少子化対策について知りたいですか?
少子化社会対策大綱を政府や自治体は掲げ、様々な対策を行っています。
しかし具体的な対策の内容について、いまいちピンとこないと感じてる人は多いはずです。
そこで、どのような少子化対策が行われているのか、日本と海外の成功例を踏まえて説明します。
少子化とは?
まず少子化という言葉の定義から説明していきます。
少子化というのは私たちの親の世代の人数よりも、子供の世代の方が少なくなってしまうことを言います。
しょうしか【少子化】
親世代よりも子世代が少なくなること。
合計特殊出生率が人口置換水準を下回る状態が続き、子供の数が減少すること。
総人口に占める子供の人口の割合が低下すること。
出典
少子化(ショウシカ)とは? 意味や使い方 - コトバンクデジタル大辞泉 - 少子化の用語解説 - 出生率の低下に伴い、総人口に占める子供の数が少なくなること。統計的には、合計特殊出生率(女性が一生の間に産む子供の数)が人口置換水準(長期的に人口が増減しない水準)に達しない状態が続くこと。日本では...
少子化対策の説明に入る前に、未だ少子化の現状を理解していない方は、こちらの記事を先に一読してから本記事を読み進めた方が理解が深まります。
日本
日本の少子化問題に対し、政府や自治体、企業などは、どのような対策が行っているのかを説明していきます。
少子化社会対策大綱
日本政府は少子化問題への対策として、2015年3月20日に少子化社会対策大綱を定めました。
少子化社会対策大綱を噛み砕いて説明すると、以下4つの考えを土台としています。
少子化社会対策大綱
- 少子化は、個人・地域・企業・国家に至るまで多大な影響を持っており、日本は少子化により、社会経済の根幹を揺るがすほどの危機的な状況にあることを認識する。
- 少子化危機は、解決不可能な課題ではなく、克服できる課題として認識する。
- 直ちに集中して取り組むとともに、粘り強く少子化対策を推薦していこう!
- 「結婚、妊娠、子供・子育て」に温かい社会の実現に向けて、社会全体で行動を起こしていこう!
出典
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/law/pdf/shoushika_taikou2_g.pdf
少子化社会対策大綱の概要
そして、さらに具体的な考えとして政府は以下5つを、少子化社会対策大綱の概要として計画しています。
少子化社会対策大綱の概要
- 若者が結婚して子育てをしやすい環境を作る。
- 個人が結婚や子供についての希望を実現できる社会を作る。
- 結婚・妊娠・出産・子育てを、地域や企業などの社会全体で対応する。
- 2015年から2020年までを「集中取組期間」とし、重点課題を設定して政策を集中的に投入する。
- 子供への資源配分を大胆に拡充する。
出典
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/law/pdf/shoushika_taikou2_g.pdf
ここまでの説明で、少子化対策の全体像はつかめると思いますが、まだかなり抽象的です。
そこで、さらに具体的な政府の取り組み方を以下に説明します。
上記の少子化社会対策大綱の概要の5項目の内、4つ目に記載がある重点課題を具体的にいうと以下の5点になります。
重点課題
- 子育て支援政策を一層充実
- 若い年齢での結婚・出産の希望の実現
- 多子世帯へ一層の配慮
- 男女の働き方改革
- 地域の実情に即した取り組み強化
一つ一つ説明していきます。
重点課題
子育て支援政策を一層充実
子ども子育て支援新制度の円滑な実施
まず子ども子育て支援新制度の円滑な実施を行います。
これは財源を確保しつつ、量的拡充と質の向上を目指しています。
具体的に言うとこの政策は2015年4月から施行されました。
保育の受け皿確保による量的拡充と、保育士の処遇改善による質の向上を目指します。
また都市部だけではなく、地域の実情に応じた子育て支援に関する施設や、事業の計画的な整備を行います。
具体的に言うと、地域のニーズに応じて利用者支援事業や、地域子育て支援拠点を充実させたり、一時預かりなどの多様な保育を促します。
つまり、政府は今後さらに質の向上に努力していくということです。
出典
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待機児童の解消
また待機児童の解消も主な重点課題として取り上げています。
待機児童解消加速化プランや保育士確保プランを通じて、認定こども園や保育所、幼稚園などを整備して、新たな受け入れを大胆に増加します。
処遇改善や人材育成を含めた保育士の確保は、2017年度末までに待機児童の解消を目指していましたが、2019年の現時点ではまだ完全には改善されていません。
出典
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小1の壁の打破
そして小1の壁の打破を目指しています。
小1の壁というのは保育園よりも小学校の方が仕事と家庭の両立がしにくくなるというものです。
具体的に言うと、保育園よりも小学校の学童保育の方が預かってくれる時間が短いので仕事終えて早く家に帰らなければいけないので共働き世帯は困ってしまいます。
また夏休みなどはお弁当を持参しなければいけないので、毎日お弁当を作る手間がかかります。
これらの問題に対して、政府は放課後子ども総合プランを策定します。
小3までから小6までに対象が拡大された放課後児童クラブを、2019年度末までに約30万人分整備します。
若い年齢での結婚・出産の希望の実現
経済的基盤の安定
若者の雇用の安定を目指して、若者雇用対策の推進のための法律を整備します。
また高齢者世代から若者世代への経済的支援の促進を行います。
具体的に言うと、教育に加えて結婚子育て資金一括贈与非課税制度創設を通し実行されます。
また若年者や低所得者への経済的負担の軽減も行われます。
具体的にいうと、地方公共団体が設置する公営住宅においては、子育て世帯等について、入居者選考において、地域の実情を踏まえた優先入居の取扱いを行っている例がみられます。
結婚に対する取り組み支援
また結婚に対する取り組み支援は、自治体や商工会議所による結婚支援を通して行われます。
適切な出会いの機会の創出後押しなどを、自治体や商工会議所などによる取り組み支援として行われます。
多子世帯へ一層の配慮
また多子世帯への一層の配慮が、子育て保育教育住居などの負担軽減により行われます。
具体的に言うと、幼稚園・保育所などの保育料無償化の対象拡大などの検討や、保育所優先利用などが挙げられます。
幼稚園の保育料を無償化するのは、全ての幼稚園に通う人が対象です。
また、保育所などの保育料の無償化に関しては、無認可保育も対象になるので、子育て世代にとってますます利用するハードルが下がりそうです。
自治体、企業、公共交通機関などによる多子世帯への配慮優遇措置の促進
自治体や企業家交通機関などを通して、子どもが多い世帯への配慮を行います。
例えば企業内保育所などの創設により、子育てしやすい環境を企業が作ることを目指しています。
男女の働き方改革
男性の意識・行動改革
男性の意識や行動を改革するために長時間労働の是正を行います。
長時間労働の抑制のための法整備や、働き方改革を通じて改善することを目標とします。
また人事評価の見直しなど、経営者たちの側の意識改革も行われます。
これは部下の子育てを支援する上司を評価するなどの方策を検討中です。
男性が出産直後から育児できる休暇取得を促進することを目指しています。
企業独自の休暇制度の導入や育児休業の取得促進を行います。
平成29年度・雇用均等基本調査結果よれば、育児休業の取得率は女性83.2%、男性5.14%となっています。
育児休業中でも併用可能である、認証保育所に入るための裏技に関しては、こちらの記事をどうぞ。
ワークライフバランス・女性の活躍
ワークライフバランスを整えたり、女性の活躍がより一層開かれたものにするために、職場環境整備や多様な働き方の推進を行います。
フレックスタイム制の弾力化や、テレワークの推進を通して実施されます。
また女性の継続就労やキャリアアップ支援を通して女性活躍推進法案も策定されました。
女性は出産を機に仕事を辞めてしまう人が多いので、この政策によって歯止めをかけるのが狙いです。
出典
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地域の実情に即した取り組み強化
地域の強みを生かした取り組み
地域で少子化対策強化交付金を配布することにより、取り組み支援を行います。
先進事例を全国展開して共有することで、地域ごとの少子化対策を行います。
出産等の希望が叶う社会づくりプロジェクト【九州・山口県】
出典
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地方創生と連携した取り組み
国と地域が緊密に連携した取り組みを、地方創生と連携した取り組みと言います。
これは町おこしなどを通して経済を活性化させることが目的です。
きめ細かな少子化対策の推進
またここで説明するのは、この記事の冒頭で触れた、「少子化社会対策大綱の概要」5項目のうち三つ目にあたる「結婚・妊娠・出産・子育てを、地域や企業などの社会全体で対応する。」という項目を詳細に説明するものです。
一つ一つみていきましょう。
各段階に応じた支援
結婚
ライフデザインを構築するための情報提供を行います結婚や子育てなどのライフイベントや学業キャリア形成など人生設計に関する情報提供やコンサルを行うことで支援します。
妊娠・出産
子育て世代包括支援センターを整備するなどして妊娠期から子育て期に当たるまでの総合的な相談支援を提供するワンストップ拠点を整備して切れ目のない支援を行います。
出典
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また産休中の負担を軽減するために出産手当金による所得保障と社会保険料免除を行います。
さらに産後ケアガイドラインを策定することを検討しています。
また企業においてマタニティハラスメントやマタニティハラスメントの防止をするために、企業への指導の強化設定を行います。
そして、周産期医療の確保や充実なども目指します。
周産期医療とは
周産期とは妊娠後期(妊娠22週以降)から新生児早期(生後7日未満)までの赤ちゃんの出生前後の時期を指します。この時期の母体(お母さん)、胎児(おなかの赤ちゃん)、新生児(生後28日未満の赤ちゃん)を総合的に診療し、母児双方の健康を守るのが周産期医療です。出典
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子育て
子育てに関しては経済的負担を緩和します。
具体的に言うと幼児教育の無償化の段階的な実施が行われます。
また三世代同居家や、近くに親が住むことを促進したりします。
また、小児医療を充実させたり、地域の安全の向上を目指して子供の事故や犯罪被害防止を促します。
障害のある子供や貧困の状況にある子供など様々な家庭や子どもへの支援を行います。
具体的に言うと障害のある子どもへの支援、子どもの貧困対策、児童虐待防止などが挙げられます。
警視庁の調べによると2018年の1年間に全国の警察が摘発した児童虐待事件は1380件で、被害に遭った18歳未満の子供の数は1394人でした。
教育
教育においては、妊娠や出産に関する医学的・科学的に正しい知識を習得することを目指し、教材への記載と教職員の研修を通して行います。
仕事
仕事においては正社員化の促進や処遇改善を行います。
契約社員や派遣社員の待遇改善が期待されています。
またロールモデルを提示し、就労する人としない人、子供を育てながら働き続ける、一つの地域で活躍を続けるなどのロールモデルを政府が提示します。
社会全体で行動し、少子化対策を推進
結婚・妊娠・子供・子育てに温かい社会づくりを目指します。
具体的に言うとマタニティマークやベビーカーマークを普及させることを政府は目指します。
また子育て支援パスポート事業の全国展開を行います。
出典
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企業の取り組みとしては、企業の少子化対策や両立支援の取り組みの「見える化」と、先進事例の情報を共有することを促します。
具体的に言うと、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定を政府は促進します。
次世代育成支援対策推進法とは、「厚生労働省が認定した従業員子育て支援事業の事」をいいます。
出典
次世代育成支援対策推進法(ジセダイイクセイシエンタイサクスイシンホウ)とは? 意味や使い方 - コトバンクデジタル大辞泉 - 次世代育成支援対策推進法の用語解説 - 少子化の流れを食い止め、子供が健康に生まれ育つ環境を整備するための対策を推進することを目的とする法律。平成15年(2003)成立施行。平成27年(2015)までの時限立法。
施策の推進体制
国の推進体制としては内閣総理大臣を長とする少子化社会対策会議を中心にまちひとしごと創生本部と連携しつつ政府一体で推薦します。
施策の検証評価に関しては数値目標を設定して行きたい企業も対象とする検証評価の方策を検討します。
また大綱の見直しとしては、自治体や企業も対象とする検証評価の方策を検討し、だいたい5年後をめどに見直ししていきます。
主な施策の2020年までの数値目標()内は現状の数値
子育て支援
- 認可保育所等の定員267万人 (234万人)
- 放課後児童クラブ122万人、待機児童解消を目指す (94万人、9945人)
- 地域子育て支援拠点事業8000箇所 (6233箇所)
- 利用者支援事業1800箇所 (291箇所)
- 一時預かり事業延べ434万人 (延べ406万人)
- 病児病後児保育 延べ150万人 (延べ52万人)
- 養育支援訪問事業 全市町村 (1225市町村)
- 子育て世代包括支援センター 全国展開をし、なおかつ支援ニーズの高い妊産婦への支援実施の割合100%
男女の働き方改革・ワークライフバランス
- 男性の配偶者の出産直後の休暇取得率80% (-)
- 男性の育児休業取得率13% (2%)
- 第1子出産前後の女性の継続就業率55% (38%)
教育
- 妊娠や出産に関する医学的科学的に正しい知識についての理解の割合70% (34%)
結婚・地域
- 結婚・妊娠・出産子育ての各段階に対応した総合的な少子化対策を実施する地方自治体の数70%以上の市区町村 (14%)
企業の取り組み
- 子育て支援パスポート事業の会の協賛店舗数44万店舗 (22万店舗)
結婚、妊娠、子供、子育てに温かい社会
- 結婚・妊娠・子ども・子育てに温かい社会の実現に向かっていると考える人の割合50% (19%)
出典
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/law/pdf/shoushika_taikou2_g.pdf
海外
海外の社会対策を具体例を挙げて説明します。
海外の少子化対策の成功例
少子化が起こっているのは、日本だけではありません。
先進諸国や発展途上国でも少子化が進んでいます。
しかしアメリカやヨーロッパ諸国では、政策によって少子化が改善し、合計特殊出生率を回復させています。
そこで、少子化対策に成功している海外の事例を説明していきます。
フランス
例えばフランスにおいては家族給付が全体的に手厚いし、第3子以降の子どもを持つ家族に有利になっているのが特徴です。
もし日本においても第3子以上の子供に全くお金がかからないとしたら、多くの子育て世代の人は子供を沢山儲けるようになると思われます。
また、フランスでは以前までは家族手当などの経済的支援が中心でしたが、1990年代以降は、保育の充実へとシフトし、出産子育てと就労に関して幅広い選択ができる環境を整備しました。
つまり、両立支援を強める方向で政策を進めています。
スウェーデン
スウェーデンは40年ほど経済的支援や両立支援施策を進めてきました。
子供が多い世帯に加算されるという、児童手当制度や両親保険に代表される充実した、育児休業制度、また開放型就業前学校等の多様かつ柔軟な保育サービスを展開しました。
その結果、男女平等の視点から社会全体で子どもを育む支援制度を整備しています。
子ども1人につき育児休暇取得可能日数は480日間で、先進国では最長となっています。
フィンランド
フィンランドではネウボラと呼ばれる、妊娠期から就学前までの切れ目のない子育て支援制度を市町村が主体で実施して、子育てにおける精神的な面や経済的な面の負担軽減を行っています。
妊娠をしたかどうかを検査するためには、ネウボラに行けば無料で検診を行うことができます。
また女性は産前産後105日間休業を取得することができ、前半の56日間は給与の90%、それ以降は70%が休業補償として受け取ることができます。
アメリカ
アメリカは高い出生率を維持しており、家族政策に不介入が基本です。
アメリカでは税制の所得向上を除けば、児童手当制度や出産休暇、または育児休暇の制度や公的な保育サービスがありません。
しかしそのかわりに、民間の保育サービスが発達しています。
また日本などで特徴的な固定的な雇用制度に対し、アメリカでは子育て後の再雇用や子育て前後のキャリアの継続が容易であることが特徴です。
またアメリカ人は男性の家事参加率が比較的高い社会経済的な環境を持っています。
出典
Q6 少子化対策に成功している海外の事例はありますか|選択する未来 - 内閣府選択する未来-人口推計から見えてくる未来像-(内閣府)を掲載しています。
また家族関係政府支出を見てみると、日本では現物給付よりも現金給付の方が高いです。
現金給付とは児童手当のことです。
一方で現物給付とは、保育や就学前教育費用の補助金などが挙げられます。
しかし、現物給付の割合が大きい国は、出生率においても高い傾向があります。
そのため日本も現金で給付することにより、出生率を上げる可能性があるということをこのグラフは示唆しています。
出典
Q6 少子化対策に成功している海外の事例はありますか|選択する未来 - 内閣府選択する未来-人口推計から見えてくる未来像-(内閣府)を掲載しています。
以上が少子化対策についての説明でした。
少子化対策と高齢化社会対策を併せて理解することで、、社会経済についての理解が一層深まりますので、こちらの記事がおすすめです。
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