性の7割近くが、

  • アルバイトや
  • パート
  • 派遣社員

として働いているということです。

しかし有能な女性であるにも関わらず、アルバイトとして働いているとすれば、それは社会にとっての損失ですよね?例えば、皆さんもきっと一度や二度は経験があるでしょうが、お店などに行って接客してもらう際に、担当者がアルバイトやパートの女性であるにも関わらず、正社員の男性社員よりも有能な説明をしてくれることがあります。つまり、そのような有能な女性たちが、ただ単に女性であるというだけで、無能な男性よりも低収入に甘んじていることは、日本において損失だとも言えるのです。

もしあなたが女性であることで職場で「働きにくい」と感じているのであれば、

  • Facebook初の女性役員となり、
  • 世界で最も有力な100人のリストである「タイム100」に名を連ねた、

有能な女性の象徴とも言える、シェリル・サンドバーグの全米大ベストセラー書籍が参考になるでしょう。この本では、自分の幸せとキャリア上の成功を手に入れるための方法を、シェリル・サンドバーグ自身の

  • 職業経験と
  • 家庭生活と
  • 子育て

を振り返りながら説明されています。男性にとっても彼女の考え方は大いに参考になるはずです。

家事・育児をする役割分担

そして、2020少子化社会対策大綱では、妻の収入が少ないことを補うには、子育て世代の夫は長時間労働をせざるを得ないと指摘しています。

その結果、家事・育児をする役割分担は、結局は夫ではなく妻の仕事になってしまい、女性1人がワンオペ状態で育児をする羽目になっているから改善するべきだと政府は指摘しています。したがって、女性の正社員化を促進することにより、

  • 男性の長時間労働を抑制することにつながり、
  • その結果、男性も家事・育児を手伝う時間的余裕ができ、
  • 女性のワンオペ状態をなくすこともできるようになる。
  • ひいては、それが少子化を食い止めることに有効であるだろう、

と言っています。

男女ともに仕事の生産性を上げると同時に、女性の社会参画を促すべきだと言う点について、こちらのベストセラー書籍でも詳しく説明されていますのでご参照ください。

 

【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方 まとめ

次に2020少子化社会対策大綱では、ここまでの説明を以下のような言葉でまとめています。

このため、家庭内における子育て等にかかる負担の軽減を図りつつ、結婚・子育て世代の男女が、制度的な制約によりライフスタイルの選択の幅が狭められることのないよう、男女共にキャリアとライフイベント双方について展望を描ける環境を整備していく。性別役割分業を前提とした働き方、暮らし方を見直すことにより、経済的基盤の安定を図り、ワーク・ライフ・バランスを確保し、多様なライフスタイルを可能にしていく。就業形態や就業の有無にかかわらず、結婚、妊娠・出産、子育てについて、男女が共に担うべき共通の課題にしていく。

(出典:内閣府HP 「少子化社会対策大綱-令和2年5月29日閣議決定」

一言で言うと、「女性にまかせっきりだった家事・育児を、男性も手伝うことができるように政府も推進していきますよ」ということです。

そして、ここまでの少子化対策の要点を、箇条書きにして重点課題として整理すると以下のようになります。

<重点課題>

・若い世代が将来に展望を持てる雇用環境等の整備(経済的基盤の安定)

・結婚を希望する者への支援(地方公共団体による総合的な結婚支援の取組に対する支援等)

・男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備(保育の受け皿整備、育児休業や育児短時間勤務などの両立支援制度の定着促進・充実など)

・子育て等により離職した女性の再就職支援、地域活動への参画支援(学び直し支援など)

・男性の家事・育児参画の促進

・働き方改革(働き方改革関連法 14に基づく、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保など)と暮らし方改革(学校・園関連の活動、地域活動への多様で柔軟な参加の促進など)

(出典:内閣府HP 「少子化社会対策大綱-令和2年5月29日閣議決定」

この中で出てくる、「地方公共団体による総合的な結婚支援の取り組みに対する支援」について、詳しくは「【2020少子化社会対策大綱】雇用や結婚・子育て支援」の記事をご参照ください。

また「働き方改革」とはどのようなものかというと、企業は従業員を確保するために、

  • 適正な賃金を支払うだけでなく、
  • 従業員の家庭にまで配慮した働きやすい労働環境を提供するべきだ

という方針のことです。日本では様々な社会的背景を踏まえ、政府は 2016 年より「働き方改革」を推進しており、2019 年4月1日から「働き方改革関連法」が施行されています。 同法のポイントは以下の図のとおりであり、中小企業も「働き方改革」への適切な対応が必要となります。

第3-1-56図働き方改革関連法のポイント

第3-1-56図働き方改革関連法のポイント

出典:中小企業白書2019

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