少子化について知りたいですか?
日本の少子化対策を学びたければ、まず政府が作成した2020少子化社会対策大綱における「少子化対策の基本的な考え方」を理解する必要があります。
政府が主張する「多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える」とはどのようなものかご紹介!
少子化問題と対策について、全体像と具体例をわかりやすく学びたい方はこちらの記事も併せてご参照ください。
【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方【子育て家庭のニーズ】
日本は核家族化が進展したことによって、夫婦共働き家庭が増加しています。具体的にどのぐらいの世帯なのかと言うと、共働き家庭の比率の推移は以下の通りです。
まずこのグラフの見方としては赤い線が夫婦共働き世帯であり、青色の線が夫が仕事をしていて妻は専業主婦世帯であることを示しています。このグラフを見ると、夫婦共働き世帯である赤い線が昭和55年の600万世帯から平成26年には1114万世代へと約2倍に増加していることがわかります。この通り夫婦共働き世帯が増加していることを、少子化社会対策大綱の中では「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」と言う言葉で、以下のように言い換えています。
(2)多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える
核家族化の進展、共働き家庭の増加、地域のつながりの希薄化など、家族の在り方や家族を取り巻く環境が多様化している。
つまり核家族や共働き家庭等の子育て家庭の様々なニーズに応えることによって、少子化対策につながる可能性があるということです。ここに出てくる「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」とは具体的にどのようなものかについて、詳しく見ていきましょう。
ひとり親家庭や再婚家庭
まず「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」に関して、ひとり親家庭のことに言及されており、以下のように少子化社会対策大綱では記載があります。
ひとり親家庭や再婚家庭など、家族の在り方は多様であり、また、都市部への人口流入を背景に、自分の生まれ育った地域以外で子育てをする家庭や、不安や悩みを誰にも相談できず孤立して子育てをする家庭も少なくない。
ひとり親家庭や再婚家庭等の家族のあり方が多様で、なおかつ地方の田舎の地域から東京都などの都市部に人口が流入しているから、自分が生まれ育った地元以外で子育てをする家庭や、子育てに関する不安や悩みなどを相談できる人がいないから少子化は進行している可能性があると指摘しています。
では実際にひとり親家庭はどのくらい増えているのかと言うと、 厚生労働省によるとひとり親家庭の世帯数の現状は以下の通りです。
この調査を見ると、確かに1988年から2011年までの25年間で、
- 母子世帯は1.5倍
- 父子世帯は1.3倍
へと増加していることがわかります。 つまり政府は母子家庭や父子世帯が1.5倍ほどに増加しているにも関わらず、東京都などの都市部に流入すると地元で祖母に子育て手伝ってもらって子育てするよりも、子育てに感じる負担が大きいので子育てするの嫌になってしまうことから、少子化は進行している可能性があると言っているのです。より具体的に言うと母子世帯や父子世帯はただでさえ一人で子供の面倒を見る必要があるので、子育てにおける負担が大きいです。それに加えて祖父母の手も借りることができずに都会で働きながら子育てをするということは至難の技であるから、子育てするのが嫌になり、子供を産まなくなってしまっているのではないかと政府は考えているのです。
子供の健康を保つための医療面
さらに少子化社会対策大綱では「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」について、子供の健康を保つための医療面に以下のように言及しています。
このため、子育て家庭における様々なニーズに対応するとともに、一人一人の子供が心身ともに健やかに育つことができるよう、全ての子育て家庭が、平常時・非常時を問わず、それぞれが必要とする支援にアクセスでき、安心して子供を生み育てられる環境を整備する。
ここで言う平常時・非常時というのは何を指しているのかと言う、と平常時というのは一般的な保育園に通うということさしているのだと思います。一方で非常時というのは、例えば子供が病気になってしまった時に、適切な医療を受けることができる環境を整える必要がある、ということをさしているのだと思われます。
そして少子化社会対策大綱で一般的に負担が大きいと思われる家庭へ必要な配慮について、以下のように言及しています。
その際、在宅の子育て家庭、ひとり親家庭、低所得の子育て家庭、障害児や医療的ケア児を育てる家庭、多子世帯、多胎児を育てる家庭、再婚家庭などに配慮する。
- 在宅の子育て家庭、
- ひとり親家庭や
- 低所得の子育て家庭、
- 障害児や
- 多子世帯
など、ここで並んでいるのは子育ての負担が大きいと思われる世帯です。例えば在宅の子育て家庭というのは、認可保育所に預けずに家庭で子育てをする家庭のことさしています。夫は仕事しているけれども妻は仕事をしていないから認可保育所に預けることができません。しかし奥さんが一人で子供を見るというのは精神的にも肉体的にも負担が重く、時には休日が欲しいと思うこともあることでしょう。そのような在宅の子育て家庭に対し、保育園のサービスとしては一時保育というものがあります。これは大体朝9時から5時まで一時的に保育園に預けるというものです。その際に地方自治体が一時保育の費用の半額を負担して一時的に保育を利用することができるというものです。この一時保育のサービスを利用できる保育園を拡大することが、少子化対策に有効であると少子化社会対策大綱では言っているのです。
確かにこれらの肉体的にも精神的にも親への負担が大きい家庭には政府が十分に配慮する必要があります。この中で多子世帯について、少子化社会対策大綱では以下のように追記されています。
とりわけ、第3子以降を持ちたいとの希望に関しては、子育て、教育、住居など様々な面における経済的負担の重さが希望の実現の大きな阻害要因となっていることから、多子世帯に配慮し、様々な面での負担の軽減策を推進する。
特に3人目以上のお子さんを儲けたいと考えている家庭では、子育てする際に、
- 肉体的にも精神的にも子育てで疲れてしまったり、
- 教育費用がかさんだり
- 住宅費用がかさんだり
様々なお金の面で費用がかさんでしまうことが三人以上の子供が欲しいの希望に対する大きな阻害要因となっていると指摘しています。確かに夫婦二人で六畳一間のワンルーム賃貸マンションで生活するのですが狭いのにも関わらずもし子供が3人いたら六畳一間のワンルーム賃貸マンションでは、狭い空間で5人もの人が生活するのはほぼ不可能でしょう。従って広い部屋に住むとなればそれなりの家賃がかかってしまいます。そのことから3人以上の子どもを持つことをあきらめる人が多いということです。また二人以上の子供がいる家庭に対し、政府は様々な面で経済的な軽減策を推進していくと主張しています。
NPO やシニア層などによる取り組み
さらに「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」として、お金の面だけではなく、 NPO やシニア層などによる取り組みについて以下のように記載があります。
また、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行うとともに、行政の取組に加え、NPOや活力・意欲あるシニア層などの参画を促すことで、子育ての担い手の多様化を進め、地域全体で子育て家庭を支えていく。
ここに出てくる NPO という言葉は聞き慣れない人もいるかもしれませんがその意味は以下の通りです。
NPOとは「Non-Profit Organization」あるいは「Not-for-Profit Organization」の略称であり、その名の通り非営利的な(Non-Profit)組織(Organization)のことを表しています。
NPOは、市民を主体として市民の発意により活動する市民活動団体を指します。社会福祉法人や社団、財団、生協、労働組合なども広い意味ではNPOと言えます。
活動においては非営利ですが、収益を目的に事業を行うことは認められています。
ただし事業で得た収益に関しては、様々な社会課題の解決に充てることと定められています。
NPO法は正式には「特定非営利活動促進法」と言いますが、その法律に基づいて法人格を取得したNPOが「特定非営利活動法人」、すなわち「NPO法人」と呼ばれています。
要するに NPO というのはシルバー人材センターのことを指していると思われます。より安価で質の高い人材を求めるのであれば、若者ではなく定年退職を迎えた後の65歳以降の高齢者を雇用した方が手っ取り早く人材を確保することができ、より安価に求められる人材を社会貢献に役立てることができると政府も考えていると思われます。具体的には駅の近くの駐輪場の管理人に、シルバー人材センターの高齢者を割り当てることで、適切に駐輪場の管理をしてくれると言った感じでしょうか。また子育てに直接関与するということであればより低い賃金で家政婦として家の中を掃除したり料理を作ったりするシルバー人材センターの派遣も中にはあります。これら提供するサービスは地方自治体によって異なります。
子育て世帯の税金
そして少子化社会対策大綱では「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」について、子育て世帯の税金に関しても、以下のように言及されています。
さらに、社会経済の構造的な変化を踏まえ税制を検討するに当たっても、子育てやこれから家族を形成しようとする若い世代に重点的に配慮していくことが重要である。
要するに、例えば三十歳の人で子供を出産したばかりの世帯に対しては、プレミアム商品券などを配布することによって、実質的な減税に繋がるような政策を
- 政府や
- 地方自治体
が行なっていく必要があるということを言っているのだと思われます。
プレミアム商品券について、詳細は以下の記事をご参照ください。
【2020少子化社会対策大綱】政府の考え方【子育て家庭のニーズ】まとめ
ここまでの話のまとめとして、少子化社会対策大綱の「多様化する子育て家庭の様々なニーズ」のことを、以下のように重点課題として記載しています。
<重点課題>
・子育てに関する支援(経済的支援、心理的・肉体的負担の軽減等)
・在宅子育て家庭に対する支援(一時預かり、相談・援助等の充実)
・多子世帯、多胎児を育てる家庭に対する支援(多子世帯に配慮した子育て、
保育、教育、住居など様々な面での負担の軽減策の推進など)
・妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援(母子保健法改正 15を踏まえ
た産後ケア事業の全国展開等)
・子育ての担い手の多様化と世代間での助け合い(NPOやシニア層などの参
画促進による地域での子育て支援、三世代同居・近居しやすい環境づくり
など)
政府は、これらの「多様化する子育て家庭における様々なニーズ」に応えることによって、若者たちが「たくさんの子供が欲しい」という希望をかなえる社会を実現することができると少子化社会対策大綱で主張しています。
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