新興企業は未成熟市場で起業できる理由を知りたいですか?
新興企業が未成熟市場で起業することにより、優良企業を打ち負かすことができる可能性が高まります。
そう考える理由を、起業の科学とイノベーションのジレンマの理論に基づいて説明していきます。
経営者やビジネスパーソンは必見です。
起業家にとっての「良いアイデア」とは
100人にアドバイスを求めた時に、9割以上の人が「それ良いアイデアだね」と賛同してくれるアイデアは、成熟市場であることを意味します。
そのため、起業が失敗しやすいという特徴があります。
もちろん当初周りからの評価が高いほど、起業家は安心することができ、自信につながるかもしれません。
しかし、「誰が聞いても良いと思えるアイデア」は、起業家にとって選択するべきではない「悪いアイデア」なのです。
その理由を、
- ベストセラー本「起業の科学」の著者である田所 雅之さんと、
- ベストセラー本「イノベーションのジレンマ」の著者であるクレイトン・クリステンセン教授
の考えに基づいて説明していきます。
起業の科学
まず「起業の科学」の著者である、田所 雅之さんの言葉を借りて説明します。
良い・悪いアイデアの判断基準
悪いアイデア
「誰が聞いても良いアイデア」というのは他の会社も参入を検討しているので、市場が競合他社で埋め尽くされている成熟市場です。
そのため製品価格の値下げ競争になりやすいので、資源をより多く持っている大企業が有利になります。
一方で資源が少ない起業したての会社は、値下げ競争では圧倒的に不利になってしまいます。
つまり、新興企業が既存の大企業に負けないためには、「誰が聞いても良いアイデア」には手を出すべきではありません。
良いアイデア
では、どのようなアイデアが良いアイデアなのかといえば、起業の科学の著者である田所雅之さんは以下のように述べています 。
”「99%くらいの人がアンセクシーだと感じるけれど、1%の人はセクシーだと感じるようなアイデア」を探し続けよう。”
起業の科学 P.27より引用
https://amzn.to/2Hdo1BY
良いアイデアというのは、ほぼ100%の人が「そんなことで成功するはずがない!」と感じてしまうほどに「突飛な発想」で起業すべきだということです。
言い換えると、常識とはかけ離れた発想でなければ、起業は成功しないことをも意味します。
市場分析を怠り、安易に起業する経営者の9割は起業に失敗するので注意しましょう。
良いアイデアの具体例
トリプル・ダブリュー・ジャパンの排泄予測装置 D Free
そして田所さんは、1%の人はセクシーだと感じるアイデアの例として、トリプル・ダブリュー・ジャパンの排泄予測装置 D Free をあげて説明しています。
この装置は、超音波で膀胱や直腸にある便や尿の量を検知できます。
排泄予測は介護現場で需要が高いので、トリプル・ダブリュー・ジャパンはクラウドファンディング「READYFOR」で資金を調達し、実用化しています。
その結果、人手不足が深刻化している介護市場において、高い評価を得ているようです。
新興企業は未成熟市場で起業しよう!
人に伝えるのが困難=未成熟市場
99%の人が悪いアイデアだと感じる起業のテーマは、人に伝えるのが難しいです。
人に伝えるのが難しいということは、その課題を言語化して説明できないくらいに、市場が未成熟だということを示しています。
未成熟市場は、課題にすでに目をつけている企業が少数であることも意味しているので、新興企業はライバルの少ない市場にこそ参入するべきです。
人に伝えるのが容易=成熟市場
一方で、言語化して他人に説明できるような課題をテーマに起業した場合、市場がライバルたちに埋め尽くされているはずです。
競合他社が乱立する成熟市場の場合、投入できる資金の大小で勝負が決まってしまうので、値下げ競争では大企業の方が有利になります。
つまり、新興企業こそ、人に伝えるのが困難なくらいの、市場が未成熟である課題をテーマに起業するべきなのです。
イノベーションのジレンマ
次にハーバードビジネススクール教授である、クレイトンクリステンセン氏が手がけた著書「イノベーションのジレンマ」の理論に基づいて説明していきます。
優良企業が失敗する理由
過去の優良企業の多くが倒産してきた理由は、顧客の声に耳を傾けすぎたから失敗したのです。
言い換えると、経営陣は優秀であるがゆえに失敗してしまったとも言えます。
例えば、確かに顧客と緊密な関係を保つことで、顧客のニーズに沿った製品を販売することができるようになります。
しかし変化の激しいハイテク業界では、顧客の声に耳を傾けすぎると、企業が変化に対応出来ず、苦戦を強いられてしまうことになります。
これは
- ディスクドライブ業界
- 掘削機業界
- オートバイ業界
など、過去に幅広い産業に見られた傾向です。
変化の激しい現代の世の中においては、時として顧客の声に耳を傾けることが仇となります。
そうではなく、顧客が潜在的に必要としている、次の新興市場を目指して製品開発を行う必要があるのです。
例えば、もし今から20年前に Facebook がどれだけ革新的なサービスであるのかを人々に説明したとしましょう。
その結果、「具体的にどのようなものなのかイメージできないので、判断できない」と言われるのがオチでしょう。
破壊的イノベーションの法則
存在しない市場は分析できません。
そのため優良企業が新興市場に参入するタイミングを逃す可能性が高いです。
そこで、新興企業こそが新規参入するべきなのです。
「破壊的イノベーションの法則」の中における原則を、スマートフォン市場に当てはめて解説していきます。
「破壊的イノベーションの法則」原則三 存在しない市場は分析できない
クリステンセン教授は、著書の中でこう述べています。
新しい市場につながる破壊的技術を扱う際には、市場調査と事業計画が役に立った実績はほとんどない。第七章で取りあげるディスク・ドライブ、オートバイ、マイクロプロセッサーの各業界の実績から確実に言えるのは、新しい市場がどの程度の規模になるかについて専門家の予測はかならず外れるということだけだ。情報が入手でき、計画を立案できる持続的技術では、リーダーシップをとることは、競争上、重要でないことが多い。このような場合、追随者も先駆者も実績は変わらない。先駆者が圧倒的に有利なのは、市場のことがほとんどわからない破壊的イノベーションの場合である。これがイノベーターのジレンマである。
出典
ClaytonM.Christensen.イノベーションのジレンマ増補改訂版
「原則三:存在しない市場は分析できない」の項より引用
Harvardbusinessschoolpress(Kindleの位置No.391-392).翔泳社.Kindle版.
要するに、新興市場で戦う場合は、新興企業の方が、既存の優良企業よりも有利であるということです。
もし新興企業が既存の事業で戦うとしたら、優良企業と比較して、
- 規模の経済の点でも
- 資源の点でも
不利になります。
しかし未開拓市場ではそれとは反対に、優良企業は今までの事業が足かせとなり、新興企業に比べて不利になってしまうということです。
破壊的イノベーションの事例「スマートフォン市場」
iPhone は今まで当たり前であったガラケーにとって、破壊的イノベーションと呼ぶべきものです。
2019年2月時点におけるスマートフォンのシェアは85%を超えており、ガラケーとは対照的にシェアを伸ばしてきています。
市場調査をくまなく行った上で、間違いないと判断できたら計画通りに実行する。
これこそが、優秀な経営者が行うべき判断です。
しかし Appleのスティーブ・ジョブズ氏が開発した iPhone によって開拓されたスマートフォン市場は、もともと市場調査のしようがありませんでした。
優良企業は様々な市場調査を行った上で新商品を開発しています。
しかし存在していない市場、ここでいうスマートフォン市場を分析することはできないので、顧客のニーズを見落とし、新規参入できずにいた可能性もあります。
まとめ
資源が少ない新興企業は、値下げ競争では圧倒的に不利になります。
そのため、新興企業が大企業に負けないために、99%の人が賛同しないような、常識とかけ離れた発想で起業するべきです。
常識とかけ離れた発想とは、人に伝えることが困難ですが、市場が未成熟であるということを意味します。
また、優良企業は顧客の声に耳を傾けすぎるからこそ、失敗してしまう傾向があります。
もし新興企業が、「顧客自身が気がつかない、潜在的なニーズ」に注目して商品を開発することができれば、優良企業を打ち負かすことができる可能性が高まります。
そのため、新興企業こそ、市場が未成熟である課題をテーマに起業するべきです。
そうすることで、新興企業が大企業を打ち負かす可能性が上がります。
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