新型コロナウイルス治療薬をご存知ですか?
新型コロナ治療薬として開発中の
- エボラ出血熱レムデシビル
- 抗寄生虫薬イベルメクチン
- インフルエンザのアビガン
- 回復者血漿の免疫グロブリン
- HIVカレトラ
- 関節リウマチのケブザラ
等をご紹介!
新型コロナ検査薬も学びたい方必見!
新型コロナウイルスの初期症状についてはこちらの記事をご参照ください。
コロナ治療薬
2020年4月13日の時点で、新型コロナウイルスそのものに効く抗ウイルス薬はまだ確立していません。(出典)
それなのに、なぜ新型コロナウイルスが治癒するのか?という疑問からまずは考えてみましょう。
厚生労働省によると、新型コロナウイルスが
- 上気道や
- 肺
で増えることで生じる
- 発熱や
- 咳
などの症状を緩和する目的の治療(対症療法)として、
- 解熱剤や鎮咳薬の投与、
- 点滴
等が実施されています。
このような対症療法により、全身状態をサポートすることで、この間ウイルスに対する抗体が作られるようになり、ウイルスが排除されて治癒に至ると考えられます。(出典)新型コロナウイルスによる「発熱」と「咳」の初期症状について詳細はこちらの記事をご参照ください。
つまり2020年5月7日の時点では、新型コロナウイルスに感染した場合、人間に本来備わっている自然治癒力を補助することでしか、新型コロナウイルスを排除する手段がありません。そのせいで、新型コロナウイルスはこれだけ世界で大流行し、社会問題化しているのです。
しかしその中でも、一部の新型コロナウイルスの症例に対し、効果がありそうな薬が開発されており、今後の研究に期待が寄せられています。
そこでそれらの治療薬について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
コロナ治療薬「エボラ出血熱」レムデシビル
前述の通り、新型コロナウイルスの治療薬の開発は、様々な研究者によって進められている最中です。その一例として、エボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル」が挙げられます。
具体的に言うと、新型コロナウイルスに感染して重い肺炎になった患者53人に、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」を使ったところ、68%で症状が改善したことがわかりました。(出典)新型コロナウイルスによる肺炎症状について詳細は「【コロナ初期症状「息苦しい」肺炎】どの程度?熱は?【人工呼吸器】」の記事をご覧ください。
しかしこの研究は論文が公表された2020年4月10日時点では、まだプラセボ対照試験などが行われていません。(出典)プラセボ対照試験というのは、薬の臨床試験において、被験者を
- 対照群と
- 治療群
とに分け、対照群にはプラセボ(偽薬)を割り付ける試験のことです。(出典)
なおプラセボ効果とは、効き目ある成分が何も入っていないくすり(プラセボ)を服用しても、患者自身が、「自分が飲んでいるくすりは効き目がある」と思い込むことで、病気の症状が改善するということを指します。(出典)
したがって、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」については、引き続き詳細な研究が行われることが期待されています。
新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
コロナ治療薬「抗寄生虫薬」イベルメクチン
北里大は2020年5月6日、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授が開発に貢献した抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、「新型コロナウイルス感染症の治療薬として、承認を目指す治験を実施する」と公表しました。(出典)
今後、同意を得た患者に投与し、
- 症状の改善効果や
- 副作用の有無
などを確かめていきます。
そして、北里大病院で希望する患者に投与する観察研究も併せて検討します。
治験の
- 開始時期や
- 規模
は未定となっています。(出典)
イベルメクチンとは、
- アフリカや
- アジア
に広がる寄生虫が原因で失明につながる熱帯感染症の特効薬です。西村経済再生相は、記者団に対し「すでに全世界で毎年3億人がこの薬を使っており、安全性も確認されている」と言及しました。(出典)
既存の薬で安全性が確認されているということから、もし新型コロナウイルスの治療薬として承認されれば、多くの
- 医師や
- 患者
に歓迎され、安全性を重視する患者に優先的に処方される可能性もあることでしょう。
コロナ治療薬「インフルエンザ」アビガン
河野太郎防衛相は2020年4月10日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスへの効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の治験を同日、
- 自衛隊中央病院(東京)と
- 防衛医大病院(埼玉県)
で始めたと明らかにしました。(出典)
日本の国務大臣が言及する「アビガン」という治療薬は、一体どのようなものなのでしょうか?
アビガンとは、富士フイルムが開発した抗インフルエンザウイルス剤ですが、もともと新型コロナウイルスのために開発した薬でありませんでした。(出典)
つまり、インフルエンザのために開発した薬であるにもかかわらず、ラッキーなことに、新型コロナウイルスに対しても治療効果があるのでは?ということが判明したということです。
アビガンは、日本政府が新型インフルエンザの流行に備えて備蓄する特殊な治療薬であり、一般市場では流通していません。というのも、日本国は2020年4月時点で200万人分の備蓄を持ち、「タミフル」など既存のインフルエンザ治療薬が効かないような新型インフルエンザウイルスが流行した時に、初めて国がアビガンの投与開始を検討するというものだったからです。またアビガンは一般市場に流通していないことから、薬価すら設定されていません。(出典)
2020年4月9日には抗インフルエンザウイルス治療薬「アビガン」について、米国で新型ウイルス感染症を対象とした臨床第2相試験を開始すると発表され、富士フィルムの株価が一気に急上昇しました。(出典)
上記で出てくる「臨床第2相試験」という言葉は一般人には聞き慣れない言葉だと思われますので、以下に解説します。
日本薬学会によると、「臨床第2相試験」とは以下のような意味です。
第2相試験
臨床試験第2番目の段階で、第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲内で、同意を得た比較的少数の患者を対象とし、主に治験薬の安全性および有効性・用法・用量を調べるための試験。第Ⅲ相試験を実施する際の、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)を設定する目的の場合が多い。その為、最初は少数例の患者に対して、低用量の投与から始め、徐々に患者数を増やし、投与期間を長くし、投与量を増やすことが多い。第Ⅱ相試験は「探索的臨床試験」とも呼ばれている。医師にも患者にも被検薬かプラセボかわからないようにする「二重盲検法」を採用した試験は、この試験段階で多く見られる。
(出典:日本薬学会)
様々な専門用語が並んでいるため、医療従事者でない限り、一般人にとってはピンとこないかもしれません。しかし要するに、前述のエボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル」の場合と同様に、未だプラセボ対照試験が完了していない段階であるということです。したがってアビガンも、引き続き詳細な研究が行われることが期待されています。
コロナ治療薬「回復者血漿」免疫グロブリン製剤
2020年4月6日、武田薬品工業は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬の開発に乗り出したと公表しました。(出典)
つまり治療薬として、新型コロナウイルスの回復者血漿を活用するのです。回復者血漿というのは、感染症から回復した人の血液の一部を、今その感染症で苦しんでいる患者に投与するものであり、輸血の一種になります。(出典)
さらに具体的にいうと、治療薬として武田薬品工業が開発するのは、血漿分画製剤の一種である免疫グロブリン製剤です。(出典)免疫グロブリン製剤というのは、
- 抗生物質では効かない重い感染症、
- 血小板が減少する病気、
- 川崎病
などの治療において、40年以上にわたり使われている薬であり、子供から大人まで多くの患者に使用されています。(出典)
武田薬品工業は4月6日、COVID-19治療薬の開発に向け、血漿分画製剤の世界最大手である米CSLベーリングと提携を結んだと発表しました。
提携には、欧米で血漿分画製剤を展開する
- 独バイオテスト
- 英バイオ・プロダクツ・ラボラトリー(BPL)
- 仏LFB
- スイス・オクタファルマ
も参加し、6社で協力して新型コロナ(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対するノーブランドの高度免疫グロブリン製剤を開発し供給する予定です。(出典)
したがって、世界的に免疫グロブリン製剤の開発が進んでいくことが期待されています。
ここで出てくる「SARS-CoV-2」とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者検体からSARS-CoV-2を分離されたものを指します。(出典)
COVID-19から回復した人の血漿にはSARS-CoV-2に対する抗体が多く含まれており、これを患者に投与することで患者が活性化され、病状を軽減することができると期待されています。(出典)
コロナ治療薬「HIV」カレトラ
新型コロナウイルスの治療のために、HIV 治療薬である「カレトラ」が使われたことがあります。 New England Journal of Medicineによると、199人の新型コロナ患者を無作為にカレトラを14日間内服する群(99人)と標準治療(カレトラを内服しない)群(100人)とを比較したところ、臨床的改善が得られるまでの時間に差はなかった、との結果でした。つまりカレトラを飲むことによって、新型コロナ感染症の経過に差はなかったという結果です。(出典)
このように、新型コロナウイルスの治療を試みたが、うまくいかなかったケースが多数あります。しかしこのような失敗を繰り返していくことにより、新型コロナウイルス治療薬の開発に、一歩一歩近づいていくはずです。
コロナ治療薬「関節リウマチ」ケブザラ
新型コロナウイルスに対し、関節リウマチ治療薬「ケブザラ」が有効である可能性もあります。
- フランスのサノフィと
- 米リジェネロン・ファーマシューティカルズ
は2020年3月16日、重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、入院中の患者に「ケブザラ」を投与する臨床試験プログラムを開始したと発表しました(出典)
そして2020年4月2日には、 重症患者を対象としたケブザラのグローバル臨床試験プログラムとして、米国外で第1例の患者に投与したと公表されました。(出典)
この試験は「ケブザラCOVID-19プログラム」の一部として行われる 2番目の第 II/III 相多施設共同二重盲検試験です。サノフィと Regeneron の両社は世界各地の保健当局と連携し、さらなる医療施設での試験開始に向けて活動しています。(出典)
コロナ検査薬
新型コロナウイルスの診断方法としては、PCR 検査を行うことが一般的です。(出典)
しかし PCR 検査には時間がかかるので、それに代わるさまざまな検査薬が研究・開発されることで、検査時間の短縮に繋がっています。そこで具体的に、どのような検査薬が新たに開発・販売されるのかをご紹介します。
島津製作所
2020年4月10日、島津製作所は新型コロナウイルスを1時間で判定することができる検査試薬を、4月20日に発売すると発表しました。この検査薬によって、検査時間を大幅短縮できるようになります。(出典)
具体的に言うと、工程の一部を省くことができるので、今まで2時間以上かかっていた検査を、その半分である約1時間で済ませることができるようになります。(出典)
また、検査が迅速化するにもかかわらず PCR 検査と同等の精度を得ることができるため、
- 人手を低減でき
- 人為的なミスが防止できる
ことにより、
- 医療機関や
- 患者
への負担やリスクを軽減することにもつながるでしょう。(出典)
島津製作所は日本国内の
- 医療機関や
- 検査受託会社
にこの検査薬を販売し、2020年5月以降は輸出も目指しています。(出典)
東洋紡
新型コロナウイルスの検査薬の開発に成功したのは、島津製作所だけではありません。
2020年4月13日、東洋紡も最短で1時間以内に、新型コロナウイルスの検出が可能なキットの販売を、研究機関向けに始めたと発表しました。 (出典)
新開発された東洋紡の検査キットは、遺伝子を短時間で増幅できる独自開発した酵素液を採用しています。その結果、遺伝子の抽出工程を最短2分で完了させることができ、さらに遺伝子の増幅・検出も最短56分で可能です。(出典)
つまりウイルスの遺伝子を短時間で増幅できるので、治療薬やワクチンの早期開発につながることが期待されています。
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