【長寿遺伝子を働かせる】断食・運動・過酷な環境・薬【LIFESPAN書評】

LIFESPAN(ライフスパン) 健康経営戦略
【長寿(サーチュイン)遺伝子を働かせる方法】LIFESPAN【書評】
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長寿(サーチュイン)遺伝子を今すぐ働かせる方法を知りたいですか?

ベストセラー書籍LIFESPANで紹介されている、断食や運動、体を冷やす、サウナに入る等の過酷な環境に身を置くという方法を踏まえ、薬物により長寿遺伝子を働かせることができる方法を説明します。

[デビッド・A・シンクレア, マシュー・D・ラプラント, 梶山 あゆみ]のLIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界


 

具体的な断食の方法や期間、効果を学びたい方必見!

2030年の未来予測に興味がある方はこちらの記事も併せてご覧ください。

 

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長寿遺伝子(サーチュイン)を働かせる方法

長寿遺伝子のことをサーチュイン遺伝子と言います。

サーチュイン遺伝子を働かせるためには、大きく分けて2つの方法があります。

一つ目の方法は過酷な環境に身を置くこと 。二つ目の方法は薬を服用することです。それぞれ具体的に見ていきましょう。

過酷な環境に身を置く

長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を働かせるための一つ目の方法は、過酷な環境に身を置くことです。過酷な環境に身を置くことにより、人間の奥底に備わっているサーチュイン遺伝子の力を引き出すことができます。長寿遺伝子の力を働かせることによって人は若返ることができ、あらゆる身体能力が若い頃の状態に戻ります。 過酷な環境とは具体的にどのような状態を指すのかというと、大きく分けると三つあります。

一つ目は断食をすること、二つ目は運動をすること、三つ目は体を冷やす(温める)ことです。これら三つを実践することで、サーチュイン遺伝子を存分に働かせることは可能になります。これら三つを具体的に見ていきましょう。

断食

長寿遺伝子(サーチュイン)を働かせるための一つ目の方法は断食です。

空腹のイラスト(女性)

断食をすることで人は長く健康を保つことができ寿命最大限伸ばすための間違いなく確実な方法であると、ベストセラー書籍LIFESPANの著者である、ハーバード大学院の遺伝学教授のデイヴィッドシンクレアが以下のように主張しています。

間違いなく確実な方法─ ─ 食べる 量 を 減ら せ

私は約25年にわたって老化を研究し、何千本という学論文を読んできた。そんな私にできるアドバイスが1つあるとすれば「食事の量や回数を減らせ」である。 長く健康を保ち、寿命を最大限に伸ばしたいなら、それが今すぐ実行できて、しかも確実な方法だ。

出典

デビッド・A・シンクレア; マシュー・D・ラプラント. LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 (Kindle の位置No.3153). 東洋経済新報社.Kindle版.

食べる量減らすということはお金がなくてもできるしすぐ実践できます。長寿遺伝子を働かせるための方法が、誰でもすぐ実践できる食事に関するものであるという点は喜ぶべきことですね。

多くの人が犯しがちな過ちとしては、何を食べればいいのかにばかり気を取られてしまい、どう食べるのかについては無頓着な人が多いでしょう。例えば寿命を伸ばそうと思って、スーパーマーケットでどれだけ体に良さそうな有機栽培の食品を高額なお金を払って購入したとしても、食べ過ぎてしまえば逆効果です。だから何を食べればいいのかではなくどう食べるべきかに注意しましょう。そうすればあなたの寿命は延びる可能性があります。

断食をすることで健康になる根拠が確実ではない理由

断食をすることで健康になる根拠が確実ではない理由は、人に対して断食の大規模な実験をすることができないからです。

これは当然のことであり、ラットと違って、人間に対して食事を与えない実験を長期間にわたって行うことは、倫理的にどうかと言う問題からきています。

従って、断食をすることで人間が健康で長寿になる根拠は、100%確実なものが得られていません。デイヴィッドシンクレアも断食実験について以下のように説明しています。

何の制約もなく暮らしている人間に対してこうした研究実施することには、倫理面及び方法論の面で問題を伴う

デビッド・A・シンクレア; マシュー・D・ラプラント. LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 (Kindle の位置No.3250). 東洋経済新報社.Kindle版.

従って人体実験を通して、断食をすることで100%健康になるという根拠を得ることは難しいでしょう。

断食による健康改善・長寿化の効果

しかし断食の実験を試みたり、偶然断食の実験になったような事例はあります。デヴィッドシンクレアは以下に挙げるような実験結果を引用してそのように言っています。

2017年の『 ジャーナル・オブ・ジェロントロジー』誌に掲載された論文によると、デューク大学の研究チームが145人の成人を対象に一般に推奨されるカロリー摂取量より25%少ない食生活を続けてもらおうとした。だが、人間はマウスのようにはいかず、実際に達成されたカロリー制限は2年間で平均12%ほどに留まった。ところがそれでも十分な成果が得られた。被験者の健康状態は著しく改善したのである。また血液のバイオマーカー(生体指標)からは生物学的な老化のペースが落ちていることも確認された。

デビッド・A・シンクレア; マシュー・D・ラプラント. LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 (Kindle の位置No.3250). 東洋経済新報社.Kindle版.

つまりマウスと同様に人間に対しても2年間にわたり断食の実験を行いました。当初は25%カロリー制限をしようとしたのですが、12%程度の制限しかできず断食の実験としては完全にうまくいったわけではありませんでした。しかし断食の実験で目標とする半分程度のカロリー制限しかできなかったにも関わらず、断食の実験を受けた被験者は健康状態が著しく良くなったということです。

健康診断の結果を見ている中年男性のイラスト(笑顔)

さらに血液検査の結果、老化のペースも落ちていることが確認されたとのことなので、断食が健康状態を良好にする可能性は高いです。

さらに、もしこの実験においてカロリー制限を25%続けていたら、より劇的な健康状態の改善がもたらされたことでしょう。例えば、老化のペースが落ちるだけではなく老化が逆戻りする、つまり若返る可能性もあるでしょう。そう考えると人間がいかに食事を摂取しすぎているのかが理解できます。 

 このような実験結果から、断食をすることで人は健康になるとデイヴィッドシンクレアは主張しています。

断食の効果

では断食によって具体的にどのくらいの効果が得られるのかと言うと、人は120歳ぐらいまで生きられる可能性があります。

福禄寿のイラスト(七福神)

というのも、人間のいとこにあたる、アカゲザルを用いた実験がそう指し示しているからです。

新年の挨拶のイラスト(猿・ペア)

デイヴィッドシンクレアの著書によると以下の通りです。

1980年代からアカゲザルを用いた長期間のカロリー制限研究は行われ、そこからは実に説得力のある結果が得られている。 アカゲザルは遺伝的に見て人の従兄弟にあたり、それまでに知られていた最大寿命は40歳だった。 ところが、この研究でカロリー制限をした20頭のうち、6頭がその年齢に達した。人間で言えば大体120歳である。

しかも、カロリー制限食を一生続けなくてもそれだけの効果があらわれた。 一部の猿については、30%のカロリー制限を始めたのが中年になってからだったのに、それでも十分だったのである。

出典

デビッド・A・シンクレア; マシュー・D・ラプラント. LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 (Kindle の位置No.3277). 東洋経済新報社.Kindle版.

この主張を噛み砕いて理解すると、まずアカゲザルは遺伝学的に人間と似ているということです。そのアカゲザルが最大の寿命は40歳であったにも関わらず、カロリー制限を行ったアカゲザル20頭のうち6頭、つまり全体の30%のアカゲザルが40歳まで生存したということです。このアカゲザルが四十歳まで生きるということは、人間に例えると120歳まで生きるのと同じようなものだと言います。これは驚くべき結果です!

別の例えで言うと、例えばある一定のトレーニングを行うことによって、オリンピックの世界記録を達成する人が続出するようなものであり、普通で考えたらありえないことです。それなのにカロリー制限を行うことで実現したのです。つまり人間に対しても赤毛猿に対するカロリー制限と同様の実験を行えば長寿になる可能性が期待できます。

しかもアカゲザルの場合は30%のカロリー制限をスタートしたのが中年になってから出会ったにもかかわらずアカゲザルの最高記録である40歳まで生きたということです。

ここからわかることは、人間についても断食を始めるのが遅すぎるということはなく、例えば五十歳・六十歳の中年になってからでも120歳までの長寿を目指すことは十分間に合うということです。

しかし本書によると人間であれば四十歳を過ぎた頃から健康状態が下り坂に差し掛かるので四十歳ぐらいからスタートすることを以下のように勧めています。

こうした動物実験から判断する限り、カロリー制限で長寿効果を得るのに「年齢の上限」のようなものはなさそうだ。ただし、始めるなら遅いより早いほうがいいようである。人間なら40歳を過ぎたあたりだろうか。分子レベルで見た場合、下り坂に差し掛かるのがこの頃だからだ。

出典

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3291-3294).東洋経済新報社.Kindle版.

しかしもちろん、50歳であれ60歳であれ、断食が健康に良いということを学んだら即実践されることをお勧めします。

断食をする方法

断食をする具体的な方法について説明します。

断食は体にいいのは理解できたと思いますが、具体的にどのように断食をすればいいのか知っておいた方が良いでしょう。

断食のタイミングは 不規則(間欠的)でOK

断食をする方法を一言で述べると、1日3食食べている人であれば1日2食にすることで大きな効果が得られるはずです。

前述のアカゲザルの実験でも、30%のカロリー制限で過去最高記録の寿命に達したとの記述があります。 つまり1日3食食べている人であれば、単純計算で、一食を抜くことによって約33%のカロリー制限ができるようになります。しかし、カロリー制限としてはこれで十分でしょう。あまり過剰にカロリー摂取制限をしすぎると、健康に良くない可能性もあるし、長続きしないでしょう。

お菓子を我慢する人のイラスト(男性)

例えば一日一食の食事で、尚且つその食事ですらカロリーを大幅に制限した場合、もしかしたら10年後には寿命が延びているかもしれませんが、食事を制限することによるストレスも多大なものになる可能性も出てきます。そのため断食は1日あたり一食抜く程度に留めておくべきです。

また、朝昼夕のどの食事を抜くのかについてですが、もちろん一食抜きさえすればどの食事を抜くとしても同じことです。

例えば朝食を抜いて昼食と夕食だけにするだけで、サーチュイン遺伝子を働かせ長寿に近づくことは可能です。また1ヶ月のうち3週間は通常通り1日3食を摂取し、一週間だけは断食をするなどといった不規則(間欠的)な断食でも OK です。デイヴィッドシンクレアの著書によると以下の通りです。 

いずれはこうした様々なやり方のなかから、とくに効果の高いものが突き止められていくだろう。現時点で人気のある方法には、朝食を抜いて遅い昼食をとるもの(「16:8ダイエット」)や、週に2日はカロリーを75%に減らすもの(「5:2ダイエット」)がある。もう少し挑戦したいなら、週に2~3日は食物をいっさい摂らない(「イート・ストップ・イート法」)のもいい。あるいは、健康問題の権威であるピーター・アッティア医師が実践しているように、毎月丸々1週間を空腹で過ごしてもいい。各種モデルを組み合わせることで寿命の向上や健康の増進を図ろうという研究も、現在は動物を対象に実施されている。よくよくは人間でも始まるだろう。

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3380-3386).東洋経済新報社.Kindle版.

一日一食を抜くのが嫌であれば、不規則に食事を抜くタイミングを選ぶことができるというのは助かりますね。確かに事前に食事を抜こうと考えていたにも関わらず、どうしても友人からの誘いを断りきれずに食事を取ってしまうような場面は多々ありそうです。そのような時に上記の不規則な断食のタイミングでも OK であるということを思い出すと良いでしょう。

断食を行う期間

断食を行う期間はどのくらいもうければ良いのでしょうか?

何も書かれていないカレンダーのイラスト

ここで言う断食を行う期間というのは例えば1ヶ月の間で、20日間以上のカロリー制限を行うと効果がでるのか、あるいは5日間だけカロリー制限を行うと効果がでるのかということです。 もし前者であれば、ほぼ毎日カロリー制限を続けなければいけないことになるので、仕事で外泊することが多い人にとっては、食生活のコントロールが難しくなってしまいそうです。その結果途中で断食を挫折してしまう人も出てくるかもしれません。

しかし朗報です。断食の期間が短くても十分に効果が現れるようです。具体的に言うと以下の研究結果の通りです。 

現在では人間を対象にした研究から、カロリーをときおり制限すると多大な健康効果が得られることが裏づけられている。カロリー制限の期間がかなり短くても問題はない。たとえばある研究では、被験者は通常の食事をとりながら、月に5日だけカロリーを大幅に制限した。その5日間に口にしたのは、野菜スープ、エナジーバー、サプリメントくらいなものである。すると、この間欠的な「疑似的断食」を続けた被験者には、いくつもの健康効果が現われた。

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3331-3332).東洋経済新報社.Kindle版.

つまるところ、とにかく短期間で構わないので食事を抜くことにより、人は健康になり、さらには長寿にもなるということです。

これらの研究結果から私個人が思うこととしては、確かに100歳を超える人であれば、必ずしも体に良い食べ物ばかり摂取しているかと言うとそうでもないです。私の知り合いのおばあちゃんは98歳まで生存しましたが、肉やコーラを好んで摂取していました。つまり何を口に入れるかではなくどう食べるのかの方が重要であるということです。

断食 まとめ

ここまでの話をまとめると、食べる量を減らすことによって長寿遺伝子を働かせることができ、健康寿命が延びるということです。ここで言う健康寿命というのは、健康で生存することができる期間を指します。つまり、断食をすることによりもたらされるものは、ただの延命ではなく健康的に寿命を延ばせるという恩恵です。 

運動

長寿遺伝子(サーチュイン)を働かせるための方法の二つ目は運動です。

足踏み運動をする人のイラスト(女性)

もちろんただ単に運動すればいいというわけでありません。例えばウォーキングしても長寿遺伝子を働かせることはできません。ここで言う長寿遺伝子を働かせる最適な運動というのは、高インターバルトレーニングです。高インターバルトレーニングというのは、多くの人は中学校や高校時代のスポーツテストの時に経験した人がいると思いますが、シャトルランのことです。具体的に言うと、シャトルランは30秒間猛ダッシュをして、次の30秒間はゆっくり歩きます。そして次の30秒は猛ダッシュをするというのを繰り返すのです。ジョギングを長時間行うよりも短距離走を組み入れた運動をした方がサーチュイン遺伝子が効果的に働くようです。

言い換えると、中強度の運動を2時間継続するよりも、高強度の運動を30分行った方がサーチュイン遺伝子を活発化させることができるでしょう。

運動の注意点(空腹が伴わなければ効果なし)

しかし長寿遺伝子の働かせ方についての注意点として、たとえ運動をしたとしても、空腹が伴わなければ効果は薄いとデイヴィッドシンクレアは以下のように指摘しています。

「好きなだけ食べても、走れば余分なカロリーを落とせますか?」よくそう訊かれる。私の答えは「たぶん無理」だ。ラットに高カロリーの餌を与え、そのエネルギーを運動で消費させるようにしても、寿命の延びは微々たるものである。カロリー制限食にしても同じだ。カロリーが高くなくても満腹感のあるものにすると、健康効果をすべて得ることができない。カロリー制限が功を奏するには、空腹になることが肝心だ。空腹になると、長寿ホルモンを分泌する脳内の遺伝子が作動しやすくなるからである。少なくとも、アルバート・アインシュタイン医科大学の研究チームはそう指摘している

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3548-3549).東洋経済新報社.Kindle版.

 

例えば低カロリー食品などを摂取して運動をしたとしても健康効果・長寿効果は薄いです。したがって運動をするだけでなく、断食をすることで空腹が伴うような状態を作り出しましょう。

体を冷やす or サウナに入る

サーチュイン遺伝子を働かせる方法の三つ目は、体を冷やす、あるいはサウナに入ることです。

寒がっている人のイラスト(男性) 

まず前述の食べる量を減らすことによってカロリー制限ができ身体の深部体温を下げることにつながります。体の深部体温を下げることが長寿化につながるということです。

食物を減らすことの影響に対して研究者の注目が集まるようになると、カロリー制限が体の深部体温を下げることがすぐに明らかになった。

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3585-3586).東洋経済新報社.Kindle版.

まず体を冷やすという点については以下のマウスの実験結果をご覧ください。

マウスの深部体温を約0・5℃下げたのである。するとどうだろう、メスでは寿命が20%長くなり(人間でいえば健康寿命が7年追加されたのに相当する)、オスでは12%延びた

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3594-3597).東洋経済新報社.Kindle版.

要するに体を冷やすと、7年寿命が延びる可能性があるということです。

もちろん体を冷やすと言っても一時的であり、寒くて凍死したり、凍傷をおうレベルで体を冷やす必要はありません。具体的な方法としては以下の通りです。

冬にTシャツ1枚で、ボストンのような街を早足で歩けばいい。褐色脂肪組織をつくるペースを上げるには、寒いなかで運動するととりわけ効果が高いようである★50。夜通し窓を1枚だけあけておいたり、眠るときに厚い毛布を使わなかったりするのも1つの手かもしれない。

 デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.3677-3681).東洋経済新報社.Kindle版.

例えば1月くらいの冬の最高気温が5°前後の寒い時期に、半袖短パンでランニングをすることにより、サーチュイン遺伝子を活発化することが可能になります。また薄着で日常生活を送るのも効果的です。

またサウナに入ることも 同様の効果を得ることができ、健康的になる鍵だとのことです。

■

薬を服用する

三つ目は寿命を延ばすために薬を服用するという方法があります。

薬のイラスト「薬ビン」

しかし寿命を延ばすことができる薬は、様々な問題を抱えています。

まず、たとえ寿命を延ばすことができる薬であったとしても、中には糖尿病患者でなければ手に入らない薬も含まれています。どんなに効果的な薬であれ入手できなければ役に立ちません。しかし現在様々な研究が行われているため、健康な人でも入手できるようになる可能性も十分あります。

また、薬の価格についても問題があります。安価に手に入れることができる薬も中には含まれていますが、薬の価格が高額であるため長期の服用は大きな出費を伴うことも問題です。

さらに人体実験において薬の実験が十分に行われていないため。寿命を伸ばすことができると現段階では断定することができません。具体的に言うとラットでの実験効果が得られている一方で、人間では確実な効果が実証されていないなどの問題があります。

これらの理由から、薬を服用することでサーチュイン遺伝子を活性化させるという方法は、最適な方法であるとは現段階では断定できません。しかしいずれは薬の細分化が進み、研究とともに実用化される可能性は高いです。

寿命を伸ばす薬

では具体的に、サーチュイン遺伝子を活性化させることができ、寿命を伸ばすことができる薬というのはどのような薬かというと以下の4つです。

  • ラパマイシン
  • メトホルミン
  • レスベラトロール
  • NMN

ラパマイシンをマウスに投与することによって、寿命が10%延びることが確認されています。(出典

白いマウス・ハツカネズミのイラスト

またメトホルミンをマウスに投与することにより、寿命が5%伸びることも確認されています。(出典)メトホルミンは糖尿病患者の治療薬なので、日本において健康な人が手に入れることも難しいでしょう。メトホルミンの多面的な作用について、詳細はこちらの「糖尿病治療薬「メトホルミン」の多面的な作用が分かってきた 【第63回日本糖尿病学会】」の記事をどうぞ。

そして、レスベラトロールをマウスに投与することによって、寿命が20%伸びたと以下のように記されています。

レスベラトロールのマウスは、普通の餌のマウスとまったく変わらないように見え、心臓も肝臓も動脈も筋肉も健康だったのだ。しかも、ミトコンドリアの数が通常より多く、炎症が少なく、血糖値が低かった。同じレスベラトロールの処置をしていた(そして解剖されなかった)ほかのマウスは、結局約20%長生きしたのである★32。その後も何百件という研究結果が発表され、レスベラトロールが数十種類の病気(種々のがん、心臓病、脳卒中、心臓発作、神経変性、炎症性疾患、創傷治癒など)に対して予防効果を発揮するほか、マウスの健康と回復力を全般的に高めることが報告されていった

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.4545-4552).東洋経済新報社.Kindle版.

最後に、NMNを高齢のマウスに投与することで、ウルトラマラソンのランナーが走るほどの距離を走るようになり、身体的にも機能的にも若返ったとデイヴィッドシンクレアは主張しています。具体的には以下の通りです。

NMNは、たんに高齢マウスをウルトラマラソンのランナーに変えるだけではない。私たちはマウスにNMNを与えて、平衡感覚、協調運動能力、俊敏さ、体力、記憶力を調べたこともある。NMNを使ったマウスと使わなかったマウスとの違いは目を疑うほどだった。人間ならとっくにシニア割引を受けられるようなマウスが、『アメリカン・ニンジャ・ウォリアー〔訳注日本のテレビ番組『SASUKE』のアメリカ版〕』の挑戦者に変貌していたのである。

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.4668-4673).東洋経済新報社.Kindle版.

NMNサプリは通販で購入することができますが、高額なサプリであることは間違いありません。しかしもし購入するのであれば品質を重視するのがよいでしょう。そこで購入候補として、2020年12月に日本トレンドリサーチが行なったインターネット調査によるNMNサプリメント品質満足度で、第1位をとったこちらの商品がおすすめです。


 

ここまで説明してきた以下四つの薬と、なおかつ断食や運動を組み合わせることにより、長寿(サーチュイン)遺伝子は活性化され、長寿になる可能性が高まります。

  • ラパマイシン
  • メトホルミン
  • レスベラトロール
  • NMN

 

サーチュイン遺伝子により寿命をどのくらい伸ばせるのか?

では実際に、サーチュイン遺伝子を活発化させるによって、寿命はどのくらい伸ばせるのでしょうか?この質問の答えは、ベストセラー書籍LIFESPANの中に記載されています。

[デビッド・A・シンクレア, マシュー・D・ラプラント, 梶山 あゆみ]のLIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

著者であるデイヴィッドシンクレアによると、サーチュイン遺伝子を最大限活発化させることにより、永遠の命とまではいかないにしろ、大体1.5倍ぐらい寿命が延びるということです。例えば2021年の現在においては、だいたい100歳まで生きれば大往生したと言いますが、将来的には150歳まで生存する人がわんさか現れるということです。

厚生労働省によると、現時点の日本人の寿命は、以下の通り大体85歳前後が平均寿命ですが、昭和22年からの平均寿命の推移としては、今後20年足らずで150歳にまで到達するとは思えません。

表2 平均寿命の年次推移

和暦

男女差

昭和22年

50.06

53.96

3.90

25-27

59.57

62.97

3.40

30

63.60

67.75

4.15

35

65.32

70.19

4.87

40

67.74

72.92

5.18

45

69.31

74.66

5.35

50

71.73

76.89

5.16

55

73.35

78.76

5.41

60

74.78

80.48

5.70

平成2

75.92

81.90

5.98

7

76.38

82.85

6.47

12

77.72

84.60

6.88

13

78.07

84.93

6.86

14

78.32

85.23

6.91

15

78.36

85.33

6.97

16

78.64

85.59

6.95

17

78.56

85.52

6.96

18

79.00

85.81

6.81

19

79.19

85.99

6.80

20

79.29

86.05

6.76

21

79.59

86.44

6.85

22

79.64

86.39

6.75

  • 注:1)平成12年まで及び平成17年は完全生命表による。
    2)昭和45年以前は、沖縄県を除く値である。

出典 厚生労働省

 しかし断食や運動、またはこれから研究・開発が進む薬物などによって、サーチュイン遺伝子を最大限働かせることにより、今から20年以内(2040年頃)に、人間は150歳くらいまで生存する未来が訪れると、様々な実験結果を元にデイヴィッドシンクレアは以下のように主張しています。 

これだけははっきりといっておく。私たちが生きているあいだに、世界で初めて150歳の声を聞く人が現われても少しもおかしくはないのだと。細胞のリプログラミングが真価を発揮すれば、今世紀末までに150歳は手の届く年齢になっている可能性があるのだ。 

デビッド・A・シンクレア;マシュー・D・ラプラント.LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界(Kindleの位置No.6965-6968).東洋経済新報社.Kindle版.

この本(LIFESPAN)が執筆されたのは2019年ですが、その時点で世界最高齢は日本人女性の田中カ子さんで117歳であるとのことです。 しかし将来的には、大多数の日本人が120歳~150歳にまで生存する可能性があります。120歳まで生きられる時代が来るのであれば、今以上の老後の蓄えも必要でしょう。最速で老後の資金を貯めて早期退職する方法について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

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最も驚くべきことは、この本(LIFESPAN)を書いた著者は、怪しい三流の科学者ではなく、世界で一流の、ハーバード大学院の遺伝学教授のデヴィッドシンクレアであるという点です。

[デビッド・A・シンクレア, マシュー・D・ラプラント, 梶山 あゆみ]のLIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

というのも、この人はタイム誌の最も影響力のある100人、また医療におけるトップ50人の一人に選ばれたような優秀な人です。過去270本以上の科学論文を発表しており50件以上の特許を共同開発しています。 さらに14社のバイオテクノロジー企業を共同創業しています。(出典:Amazon

デイヴィッドシンクレアは世界的に有名な科学者であり、起業家であり、老化の原因と若返りの方法に関する研究で世に知られています。

ベストセラー書籍ライフスパンの本の内容は、一言で言えば老化を遅らせることができる遺伝子や具体的な方法また薬などが存在するというものです。 老化はひとつの病気であると主張する点について、多くの読者はこの本を読む前は「そんなはずがない」などと考えていたかもしれません。しかし実際にデヴィッドシンクレア教授の実験結果を元に主張を聞いてみると、なるほど老化はひとつの病気であるとの主張は確かに一理ある、と思ってしまうことでしょう。

この本の中に出てくる最も手軽に即実践可能な長寿に近づくことができる方法は、前述の通り絶食をするなどにより、食べる量を減らすという点です。繰り返しになりますが、食べる量を減らすという方法について、シンクレア教授が主張するには、間違いなく健康長寿のために確実な方法であるとのことです。 

何で食べる量を減らすことによって健康になるのかについては、シンクレア教授の研究対象としている長寿遺伝子サーチュインと呼ばれる遺伝子が関係しています。サーチュインは酵母の Sir 2遺伝子から命名されたものです。 シンクレア教授がサーチュインの研究に取り掛かっていた当初、サーチュイン遺伝子は多くの人は注目するに値しないものだと考えられていきました。しかし2021年の現時点において、サーチュイン遺伝子は医学研究と医薬品開発の最前線に躍り出ています。 これからも期待の持てる分野です。


 

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