若年者雇用の現状と課題について知りたいですか?
2020年6月18日に厚生労働省の「今後の若年者雇用に関する研究会」資料が公表されました。
新型コロナによる経済への悪影響で、就職・転職について不安な若者も多いはずです。
そこで日本の若年者雇用の現状と課題をご紹介!
若年者雇用の現状と課題
今後の若年者雇用に関する研究会資料には以下のような記載があります。
○ 若年者雇用の現状と課題
■ 若者の数・比率とも減少の方向性であるが、現在の雇用状況を見ると、2007年に比べると、一部で大幅な改善も認められる。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
まず、日本の若者の数や比率が減少傾向にあるということです。しかしながら雇用状況としては2007年と比べれば一部で大幅に改善しているとのことです。どのような点で改善しているのかという点について、詳しく見ていきましょう。
若者の数や比率は減少傾向にあるのは、出生率が低下したことが原因であり、日本全体の人口も減りつつあります。少子化についてはこちらの記事をご参照ください。
若者の完全失業率
若者の数や比率が減っているにもかかわらず、2020年の雇用状況を見てみると2007年に比べて一部で大幅な改善も見られるとのことです。様々な若年層の労働環境における取り組みが功を奏したとの印象感じますが、以下の文言について私は個人的にいささか疑問を感じてしまいます。
■ 完全失業率は、15~24歳層は、平成22年9.4%から令和元年3.8%と大幅に改善している。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
平成22年は西暦で言うと2010年ですが、若者だけではなく全年齢層の完全失業率の推移は以下の通りです。
(出典)
上記のグラフを見てみると、2010年は完全失業率が約5%だったのに対し、2019年はその半分の約2.5%程度に下がっています。これはもちろん若年層の完全失業率が大幅に下がっていることを指していますが、全体の完全失業率も大幅に下がっています。したがって、もしかしたら厚生労働省が言うように、必ずしも若年層の完全失業率が「大幅に改善している」とは言えないかもしれません。。。
フリーターが若年層に占める割合
■ フリーターについては、若年層人口(15~34歳人口)に占める割合は、平成22年の6.4%から令和元年の5.5%と大きな減少が見られない。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
フリーターが若年層人口に占める割合は、2010年も2019年も大きな変化は見られないとのことです。つまり若年層において、いつの世にもフリーターは一定数存在し続けることを指しているのでしょう。
25~34歳の不本意非正規労働者割合が他の年齢層に比べ突出して高いこと、高校や大学等を中退した場合には、離職直後にアルバイト・パートで就業する割合及びその後も非正規雇用である者の割合、無業となる者の割合が卒業者に比べて突出して高いといった状況も認められる。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
25歳から34歳の若者は、本人が意図せず非正規雇用に甘んじてしまっている割合が、他の年齢層に比べて突出して高いと指摘しています。具体的には大学を卒業しているにもかかわらず就職活動が思うようにうまくいかず、例えば
- アルバイトや
- パートや
- 派遣社員
として労働している人が多いということです。今は昔と比べて大学を選ばなければどこでも進学することができる時代です。従ってなんとなく大学に行ってはみたものの、なかなかやりたいことが見つからずに就職活動も中途半端に終わってしまった、という若者が多いのかもしれません。
■ 改善している指標も見られるものの、いまだに十分な改善が認められない状況もある。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
前述の通り若者の完全失業率は、全年齢の完全失業率と比較して大幅に改善されているとは言えません。そのため、2010年と2019年若年者雇用の現状は、たしかに良くなったけど、他の年齢層も上がっているからもっと改善の余地があると言えるかもしれません。
若者雇用促進法の施策はうまくいってるのかどうか?
次に若者の雇用を促進する施策が、うまくいってるのかどうかについて見ていきましょう。
厚生労働省によると若者の雇用促進について以下のように説明されています。
○ 若者雇用促進法の施行状況の評価について
<青少年雇用情報の提供>
施行状況や関係者の意見を踏まえると、現時点において、青少年雇用情報の提供について、法的義務の強化を行うことや、施行規則に基づく提供項目を追加する必要性は低いと考えられる。
運用面においては、青少年雇用情報を提供することが新規学卒求職者のみならず、募集する求人者にとっても応募が集まる等のメリットがあることなどの周知が十分ではないことが課題。
(出典:厚生労働省「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」)
上記の説明はとても分かりにくいです。要するに、若者の雇用がどうなっているのかを分析するためには正しい情報が不可欠です。しかし法律で義務化するような強制力を持たせたところで、若者の雇用状況を正確に把握することにはつながらない、ということでしょう。若者の雇用状況を正しく政府に報告することによって新卒も第二新卒の応募者が集まるから、企業にとってもいいことづくめですよ。だから、正しい若者の雇用状況を、企業が政府に報告してもらうようにするためにはどうすべきかが今後の課題だと言っています。
若者雇用促進法とは
そもそも、ここに出てくる「若者雇用促進法」とは何なのかについて説明します。若者雇用促進法とは、以下のような意味になります。
若者の雇用の促進等を図り、その能力を有効に発揮できる環境を整備するため、若者の適職の選択並びに職業能力の開発及び向上に関する措置等を総合的に講ずる「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律」が、平成27年9月18日に公布され、同年10月1日から順次施行されている。
(出典:厚生労働省)
これだけだとよくわからないので、さらに詳しく説明します。
若者雇用促進法の主な内容
若者雇用促進法の主な内容は以下の通りです。
- 職場情報の積極的な提供
- ハローワークにおける求人不受理
- ユースエール認定制度
職場情報の積極的な提供
まず一つ目の「職場情報の積極的な提供」というのは、新卒段階でのミスマッチによる早期離職を解消するためのものです。具体的には、若者が充実した職業人生を歩んでいくため、企業側が若者に対し労働条件を的確に伝えることに加えて、若者雇用促進法において、平均勤続年数や研修の有無及び内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供する仕組みのことです。
ハローワークにおける求人不受理
そして二つ目のハローワークにおける求人不受理というのは、ハローワークにおいて、一定の労働関係法令違反があった事業所を、新卒者などに紹介することのないよう、こうした事業所の新卒求人を一定期間受け付けない仕組みのことを指します。 例えば
- 最低賃金法を無視していたり、
- 違法な長時間労働を従業員に強制させていたり
した場合にこれに該当します。したがって若者にそのようなブラック企業を紹介しないようにするということです。
ユースエール認定制度
最後に三つ目のユースエール認定制度というのは、 若者雇用促進法において、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業に与える称号のようなもので、厚生労働大臣が 「ユースエール認定企業」として認定する制度となっています。ユースエール認定企業になった場合のメリットは、
- ハローワーク等によるマッチング支援、
- 助成金の優遇措置、
- 日本政策金融公庫による低利融資
などを受けることができます。
その具体的な認定基準として、例えば以下に挙げるような三つの条件等を満たしている必要があります。
- 若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
- 直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下
- 前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)について公表している
一つ目の、若者採用と人材育成に積極的に取り組む企業、というのは少し曖昧な表現です。
しかし二つ目の直近3年以内のなどの正社員離職率2割というのは厳しい基準と言えます。
最後の三つ目に挙げられている項目を全て公表してしまうと、ブラック企業であることがばれてしまうので若者が寄ってこないと言う中小企業は多いかもしれません。
ハローワークによるブラック企業紹介の排除とユースエール認定制度の改善の余地
次に「第6回 今後の若年者雇用に関する研究会資料」によると、以下のように説明があります。
<学校卒業見込者等求人の不受理>
学校卒業見込者等求人の不受理について新たな措置を講じる必要性は低いものと考えられる。
<ユースエール認定制度>
法に定める企業規模要件(常時雇用する労働者300人以下)を維持したまま、引き続き中小企業の人材確保に資する仕組みとして活用するべきであるが、認定基準等については、より効果的な運用のための工夫の余地があると考えられる。
要するに学校卒業見込みである学生に対し、ハローワークが最低賃金法無視の企業や長時間労働を強制するようなブラック企業を紹介しないようにするために、追加措置を講じる必要ないだろうと言っています。
また、中小企業の人材確保に役立てるために、ルールを遵守する優等生に与えられる特権のようなユースエール認定制度を活用するべきだけど、認定基準については改善の余地があると言っています。もしかしたら前述の通り、新入社員の正社員離職率が20%以下という基準が厳しすぎるから、なかなかユースエール認定がされない、といった理由があるのかもしれません。
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