ベストセラー書籍「2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ」の著者ピーター・ディアマンディスが予測するのは、量子コンピューティングによる、指数関数的なテクノロジーの進歩です。
既に「ムーアの法則」の進歩スピードは鈍化してきており、次はローズの法則がくるという点や発達の例をご紹介!
指数関数的なテクノロジーの6つの成長サイクルとして、デジタル化、潜行、破壊、非収益化、非物質化、大衆化を学びたい方必見!
2030年の未来の移動手段として、自動運転・空飛ぶ車・ハイパーループについて知りたい方は「①【書評】2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ【自動運転・空飛ぶ車・ハイパーループ】」の記事をご参照ください。
また、人工知能の進化過程については「③【書評】2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ【人工知能の5つの進化過程】」の記事をご参照ください。
【2030年】量子コンピューティングが台頭しムーアの法則が終わる
2030年までには、指数関数的なテクノロジーの進歩が見込まれています。
具体的に言うと量子コンピューティングが台頭して、ムーアの法則が終わりを告げるのです。量子コンピューティングやムーアの法則といった専門用語がわからない人も大丈夫です。これら専門用語を分かりやすく説明すると、データ処理能力は毎年2倍ずつに成長していくという意味です。
まず、Wikipedia によると、ムーアの法則の意味は以下の通りです。
ムーアの法則(ムーアのほうそく、英: Moore’s law)とは、大規模集積回路(LSI IC)の製造・生産における長期傾向について論じた1つの指標であり、経験則に類する将来予測である。発表当時フェアチャイルドセミコンダクターに所属しており後に米インテル社の創業者のひとりとなるゴードン・ムーアが1965年に自らの論文上に示したのが最初であり、その後、関連産業界を中心に広まった。
つまりムーアの法則とは将来予測のことであり、アメリカのインテルは CPU を製造している会社です。
ムーアの法則について、もう少し詳しく理解したい方はこちらの動画をどうぞ。
私たちを取り巻く生活の進歩を具体的に説明すると、2021年現在私たちの生活は60年にわたって継続したコンピューター性能の向上によるムーアの法則の波に乗っています。この波の大きさの指標となるのがトランジスタ性能です。 FLOPSと言う単位で表現されているようです。
FLOPS(フロップス、Floating-point Operations Per Second)はコンピュータの性能指標の一つ。
1956年当時のコンピューターの処理能力は1万FLOPS だったようですが、2015年には1000兆のFLOPS に増えました。 1万から100兆まで処理能力が増えたと聞いて、あまりの増加速度にいまいちピンとこないほどですね。このような飛躍的なコンピューター性能の向上は、私達のテクノロジー進歩の最も大きな推進力です。
コンピューターの大きさは、大規模施設にある大きなコンピューターから家庭用デスクトップパソコンからノートパソコンへ、さらにはスマートフォンへどんどん小型化し、処理能力もUPしてきています。
それは上記のようなムーアの法則によるコンピューター性能の向上によるところが大きいです。
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既に「ムーアの法則」の進歩スピードは鈍化してきている
しかしながら私達のテクノロジーの進歩を支えてきたムーアの法則は、最近は何とそのスピードが鈍化してきてしまいました。 どうしてムーアの法則が今までのようにコンピューター性能の向上に寄与していないかと言うと、それは物理的なものが原因です。
その物理的な原因というのは具体的に説明すると、コンピューターの集積回路の性能向上は、トランジスタ同士の間隔を狭めてチップ1枚あたりに載せることができる数を増加させることで実現してきました。
例えば1971年にはトランジスタ同士の距離は10000nm(ナノメートル) でしたが2000年には約10nm になっていました。そして2021年の現在は5nm に近づきつつあります。 これが問題で5 nm に近づいてしまうと小さすぎて電子が飛び移るようになってしまうことで、演算能力が阻害されてしまうとのことです。これがトランジスタの数を増加させることを困難にしてしまっておりその結果、ムーアの法則は終焉してしまうとのことです。
なるほど、もうムーアの法則が当てはまらないのであればテクノロジー業界はこれ以上進歩しないのでしょうか?今までの生活の向上がいわば「奇跡の時代」であってこれからはスマートフォンは小型化することもないし、AIが便利になることもないのでしょうか?もちろんそんなことはありません!なぜなら過去の歴史がそのことを示しているしているからです。
ローズの法則(=ムーアの法則のパワーアップ版)
具体的に言うと、2002年に初期の量子コンピューター会社 D WAVE 創業者のジョルディローズは、ローズの法則を提唱をしました。
ローズの法則というのは、ムーアの法則のパワーアップ版のことで、内容は同じようなものです。量子コンピューターの量子ドットの数は、毎年倍増するというのがローズの法則です。 でもローズの法則は、ムーアの法則のパワーアップバージョンと言われており、スーパーポジションの量子ビットの能力はトランジスタのバイナリビットとは比較にならないと言います。
たくさんの専門用語が出てくるので、エンジニア以外の素人にはよくわからなくなり混乱してしまうかもしれません。しかし、とにかくムーアの法則が終了しても、次は量子版のムーアの法則(=ローズの法則)が出てくるので、今後も同様にテクノロジー業界は発展を続けていくとのことです。
ローズの法則と量子コンピューティングの発達の例
ではムーアの法則の次の量子バージョン、ローズの法則が幅を利かせるようになるならば、量子コンピューター市場はどのように変わっていくのでしょうか?具体的に説明します。
例えば量子コンピューティングが発達していった場合に、手のひらサイズの iPod の中に5000万曲を保存できるようになるといいます。
しかしさらに量子コンピューティングの技術を向上させていくと、どんなイノベーションが起こるのかまともな想像すら出来ないほどデータを保存できるようになるとのことです。 つまり、化学と物理学は量子ビットのコンピューティングが実現する際に、新たな材料や化学物質、薬品などを通じて様々な大革命が起こる可能性を秘めています。 人工知能が強化されてサイバーセキュリティもパワーアップして、ものすごく複雑なシステムがシュミレーションできるになるので、革命が起こるとのことです。 スタートアップ企業であるRigettiの創業者でCEOのChad Rigetti(チャド・リゲッティ)さんは以下のように説明しています。
量子コンピューティングによって研究開発の経済性が一変する!だから例えばがん治療薬を研究するのであれば、大規模な研究所を作って試験管の中で何十万種類もの化合物の性質を調べることが不要になる! なぜなら、その代わりにコンピューター上のシュミレーションで済ませることができるようになるからだ!
チャド・リゲッティさんの量子コンピューティングに関する主張について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
医療分野に関する量子コンピューティングの進歩はすごいです。例えば、かつては研究する施設代として土地や建物にお金を払っていたのが、これからは研究所のスペースが不要になり、全部パソコン上で行うことができるようになるということです。
このままいけば、いずれは「この世に治せない病気はない」などと言えるほど医療技術の進歩が見込まれる可能性もありますね。その結果、寿命がどんどん伸びていくので、老後の貯蓄も必要性が増すでしょう。
近年話題になっている Fire を実現する人が増えていますが、ローズの法則を踏まえた上で医療技術が進歩し、寿命の更なる上昇も視野に入れて老後の貯蓄をする必要がありそうです。 Fire について、詳しくは「【書評まとめ】FIRE最強の早期リタイア術【逃げ切り型人生を送る方法】」の記事をご覧ください。
【2030年】量子コンピューティングによる指数関数的なテクノロジーの発達【6つの段階】
ここまで説明してきた量子コンピューティングによりテクノロジーが発達することを、指数関数的なテクノロジーの成長と呼びます。
指数関数的なテクノロジーの成長サイクルは以下の6つのステージがあります。この六つの成長サイクルはとても重要なのでぜひ暗記しておきましょう。
指数関数的なテクノロジーの成長サイクル
- デジタル化
- 潜行
- 破壊
- 非収益化
- 非物質化
- 大衆化
それぞれの指数関数的なテクノロジーの発達の重要な段階であり、とてつもない混乱とチャンスを生み出します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
デジタル化
指数関数的なテクノロジーの発達の第1段階目はデジタル化です。
一つのテクノロジーがデジタル化されるということは、1と0のバイナリコードに転換できるようになるということです。ちなみにバイナリコードの意味は以下の通りです。
バイナリコード (binary code)とは、人間が作ったプログラムをコンピュータが理解できる二進数のデータに翻訳したものをいう。 バイナリコードは、実行形式のプログラムのことである。 ソースコードを機械語もしくはオブジェクトコードに変換したものをいう。
つまりデジタル化によって、ムーアの法則に則った指数関数的な加速がスタートするということです。ムーアの法則がスタートしたら、その後にすぐ量子コンピューティングによってローズの法則に当てはめた、さらに加速度的な成長が始まるでしょう。
潜行
その次の段階は潜行です。
指数関数的なテクノロジーは最初に出てくると非常に大きな注目を浴びます。 潜行の初期の進歩はゆっくりです。例えば、曲線状に描いてみると、わずかな量が2倍ずつになるペースで成長したとしても、最初の方の数回は1.0パーセント以下の増加にとどまるでしょう。 つまりスタートしてから、ある一定期間は世の中の期待に応えられない状態が続くということです。
例えばビットコインが仮想通貨として登場した初期の頃を考えてみてください。
その当時はマニアの中での新しいおもちゃとして捉えられてきました。あるいは違法な薬物をインターネット上で売買するための手段と捉えられていたのです。しかしこれは潜行ステージの典型例であり、ここから爆発的な成長が生まれました。参考として、2015年11月20日から2021年2月5日までのビットコインの価格の推移は以下の通りです。
2015年時点では1ビットコインあたり4万円だったのが、2021年では400万円以上になっています。これが潜行ステージです。
破壊
次の段階は破壊です。指数関数的なテクノロジーの進歩は真の意味で世界に影響を与えるのはこの段階からです。例えば既存の製品やサービス市場や産業を壊していってしまいます。1つの例が3 D プリンティングです。3 D プリンターという、たったひとつの指数関数的なテクノロジーが、10兆ドル規模の製造業を破壊しようとしています。3 D プリンターとはどんな感じなのかは以下の動画をご覧ください。
3 D プリンターの登場によって、様々な工業機器の部品を作る工程がかなり省けるようです。
非収益化
次の段階は非収益化です。今までは商品やサービスに費やされていた費用が丸ごと消滅してしまうステージです。
非収益化が行われた業界の具体例を挙げると写真業界です。
今まで写真は高額なものであり、フィルムを現像するためにはお金がかかっていました。 かつては、すべての消費者は限定された枚数の写真しか撮りませんでした。しかし写真がスマートフォンで撮影するというデジタル化が行われた結果、 写真に伴うコストはほぼ100%消滅しました。
さらに Google フォトの出現によって保存容量すら気にする必要はなくなりました。
2021年の現在では誰もがコストなどほとんど考えずに写真を撮影するようになりました。むしろ写真を撮影しすぎたせいで、どの写真が重要であるのかを選ぶのが難しくなりました。(2021年から Google フォトが無制限のアップロードを停止すると発表しました。しかし保存容量の大半を食うのは動画であり、写真が消費するストレージは大したことありません。従って、実質的には写真については無料、あるいは毎月数百円払うだけでほぼ無制限で保存できると考えて良いでしょう。)
非物質化
次の段階は非物質化です。以前まで私たちの身の回りの生活の中にあったものが、まるで魔法のように消えてしまいます。非物質化とは、商品そのものが無くなってしまうことを指します。例えばフィルムを現像するタイプのカメラ、ステレオやテレビゲーム機、テレビや GPS システム、あるいは計算機・そろばんや紙、さらに伝統的な結婚紹介業者などです。
今までは独立した製品やサービスとして存在していました。しかしこれらの機能が、2021年の現時点ではすべてのスマートフォンにデフォルトで装備されるようになりました。例えば分厚い百科事典を家の棚に飾ってある家庭は、今はほぼ消滅したと言えるでしょう。なぜならフリー百科事典の Wikipedia によって、分厚い百科事典は駆逐されたからです。また iTunes や Spotify の出現によって、 CD ショップ店も消滅したと言えるでしょう。 これらの流れが非物質化の例です。
大衆化
最後に大衆化です。 指数関数的なテクノロジーはさらに拡大し、一般層に広がるステージです。携帯電話はかつては500 ml のペットボトルよりも大きく、非常に限られた一部の富裕層だけが手にしていました。
しかし2021年の現在において日本人の大多数の人々が小型の携帯電話を1台は所有しており、世界中でもスマートフォンが一切存在しない地域を探すのは困難です。
以上、ここまで説明してきた六つの指数関数的なテクノロジーの進歩を覚えることで、身の回りの製品がどの段階にあるのかが感覚的にわかるようになるでしょう。是非これら6つのステージを暗記して、当てはめることで未来を予測してみると楽しいです。
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