- 「不利な状況に立たされている」
- 「もう少し資源があれば勝てるのに」
このように感じている、中小企業で働く経営者やビジネスパーソンに向けて書かれた記事です。
日本において従業員として働く人のうちで、全体の3分の1は大企業に勤務しており、残りの3分の2は中小企業に勤務しています。
多くの中小企業は大企業よりも、
- ヒト
- モノ
- カネ
の資源が不足しているので、一見すると不利な状況に立たされているかのように思われます。
それにもかかわらず、様々な場面で中小企業が大企業に打ち勝つ光景を目にします。
それは、経営における勝敗が資源の大小ではなく、戦略で決まるからです。
例えば、中小企業は大企業と比較すると全体的には不利な状況のように思えても、個々の状況ごとに細分化して考えてみれば、有利な状況を見つけることができます。
その有利な状況を最大限活かすことで、中小企業が大企業を打ち負かすことができるのです。
どのような点に着目すれば有利な状況を見つけることができるのか、具体例を挙げて説明していきます。
ランチェスター戦略「強い敵との戦いは避け、弱い敵とだけ戦う」
戦いがうまい人は、弱い敵だけ相手にして一人ひとり潰していきます。
これはランチェスター戦略や孫子の兵法でも言われていることで、強い相手とは戦いをすべきではありません。
なぜなら強い相手と戦っても旨味が少ない為です。
弱い敵から優先的に倒していくにつれて、自分に与えられるダメージも少ないことを利用し、連戦を繰り返してくこともできます。
強い相手とは戦わずに、絶対に勝てそうな弱い相手だけを選んで、全力で立ち向かいましょう。
参考文献
実践例
あなた自身が一人で経営する、中学生向けの個人学習塾の出店をどこにするべきかで悩んでいたとします。
その場合は都心の駅近くではなく、郊外の地域に出店するべきです。
なぜならば、都心には強い競合他社がひしめき合っているからです。
もしあなたが郊外の地域に住んでいたとすれば、出来るだけ自宅から近い場所で、大手学習塾が出店していないエリアに出店するべきです。
なぜなら個人事業主にとって通勤時間は無駄であり、ライバルが強い相手と戦うべきではないからです。
また、なおかつ、さびれた小さな学習塾の近くを狙って、学習塾を出店するのも良いでしょう。
そうすることで、すでに通学している生徒を、まとめて奪える可能性が出てきます。
ランチェスター戦略と同様に、弱い敵を選んで戦う孫子の兵法について、詳細はこちらの記事をご覧ください。

森岡毅の経営戦略「知恵を絞れば資源は増える」
一見すると不利な状況のように思えても、実は有利な状況であったというのは往々にしてあります。
資源というのは意識するしないによって、増えたり減ったりします。
例えば自分が住んでいる家の周辺地域(=飛び込み営業 第一優先地域)であったり、事務所や会社までの通勤のルート(=飛び込み営業 第二優先地域)はあなたの武器となります。
また、過去の学生時代の友人・知人、前職の同僚、親族縁者、あらゆる面で自分が持っている資源に意識を向けましょう。
自分に備わっている資源に意識を向け、知恵を絞ることで資源は増えていきます。
参考文献
Amazon.co.jp「経営資源はあなた次第で増えたり減ったりする」の項参照
実践例
あなたが前述の中学生向けの個人学習塾の出店をしたばかりの時期に、顧客である生徒を集めるためにどうするべきかで悩んでいたとします。
多くの経営者が勘違いしていることですが、周りの人はあなたが起業したことなど何の興味もありません。
放っておけば周辺地域の住民が自分の店を見つけてくれ、自分が起業した後は顧客が自動的に増えていくと勘違いしている経営者は多いです。
しかし現実はそう甘くはありませんので、「顧客を増やすため考えつくことは何でもする」というぐらいの強い意気込みが必要です。
例えば個人学習塾であれば、まず周辺地域に住んでいる若い世帯の新規開拓を飛び込み営業で行いましょう。
次に、自分の学生時代からの友人・知人をひとり一人実際に会いに行ったり電話をして、学習塾を始めたということを報告しましょう。
またFacebook や Instagram 、Twitterなどの SNS を使って自分は学生塾を経営してるということを世間に報告しましょう。
前職の同僚・親族にも自分が中学生向けの個人学習塾を経営していることを伝えましょう。
出品したばかりの初期の頃は、生徒の数が少ないので講義をする時間よりも新規開拓する時間の方が長いと思われますが、学習塾の授業がない時間帯にやるべきことは顧客を集めることです。
中学生向けの講義の準備をする時間は最小限にとどめ、まずは顧客を集めるために周辺地域を飛び込み続けます。
どんな商売であれ、まずは顧客を増やすことが最重要課題であり、最も難しい作業になります。
マイケル・ポーターの競争戦略論「組織が小さい方が利益率が高いので、規模拡大は避ける」
中小企業の利点は、規模が小さいので利益率が高いという点です。
組織というのは拡大するほど利益率が下がっていく傾向があります。
規模の経済はある程度まで働きますが、一定以上に達したところで規模の経済を得ることはできなくなります。
世界的なマーケティングの権威である、ハーバード大学 経営大学院のマイケル・ポーター教授も、『利益を生まない規模拡大や成長には、何の意味もない』と主張しています。
出典
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規模の経済というのはわかりやすい言葉で言うと「まとめ買いをすれば安くなる」という仕組みです。
事例1
例えばあなたがフリマアプリ「メルカリ」で本を一冊ずつ購入すると送料が購入するたびにかかりますが、本10冊をまとめ買いすれば送料が一回分で済みます。
つまり、規模の経済が働いたことで、割安に本を手に入れることができます。
しかし必要な本が10冊ではなく500冊だったらどうでしょうか。
500冊も扱っている個人はいないだろうから、直接卸業者に発注する必要性がでてきます。
予定していたよりも納期が先になってしまったり、予算がオーバーしてしまう可能性もあります。
つまり規模が拡大することで、余計な問題が発生して時間もお金も余分にかかります。
事例2
事業の規模が大きくなると利益率が低下するということを、別の例で説明します。
あなたが不動産賃貸の会社を経営していたとします。
会社の従業員が5人しかいない場合は社長の目が行き届くので、会社の備品として無駄なものを購入することが少く、利益率も高いはずです。
一方で、従業員が500人いる場合は、社長が想定できないような問題が発生して利益率が下がります。
例えば従業員に500台のパソコンを配布する場合、パソコンや備品を誤って多く発注してしまったり、突然の大量の離職者が出てせっかく購入したパソコンが無駄になってしまったりします。
つまり、従業員が数名しかいなかった頃には発生しなかった経費がかかるようになります。
このように規模を拡大することで、メリットよりもむしろデメリットの方が生じてしまいます。
例えば人が多いということは、それだけ人間関係が問題を起こしやすいので単純に考えて、その維持コストを考えただけでもデメリットです。
他にも新しい機器を導入する時や、新しい制度を導入する時にも、変化に対応しにくくなってしまいます。
そのため、中小企業は小さいということが、逆にメリットであるということも理解しましょう。
まとめ
中小企業は強い敵との戦いは避け、弱い敵とだけ戦うようにしましょう。
そうすることで自分に与えられるダメージも少ないことを利用し、連戦を繰り返してくこともできます。
知恵を絞ることで資源は増えていきます。
そのため個々の状況ごとに細分化して考え、自分の過去の人脈や住んでいる地域などに意識を向けてみましょう。
規模の経済はある程度まで働きますが、一定以上に達したところで規模の経済を得ることはできなくなります。
中小企業は事業の規模拡大を避けて、利益率を優先しましょう。
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